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ZR-Vって売れてる?
ホンダZR-Vが属する200万円台後半~400万円台前半という価格帯のクロスオーバー/SUVのマーケットは、”超”がつく激戦区だ。そのなかでZR-Vの販売状況はどうか?
前年ながら、ヒットと呼べる実績はいまのところ残せていない。自販連のデータによるとZR-Vの販売台数は
2023年5月:1567台 6月:1823台だ。
2023年の上半期(1-6月)の販売台数ランキングでTOP50に入っていない(ということは、1-6月で50位のエクリプスクロスの4811台未満ということになる)。
ちなみに2023年上半期の販売台数は
トヨタRAV4:2万6962台
ホンダ・ヴェゼル:2万2770台
マツダCX-60:1万7499台
レクサスNX350H:1万6922台
日産エクストレイル:1万4330台
マツダCX-5:1万3495台
マツダCX-30:1万0236台
となっている。ZR-Vのベースと言っていいホンダ・シビックは6467台だ。
北米ではどうだろう?
1-6月で5万3910台(昨年同期比-26.2%)
となっている。が、ここはちょっとややこしい。そもそも、北米では、「ZR-V」ではなく「HR-V」を名乗っていて、2022年4月発表以前の北米HR-Vは、日本で言う先代ヴェゼルなのだ。同型となった4月以降を比較しても
2023年4月8970台(-32.4%)
5月9300台(-20.6%)
6月9136台(+57.2%)
となるから、北米でも大ヒット!というわけにはなっていない。ちなみに、2023年1-6月の北米CR-Vの販売台数は16万3697台だ。
北米はともかく、日本で販売台数が伸びない理由は明らかだ。
価格である。シビックもそうだが、購入者があとからオプションで追加するものがないくらい充実した装備を持つ半面、プライスタグが重く見えてしまうのだ。
最廉価グレード~最高価グレードで言えば、ライバルである
トヨタ・カローラクロス
1.8L直4+CVT(FF) 199万9000~1.8L直4ハイブリッド(4WD)319万9000円
マツダCX-30
2.0L直4+6AT(FF)245万8500円~2.0L直4SKYACTIV-X(4WD)391万5980円
ホンダZR-V
1.5L直4ターボ+CVT(FF)293万2600円~2.0L直4e:HEV(4WD)411万9500円
欲しい装備を付けていく、あるいはグレードを選べば、価格差は詰まっていくと……だろうが、一見すると、ZR-Vは「高い!」と思われてしまう。最初からショッピングリストに載せない場合も多いのではないか。
今回試乗したZR-Vの最上級グレードは2.0L e:HEV(4WD)411万9500円。同じ価格帯でトヨタRAV4、日産エクストレイル(最上級グレードのX e-4ORCEが404万9100円)、マツダCX-5、レクサスUXも射程距離に入る。
重ねていうが、ZR-Vの最上級グレードには、BOSEプレミアムサウンドシステム(12スピーカー)もETC2.0車載器も本革シートもすべて標準でついている。実際に、多くの広報車には数十万円、あるいは100万円を超えるオプション品が付いている場合が多いが、広報車のZR-Vのオプション装備はフロアカーペットとドライブレコーダーだけ(プラス有償ボディ色)。
とにかく、ステーティングプライスの高さが、販売にネガティブに働いている……のではないか、と想像する。
さて、乗り出してみよう。プレミアムクリスタルガーネット・メタリック(6万0500円のopカラー)は、綺麗に写真を撮るのが難しいが、とても美しい。デザインも、ちょっと”ホンダ離れ”して、これまた評判が良い。ホンダっぽくない、というのは、フィット、シビック、ヴェゼルのラインとは違うデザインテイストだから。取材先でも「あのクルマ、ホンダなんですか? 欧州車かと思いました。カッコいいですね」と言われた(ホンダ車がカッコ悪いということではないと思うが)。
ZR-Vのインテリアは、シビック譲りだ。豪華ではないが、上質。サッパリ、ゴテゴテしていないのが、いい。スイッチ式のシフトコントロールもとても使いやすいし、とにかく乗った瞬間にすべてがあるべきところにあってくれるのがいい。
パワートレーンもシビック譲り
