大革新でスライドドアを採用 乗り心地と操舵性能も好印象

軽自動車界ではスーパーハイト系が圧倒的な売れ行きを見せているが、全高が1.7mなくてもスライドドアがあって、ムーヴキャンバスとは異なるプレーンな見た目のクルマがあったらいいのにと思っていたら、ようやく出てきたのが新型ムーヴだ。

エクステリア

リヤビューは、「Y」字をモチーフとした両サイドのバンパーまわりをはじめ、伝統の縦型リヤコンビランプを「L」字型にして変化を与えている。ツートーンのルーフカラーは、ブラック系を含め計3色を設定。最小回転半径は4.7m。

ムーヴキャンバスとは対称的にスタイリングは端正で精悍。箱型でスライドドアだと不格好になりがちなところを、Aピラーを寝かせることで上手く対処したのだと言う。新型ではカスタムという括りはなくなり、「アナザースタイル」という形で選べるようにされたのも新しい。後席はさすがにスーパーハイト系ほどの天地高はなく、座面も低めでヒール段差は大きくないが、平均身長+αの成人男性の体格である筆者が座っても頭上には十分過ぎるほど余裕がある。左右で個別に前後スライドできるのも便利だ。

乗降性

これだけ開口部があれば乗り降りしにくいことはない。売れ筋の「X」では運転席側のスライドドアを雨のときなどに即座に閉められるようあえて手動を標準とし、電動をオプションで選べるようにしたそうだ。実のところ、このクラスでスライドドアを装着するとなると、コストや重量増といった諸々の問題があり、企画の段階では社内で賛否あったそうだが、結果的にスライドドアで出てきてくれたことを歓迎したい。走りの完成度は予想どおり、DNGAによる高い基本性能に加えて、重心高が低くなるメリットが効いて、乗り心地もハンドリングも良好に仕上がっていた。スーパーハイト系にありがちなつっぱった感じもなく、コーナーが迫ってもあまり身がまえる必要もなく曲がっていける。

インストルメントパネル

黒を基調にシルバーやブラウンの加飾を用意し、上質感を演出。オーディオを低めに配置することで、良好な前方視界に寄与している。「L」を除きフルオートエアコンが標準。

シャシー性能においては、上質な乗り心地と思いどおりに曲がれる操縦安定性を目指したという。荒れた路面でも足まわりがよく動いて巧くいなしてくれるので、目線のブレが小さいことが印象的だった。ターボの「RS」と自然吸気の「X」では、パワートレインだけでなく足まわりも異なる。15インチタイヤを履き、高性能ダンパーが与えられる「RS」は、しっかりとした接地感があり、操舵に対する応答性も高い。

居住性

ターボはどこを走るにも余裕があるのでアクセル開度が小さくてもスルスルと加速していき、低い回転が維持される。ターボのみD-CVTが組み合わされるのも特徴で、加速時にもいわゆるラバーバンドフィールがあまりなくダイレクト感がある。静粛性も手当てされているおかげでより上質なドライブを味わえる。一方の自然吸気は上り勾配は不得手だが、できるだけ不満を感じさせないよう、平坦な市街地ではアクセルの踏み始めからしっかり前に出るように味付けされている。

うれしい装備

インパネ右下のスイッチを押しておくと、次回乗り込む際にキーを携行していれば自動でリヤドアが開く「ウェルカムオープン機能」を用意。
荷室には床下収納も用意する。後席を一番後ろに下げ、デッキボードのフックを後席ヘッドレストに固定することで、高さのある荷物も収まる。
月間販売台数   7287台(25年7月~12月平均値)
現行型発表    25年6月
WLTCモード燃費  22.6㎞/ℓ※自然吸気のFF車

ラゲッジルーム

パワーやトレッドの限られた軽自動車ではなおのこと、車高を抑えたことで無理することなく、快適な乗り心地と素直な操縦性を実現している。しかも価格が圧倒的に安い。これで広さに不満がなければ、実に合理的な選択肢と言えそうだ。諸事情により登場は予定より遅れたが発売後まもなく月販でトップの座につくほどの売れ行きを見せた。やはりムーヴの登場を待っていた人は少なくなかったようだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.175「2026年 軽自動車のすべて」の再構成です。

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