BYD・RACCOとは
RACCOは、BYDが日本市場向けに開発した軽乗用EVである。
日本の軽自動車規格に合わせて専用設計され、スーパートールボディと両側電動スライドドアを組み合わせた。駆動方式は前輪駆動のFWD。シャシやボディ、駆動・制御システムも新たに開発されている。
開発にあたってBYDは、日本国内で軽自動車がどのように使われているのかを調査したという。買い物や送迎といった日常利用、後席への乗り降り、収納、室内の静粛性など日本の軽自動車ユーザーの使い方を踏まえてパッケージを設計した。
EVとしての中核を担うのが、リン酸鉄リチウムイオンを用いた「ブレードバッテリー」。車体構造とバッテリーを統合するCTB(Cell to Body)技術なども採用し、限られた軽自動車のサイズのなかで室内空間や安全性、航続距離の確保を図っている。
車名の「RACCO」は動物のラッコに由来する。BYDは、貝を割るために石を使う「賢さ」や「愛らしさ」「親しみやすさ」、さらに海洋環境とのつながりを名称に込めている。
RACCOが登場するまでの経緯
2025年|Japan Mobility Showで世界初公開

RACCOが世界初公開されたのは、2025年の「Japan Mobility Show」だった。
BYD Japan Groupは2025年10月29日、同ショーでRACCOをワールドプレミアとして公開。日本の軽自動車規格に向けた専用設計のBEVとして、翌2026年の発売に向けた展開を本格化させた。
海外メーカーが日本独自の軽自動車市場へ専用設計車で参入することもあり、RACCOはBYDの日本戦略を示すモデルのひとつとなった。
2026年2月|専用サイトを公開
2026年2月にはRACCOの専用サイトを公開し、開発思想や日本市場への導入理由などを明らかにした。
当時公表されていたのは、スタンダード仕様で200km超、ロングレンジ仕様で300km超という航続距離の目標値。スーパートールボディやスライドドア、FWDといった基本構成もこの段階で示されている。
その後、航続距離や装備、価格といった市販モデルの詳細が順次公開されていった。
2026年7月|国内販売を開始
2026年7月28日、RACCOの国内販売が始まった。
市販モデルは「RACCO 200」「RACCO 300 Plus」「RACCO 300 Premium」の3グレード構成。一充電走行距離は200が210km、300 Plusと300 Premiumが320kmとなっている。
発売によって、BYDは日本の普通乗用車やSUVだけでなく、国内新車市場で大きな割合を占める軽自動車カテゴリーにもラインアップを広げることになった。
RACCOのグレードと価格

