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インパネは高級ピアノにも使われるローズウッド
TOYOTA 2000GTは、トヨタ自動車工業(当時)と日本楽器製造(現・ヤマハ)から独立したヤマハ発動機が共同開発したものであり、室内の随所にヤマハの楽器製造技術が活かされている。
その一番大きなものが、美しい木目のインストゥルメントパネル(インパネ)だろう。ベースとなるラワン合板の上に、高級木材として名高い南米産のローズウッドを厚さ6mmにスライスしたものが貼り込まれていのだ。1枚もののウッドパネルととしてはかなりの大きさであり、それをポリエステル塗料で塗装した後、磨き上げている。
新鮮な時にはバラのような芳香を放つものがあることからその名が付けられたローズウッドは高級ピアノにも使われるが、現在、ワシントン条約の絶滅危惧種に指定されているほどの希少な木材である。それをインパネ、インパネ下のスイッチ部、センターコンソール上部にふんだんに使っているのだ。
スイッチ類にヤマハ・エレクトーンの部品
おもしろいのはターンシグナルスイッチで、ステアリングコラムではなくインパネに設置されている。しかも、そのスイッチはヤマハのエレクトーン用スイッチを流用していたというのだ。そのため、自動車用スイッチとしては若干大きい。
ドライバーの正面には、左に9000rpmまで刻まれたタコメーター、右に260km/hのスピードメーター。このふたつの大きなメーターの左には、小型5連メーターがドライバーから文字盤が見やすいように斜めに角度をつけて並ぶ。左から、燃料計、油圧計、油温計、水温計、電流計の順だ。その下にはラジオがあり、ラジオの下には時計(左)とストップウォッチ(右)も備わっていた。
これらの下にある3本のレバーは、換気とヒーター用。超高級車のTOYOTA 2000GTでも、前期型にはクーラーがなかった(後期型はオプションで選択可能)。その右に見えるステッキ上のレバーは、パーキングブレーキだった。
贅の限りを尽くした内装は、国産車として過去に例がなく、現代のクルマでもほとんど見かけることはないもの。また、レストアなどでウッドパネルを貼り替えようにも、同レベルの木材を使うことは非常に困難だといわれている。今では塗装や水転写などの技術が発達しているが、ハンドメイドならではの美しさと味わいは、当時の技術者の情熱とロマンがなければ再現できない。
「高級とは何か」を追求し、工芸品として造られたクルマ、それがTOYOTA 2000GTだった。