2.0L直4エンジンとe:HEVを組み合わせている。高速走行以外では、基本的にエンジンは発電、駆動はモーターが行なう。つまりこの領域はシリーズハイブリッドだ。だが、高速走行ではエンジン直結で走行する。その方が効率が良いからだ。もちろん、エンジン走行時にもモーターがアシストする場合もある。非常にインテリジェントな2モーターハイブリッドシステムだ。トヨタのTHSⅡ(最近はシリーズパラレルハイブリッドと呼ぶ)に対抗できる数少ないハイブリッドシステムだ。
ZR-Vの(シビックも同じ)e:HEVの最大の美点は、エンジンにある。トヨタのハイブリッドも日産のe-POWERもエンジンがかかってしまったときの「がっかり感」が気になる。エンジンの存在を消しきることができないのだ。
対するホンダは? ホンダの場合は、モーターで走っているときでも、あたかも「エンジンで走っている」かのようなフィーリングなのだ。しかも、とても気持ちの良いエンジンで走っている感覚。だから、エンジンがかかってしまったときの「がっかり感」が薄いのだ。また、エンジンサウンドが爽快。高速道路での追い越し時の加速の伸びやかさもZR-Vの大きな美点だ。
モード燃費は
WLTCモード燃費:22.0km/ℓ
市街地モード 19.4km/ℓ
郊外モード 24.7km/ℓ
高速道路モード 21.7km/ℓ
だ。今回は736km走って17.6km/Lだった。モード燃費の80%だったが、その理由も明白だ。
今回、ZR-Vで向かった先は、福島県エビスサーキット。東北自動車道で向かった。ご存知の方も多いと思うが、普通に走っている車両の巡航速度が高い。最高速度が120km/h区間も多い。必然的にWTLCモードでExtraHighモードを除いている日本のモードよりはかなり平均速度が高くなる。
e:HEVは高速走行を苦手としない(エンジン直結にするから)が、それでも120km/h+の巡航でWLTCモード通りの燃費を叩き出すのは難しいということだ。また全行程大人ふたりと機材を積んでいたこともあるかもしれない。
ZR-Vの4WDは、コンベンショナルなカップリングユニットを使っている。つまり、エンジンとリヤアクスルは物理的に繋がっている。最近トレンドの、リヤにモーターを積んでいるタイプではないってことだ。それでも、FFと4WDの燃費の差は極小だ。
e:HEV(FF)WLTCモード燃費22.0km/L
e:HEV(4WD)WLTCモード燃費21.5km/L
FFと4WDの価格差は22万円。ちなみにシビックには4WDの設定はない。だから、というわけではなく、ZR-Vなら4WDを選ぶ。
冬期の降雪だけでなく、線状降水帯だのゲリラ豪雨だの台風だのの自然災害が増えていることを考えると、せっかくのSUV(ZR-Vの最低地上高は190mm)なのだから、4WDをチョイスした方がいいと思う。
e:HEVのZとコンベ(1.5L直4ターボ)のZの価格差は35万0900円(つまり、e:HEV代)だ。これも、その価値は充分にある。
1週間、ZR-Vと過ごして736km走った。”シビック譲りの”というより、シビックより使いやすい。
全長×全幅×全高:4570mm×1840mm×1620mmは、どこで使うのにも、大きすぎず小さすぎない、ちょうどいいサイズ。標準装備のBOSEプレミアムサウンドシステムは、もちろん文句なしのBOSEサウンドを奏でてくれる。
ということで、このクラスでこのクオリティ(と装備)を求めたら、この価格になるわけだ。満足度は高い。
ホンダZR-V e:HEV Z AWD 全長×全幅×全高:4570mm×1840mm×1620mm ホイールベース:2655mm 車重:1630kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R マルチリンク式 駆動方式:AWD エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:LFC 排気量:1993cc ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm 圧縮比:13.9 最高出力:141ps(104kW)/6000rpm 最大トルク:182Nm/4500rpm 燃料供給:DI 燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク:40ℓ モーター H4型交流同期モーター 最高出力:184ps(135kW)/5000-6000rpm 最大トルク:315Nm/0-2000rpm WLTCモード燃費:21.5km/ℓ 市街地モード 19.5km/ℓ 郊外モード 23.9km/ℓ 高速道路モード 21.1km/ℓ 車両価格:411万9500円 ディーラーop ドライブレコーダー/フロアカーペット