目次
警察官と警察車両の年一度の晴れ舞台! 『令和5年千葉県警年頭視閲式』
2024年1月16日(火)、千葉県・幕張メッセイベントホールにて『令和5年千葉県警年頭視閲式』が開催された。年頭視閲式とは年始に各都道府県警が個別に行う警察行事で、地方自治体の安全を担う警察官が治安維持に万全を期すことを誓い、警察官が厳正な規律の保持と士気の高揚を図る目的で行進し、視閲官(警視庁の場合は警視総監、道府県警の場合は県警本部長)視閲・訓示を受けるというもの。
元旦に発生した能登半島地震に広域緊急援助部隊として応援を出すなどの影響から今年は開催を自粛あるいは延期する都道府県警も多い中、2024年8月で創立150周年の節目を迎える千葉県警は、参加部隊を縮小しながら予定通り式典を挙行した。
幕張メッセイベントホールを行進する県警警察官と警察車両
能登半島地震の犠牲者に黙祷を捧げたあと式典は始まった。警備部機動隊3個大隊と千葉県警管区機動隊を先頭に視閲部隊が行進を行いながら次々に入場してくる。最初に入場してくるのは警備部第一大隊、続いて第三大隊、第四大隊、成田国際空港警備隊の順番で一般部隊が行進を開始する。
成田国際空港警備隊はその名の通り県内に存在する成田国際空港の警備を担当する専任部隊で、他の都道府県警には見られない千葉県警独自の部隊だ。成田闘争における教訓に基づいて1978年に創設。2019年に部隊規模を1500名から1000名へ、さらに翌年には750名体制へと部隊規模を縮小したが、予測される様々な事態へ対応できるように銃器対策やNBCテロ対応、爆発物処理などの専門要員を増強している。同部隊最後尾の警察官は銃器対策要員らしく肩にH&K MP5短機関銃を肩にかけていた。
パトカーに白バイや機動隊車両など千葉県警が保有する警察車両が勢ぞろい
女性警察官特別機動隊、警察学校、刑事部鑑識課警察犬部隊、千葉県情報通信部機動警察通信隊の順番で一般部隊による徒歩行進が終わると、いよいよ車両部隊の行進が始まる。
先頭は機動隊車両による車両第一大隊で、指揮官車のランクル(ゲリラ対策車)を中心に、水上バイクを牽引したキャラバン、空港警備隊所属の小型警備車、小型通信車、爆発物処理車、小型遊撃車、水難救助用レスキュー車、遊撃放水車、警備車兼放水車、災害活動用高床バン型車(パジェロ)、特別遊撃車、災害救助用レスキュー車による編成となる。
その後を追って入場を開始したのが車両第二大隊で、こちらはセダン型のパトカーが中心となる。自動車警ら隊指揮車のランクルを先頭に、白黒塗装のクラウンパトカー、カムリ、マークX、スカイラインの覆面パトカー、移動交番が続く。
続く第三大隊は交通機動隊による編成で、交通機動隊指揮者のランクルを先頭に、クラウンの覆面パトカー、CB1300Pで編成された白バイ部隊、高速道路交通警察隊の白黒塗装のクラウンパトカー、サインカーによる編成だ。
車両部隊のトリを務めるのが、千葉市各区の防犯パトロールカーで、こちらは青いパトライトをルーフに載せた軽自動車で白黒塗装と白一色の車両が混在していた。
千葉県警保有の最古参は旧車ファン注目の視閲官車両
視閲部隊が整列したところで国歌斉聴、開始申告、来賓紹介の順番で式典は進む。その後、視閲官の巡閲となるのだが、ここで筆者はイベントホールをあとにし、急ぎ会場外の車両退出口へと向かう。というのも、視閲官車両が会場から退出するタイミングを至近距離から撮影するためだ。
というのも、千葉県警は式典用にユニークな車両を保有しているからで、1971年型シボレー・カプリス・コンバーティブル、クライスラー・ルバロンGTSコンバーティブル(年式不明の中期型)、クジラ・クラウンのオープンカーといずれも旧車ばかり。
