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駆動力や直進安定性は好印象 四角ボディで内装の質感も◎
ジムニーシエラはコンパクトな悪路向けのSUVで、軽自動車のジムニーをベースに開発された。外装パーツの装着により、全長は155㎜、全幅は170㎜、ジムニーに比べて拡大された。タイヤサイズもジムニーは16インチ(175/80R16)だが、ジムニーシエラは15インチ(195/80R15)になる。後者は接地面を広げる代わりにホイールサイズを小さく抑えており、タイヤの外周は693㎜でジムニーと同等だ。
エクステリア
エンジンは1.5ℓ直列4気筒を搭載する。最高出力と最大トルクは、軽自動車のジムニーに比べて1.4〜1.6倍に増える。試乗すると、実用回転域の駆動力が高く扱いやすい。車両重量は4速ATでも1090㎏だから、排気量が1.5ℓなら余裕がある。ボディが軽くエンジンの負荷も小さいため、ノイズはジムニーよりも小さい。ホイールベースはジムニーと同じく2250㎜と短いが、タイヤの接地面を増した効果もあって直進安定性は良好だ。高速道路の横風にも強い。乗り心地は40㎞/h以下では硬めだが、タイヤがワイドで空気の充填量も多く、乗り心地に柔軟な印象も伴う。優れた直進安定性と併せて、長距離の移動にも適する。
乗降性
最も注目される性能は悪路走破力だ。耐久性の高いラダー(梯子状)フレームに、悪路向けのサスペンションを組み合わせた。駆動方式はエンジンを縦置きに搭載する後輪駆動ベースの4WDのみで、駆動力を高める副変速機も搭載する。4WDにはカーブを曲がるときに前後輪の回転数を調節するセンターデフなどが採用されず、舗装路は2WDで走るが、四輪駆動時には前後の駆動系が直結されて悪路走破力は高い。最低地上高にも210㎜の余裕があり、悪路のデコボコを乗り越えやすい。
インストルメントパネル
悪路走破力を高める制御として、ブレーキLSDトラクションコントロールが注目される。空転するホイールにブレーキを作動させ、駆動力の伝達効率を保つ仕組みだ。トランスミッションは5速MTも選べるが、開発者は「悪路走破力を追求するなら4速ATが良い」という。ドライバーはクラッチ操作の必要がなく、アクセル/ブレーキペダルとステアリングの操作に集中できる。デコボコの激しい悪路でも、副変速機を4L(4WDの低速モード)に入れてATレバーを2レンジにセットすれば、アクセルペダルを軽く踏むだけで安定して進んで行く。コンパクトなボディは、狭く曲がりくねった林道にも最適で、日本国内で購入できるSUVでは、ジムニーシエラとジムニーの悪路走破力が最も高い。
居住性
外観が直線基調だから、ボディの四隅もわかりやすく、街なかから悪路まで運転しやすい。インパネは機能的なデザインで質感も満足できる。3ドアボディだから、2名以内の乗車を中心に想定して開発されたが、片道30分程度の距離なら後席に大人が座ってもさほど不満は生じない。
うれしい装備
月間販売台数 2194台(22年11月〜23年4月平均値) 現行型発表 18年7月(一部仕様変更22年6月) WLTCモード燃費 15.4km/l ※5速MT車
ラゲッジルーム
一般ユーザーがジムニーシエラの悪路走破力を十分に発揮できる場面は、日本にはほとんど存在しないかもしれないが、万一のときはその優れた性能が乗員を救ってくれる。そうした安心感とプライドを得られることが、ジムニーシエラの大切な価値になっている。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.150「2023-2024 コンパクトカーのすべて」の再構成です。