RACCOには、用途や必要な航続距離に応じて3つのグレードが設定されている。
エントリーグレードの「RACCO 200」は214万5,000円で、一充電走行距離は210km。両側電動スライドドアや10.1インチタッチスクリーン、安全運転支援機能などを標準装備する。
「RACCO 300 Plus」は239万8,000円、「RACCO 300 Premium」は249万7,000円。いずれも35.84kWhのバッテリーを搭載し、一充電走行距離は320kmとなっている。
300 Plusでは、ステアリングヒーターや前席シートヒーター、アルミホイールなどを追加。最上級の300 Premiumには、合皮シートや運転席電動調整、BYDアラウンドビューモニター、ハンズフリースライドドアなどが備わる。
RACCO 200は価格を抑えながら基本装備を確保し、300系では航続距離を延ばすとともに快適装備を充実させた構成である。
各グレードの主な諸元は以下のとおり。
| 項目 | RACCO 200 | RACCO 300 Plus / 300 Premium |
| 車両型式 | ZAA-CK66EAS | ZAA-CK66EBS |
| 駆動方式 | FWD(前輪駆動) | FWD(前輪駆動) |
| 乗車定員 | 4名 | 4名 |
| 全長×全幅×全高 | 3,395 × 1,475 × 1,800mm | 3,395 × 1,475 × 1,800mm |
| ホイールベース | 2,520mm | 2,520mm |
| 車両重量 | 1,160kg | 1,220kg(300 Plus) / 1,230kg(300 Premium) |
| 最小回転半径 | 4.8m | 4.8m |
| モーター型式 | TZ180XSAB | TZ180XSAB |
| モーター種類 | 永久磁石同期モーター | 永久磁石同期モーター |
| モーター最高出力 | 47kW[64PS] | 47kW[64PS] |
| モーター最大トルク | 160N・m | 160N・m |
| バッテリー種類 | リン酸鉄リチウムイオンバッテリー | リン酸鉄リチウムイオンバッテリー |
| バッテリー容量 | 22.40kWh | 35.84kWh |
| 一充電走行距離 | 210km | 320km |
ボディサイズやモーター性能は全グレードで共通しており、主な違いはバッテリー容量と装備にある。RACCO 200は22.40kWh、300 Plus/300 Premiumは35.84kWhのバッテリーを搭載し、一充電走行距離はそれぞれ210km、320kmとなっている。
RACCOの補助金と据置型ローン
RACCOの購入を検討するうえで、車両価格とあわせて確認しておきたいのが補助金だ。
発売時点では、国のCEV補助金として全モデル・グレード一律15万円が設定されている。RACCO 200の場合、車両本体価格は214万5,000円。15万円の補助金が適用されれば、補助額を差し引いた負担額は199万5,000円となる。ただし、登録諸費用やオプションなどは別途必要だ。
居住する自治体によって独自のEV補助制度が用意されている場合もあるため、実際の購入時には国と自治体それぞれの適用条件を確認しておきたい。
BYDはRACCO向けに据置型ローンも用意している。
RACCO 200を対象に、5年間・50%据置、頭金・ボーナス払いなしという条件を設定。BYDの試算では、CEV補助金15万円相当を60回に分けて月額から控除した場合、実質月額1万9,300円としている。
一方、注意したいのが据置額の扱いだ。
契約時に設定した据置額が、支払期間終了時の車両価値として保証されるわけではない。月々の支払額だけでなく、契約終了時の条件もあわせて確認しておきたい。
RACCOの受注・販売状況 発売直後から受注続伸

RACCOは発売直後から受注を伸ばしている。
BYDによると、2026年7月28日の発売から約2週間で累計受注台数は1,000台を突破。それまで同社が日本へ導入した車種のなかで、最も速いペースだったという。
8月末時点では累計受注が約1,500台まで増加。グレード別では最上級の300 Premiumが約8割を占めており、発売初期は同グレードに受注が集中している。
一方、全国軽自動車協会連合会の「軽四輪車 通称名別 新車販売確報」によると、RACCOの新車販売台数は2026年7月が125台、8月が81台。7~8月の累計は206台となった。
受注台数と新車販売台数には開きがあるものの、BYDは8月末時点で、300 Premiumについて9月中旬以降に着船した車両を順次販売店へ配車し、9月後半から本格的な納車を始める予定としていた。
受注から車両の配車、新車販売、納車までには時間差があるため、今後の販売動向にも注目したい。
まとめ
RACCOの特徴は、日本の軽自動車市場を調査したうえで専用開発された点にある。
BYDは日本市場を2年にわたって調査し、軽自動車の使われ方を研究。限られた車体寸法のなかで室内空間や乗降性、安全性、航続距離などのバランスを検討し、スーパートールボディや両側スライドドアといった日本で支持されるパッケージにEV技術を組み合わせた。
発売直後から受注は伸びているが、販売実績が本格的に積み上がるのはこれからとみられる。国内メーカーが強い軽自動車市場で、日本専用設計の軽EVがどのような位置づけを築くのかは、今後の販売推移によってより明確になっていくだろう。
RACCOの動向はBYDの日本戦略だけでなく、国内の軽EV市場が今後どこまで広がるのかを見るうえでも、ひとつの指標になりそうだ。