いずれも県警が新車購入した車両と思われ、カプリスとくじらクラウンは50年以上、ルバロンは30年以上の長期に渡って式典で使われている県警きっての古参車両である。一般非公開の警察イベントでも運用されているのかもしれないが、一般に公開されるのは年に1度の年頭視閲式のみとなる。
イベントホールの車両退出口で待ち構えていると、式典に参列した車両が退出後に(稲毛海浜公園を会場としていた昔と違ってイベントホールはスペースに限りがあるので、一部の車両を除くと行進後は殆どの車両が会場をあとにする)、お目当ての車両が姿を現した。
警本部長が乗車したフルサイズのアメ車・シボレーカプリス
式典の主役とも言える1971年型シボレー・カプリスは、シボレー・ディビジョンの最上級モデルとなったフルサイズカーで、千葉県警が保有するのは1971~1976年まで生産されたセカンド・ジェネレーションの最初期モデルとなる。
ボディサイズは全長5585mm×全幅1835mm×全高1356mmと、現在の小型化したキャデラックやクライスラーなどと比べるとかなり大きい。
心臓部は排気量の異なる複数のV8エンジンを選ぶことができたが、県警の保有車両は350cu-in(5.7L)のスモールブロックエンジンを搭載しているとのこと。なお、石油危機以前のアメリカ車ということで、オプションでは454cu-in(7.4L)のビッグブロックも選ぶことができた。
使用頻度が低く上、大切に維持されている車両のようでコンディションは非常に良好で、シボレー製のV8エンジンは調子良さげな唸り声を上げていた。
10年ほど前から年頭視閲式にカムバック! クジラクラウンのオープンカー
ルバロンGTSとともに式典車として用いられたのが“クジラ”の愛称を持つ4代目クラウンだ。1990~2000年代前半までは年頭視閲式には3台のルバロンが参列していたのだが、いつの間にか2台となり(おそらくルバロンのうち1台は故障でも起こし、保守管理部品が確保できずに引退したのだろう)、かわりに年頭視閲式にカムバックしたのがこの車両というわけだ。
生産はカプリスとほぼ同時期の1971~1974年にかけて。千葉県警の車両はフロントグリルの形状が変化し、バンパーが大型化され、前期型がオーバーヒートが多発したことによる対策でバンパー下のインテークを大型化するなどの改良を施した1973年2月のマイナーチェンジ後のモデル(後期型)だとわかる。
スピンドル・シェイプと呼ばれるエッジを落とした独特のスタイリングを採用し、当時としては珍しいボディ同色のバンパーがスタイリングの特徴であったが、あまりに斬新なスタイリングが当時のユーザーには受け入れられず、また前述の通り、夏場にオーバーヒートが続出したことで人気は低迷。
ライバルであった日産のセドリック/グロリアにクラウンシリーズで唯一販売面で後塵を拝したことから「クラウン史上唯一にして最大の失敗作」と評する声もある。ただし、その個性的なルックスは熱烈なファンも多く、旧車イベントではその姿を見かけることが多い。
千葉県警の車両は6代目クラウンまで存在した2ドアハードトップをベースにオープンカーに改造したようだ。こちらもコンディションは良好で、旧車イベントならコンクールデレガンスも充分に狙えるクオリティだ。5ナンバーサイズの制約から現在のクラウンに比べるとサイズはふた回りは小さい。
式典終了後、カプリスとクラウンはイベントホール近くに設けられた「ふれあい広場」にて現行型パトカーとともに展示され、警察車両のファンや子供たちの人気を集めていた。
ただし、もうひとつの視閲官車両であるルバロンGTSはなぜか展示がされなかった。こちらも現在では希少な車両なので、来年の年頭視閲式では是非とも公開してほしいところではある。