清水和夫のメルセデス・ベンツEクラス考。新型から搭載されたMB.OSに近未来の自動車の姿が見える

新型Eクラス×清水和夫
メルセデス・ベンツの中でEクラスとは?
国際モータージャーナリスト・清水和夫は「メルセデス・ベンツはやっぱりディーゼル!」と一押しする、新型Eクラス「E220d」に試乗。そして、この新型Eクラスに初めて搭載された新世代 MBUX、ADASの進化を実感しながら、極上のドライブを満喫つつ、メルセデス・ベンツにおけるEクラスの存在意味を考察してみる。
IMPRESSION:清水和夫(Kazuo SHIMIZU)/MOVIE:StartYourEnginesX/ASSIST:永光やすの(Yasuno NAGAMITSU))

清水和夫の推しはディーゼル! E220dステーションワゴン・アヴァンギャルドにSクラスが見えた!?

新型メルセデス・ベンツEクラスもようやく日本に上陸した。2023年の4月頃、オーストリア行なわれた国際試乗会行ってきたが、その完成度の高さにちょっと驚いたけど、ようやく日本で乗れるってことで楽しみだ。

新型Eクラス×清水和夫
清水和夫が新型Eクラスに試乗。「メルセデス・ベンツのど真ん中がEクラス!」

今乗っているのはE220dステーションワゴン・アヴァンギャルド。エンジンは2.0Lディーゼル。今回、Eクラスは頑張って2.0Lガソリエンジンと2.0Lのディーゼルエンジン、それと2.0Lガソエンジンのプラグインハイブリッド(PHEV)をラインアップ。バッテリーは25.4kWくらいで、EV走行距離が112kmと言っていた。
プラグインハイブリッドはCHAdeMO対応でいいけど、やっぱり燃費だと確かディーゼルがWLTP(Worldwide harmonized Light vehicle Test Procedure/国際調和排出ガス・燃費試験法)モードでこの220dが18km/Lぐらい、ガソリンが14.3km/L。

今回気になったのは4MATIC(4WD)がない。と思ったら、SUVとかAMGで四駆があるが、この後Eクラスのオールテレーンが出てくるので、ソッチに4MATICを特化する感じ。ということで、セダンとステーションワゴンの最初の日本におけるエントリーモデルは、四駆はないFRのみ。

サイズがひと回り大きくなって昔のSクラス並みに

元々Eクラスは1953年ぐらいに出てきたが、最初から「E」という名前が付いていた。このEの意味は直噴のE(Einspritzung(ドイツ語/燃料噴射))。そこはあまり知られてないところではあるね。

全長=4940→4960mm(+20mm)、全幅=1850→1880mm(+30mm)、全高=1455→1470mm(+15mm)ということで、先代より1サイズ大きくなっていて、先代のSクラスくらい、どんどん大きくなってるなという印象。むしろ、今のCクラスが先代Eクラスのサイズ感だね。
私も昔Eクラスを持っていたけど、Eクラスは“ど真ん中のメルセデス”になってきたのかなっていう感じがしている。

このEクラスにはさらに1グレード上にSクラスがある。このクルマは“E”とは付いているけど、一昔前のSクラスかなとも思うね。

Eクラスはメルセデス・ベンツのセンターフォワード!

ダッシュボード中央にカメラ付いているが、これはドライバーモニタリング…じゃなくて「セルフィー&ビデオカメラ」。これを使ってZoomとかMicrosoft Teamsができるという。
全部デジタルコックピットになっているから、初めてNVIDIAが持っているグラフィカルCPUを使ったメルセデス・ベンツOSが最初に載った機種。
やがてこのOSはどんどん進化していく。特徴は、多くの機能を瞬時に計算できるという機能だけではなく、OTAによるアップデートもかなりやりやすくなっていると言われている。

しかし、このエンターテインメントは凄い。AmazonからAppleから、ありとあらゆるインフォテインメント系。

このデジタルコックピットのカーナビのデカさ! いいね、わかりやすくて。やっぱりCクラスより車格は1コ上だから、キャビンがゆったりしているし、本当に高級車。

新型Eクラス×清水和夫
ナビシート側まで広がるMB.OS搭載のMBUXスーパースクリーン

ソニーのAFEELA(アフィーラ)が出てくるけど、こういうアウトカー領域におけるインフォテインメントというのが、これからのデジタルコックピットとセットで競争領域になるんだろうなと思う。
このクルマ、メルセデス・ベンツの経験と技術の粋を集結し、メルセデスの本質的な、オーセンティックな乗り味と哲学を持っている。メルセデスにとってEクラスというのは、もう本当にセンターフォワードなんだなっていう気がする。

メルセデス・ベンツのADASは流石!

乗り心地は悪くない。でも、タイヤは少しコツコツ感があるが、メルセデスって最初はサスペンションを結構締め上げているので、どうしてもコツコツ感がある。まぁ1万~2万kmくらい走ると、大分こなれてくる。

新型Eクラス×清水和夫
新型EクラスのADASを試してみる

さあ進化したADAS(先進運転支援システム)を試してみたいと思う。
メルセデスの場合は、右ハンドルは右手の親指でスイッチの下側のプラス/マイナスのマイナスを1回押すだけでACC(アダプティブクルーズコントロール)がセットされる。LKAS(車線維持支援システム)も付いてるので、緩いカーブだったらハンズオンが基本だが、ほとんどカーブの中でクルマが泳がずにビシっとついてくる。

新型Eクラス×清水和夫
新型Eクラス E 220 d ステーションワゴン アバンギャルド

ドライビングポジションは、ペダルの右足と左足のかかとの位置とお尻の高さの差が少ないです。このヒールヒップは最近、トヨタもこだわっていて、ヒールとヒップの差が少ない、これは結構重要だ。
普通のクルマだと公園のベンチに座っているような感じになるので、ヒールヒップが300mm以上あると思うが、確かプリウスで240mmくらい、クラウンで280mmくらいにしたと聞いている。
メルセデスは今パッと座った感じはプリウスと同じくらい、ヒールヒップが240mmくらいの感じ。ポルシェとかフェラーリなどのスポーツカーに乗ると、ヒールヒップはもっと狭い。

新型Eクラス×清水和夫
ADASの安定感はさすがメルセデス!

今100km/hで走っているが、前のクルマに近づいてきたので自然に減速し今は90km/hくらい。ブレーキかけたって感じがないね。追い越し車線に出ると今度は前のクルマをロックオンして加速状態に入る。
最近、高速道路も120km/h制限のところが多いから、やっぱりドイツのアウトバーンで鍛えられたメルセデス・ベンツをはじめとしたドイツのクルマは、ハイスピードにおける日本の高速道路でも乗りやすい。

今回、2.0Lエンジンのガソリンもディーゼルも、頑張って1000万円切った。プラグインも確か1000万円切ったのかな(※E350eスポーツエディション スター:9,880,000円/税込)。

今日は横風がビュンビュン吹いているが、でもやっぱりメルセデスは直進安定性が抜群にいい。高速道路を骨太感で走らせるっていう技術が、非常に感覚的な言い方しているけど、日本車はまだちょっと軽い。ハンドルの重い軽いではなく、スタビリティみたいなところなのか。

Eクラス、ステーションワゴン、オールテレーンの存在意義

私は最初に23~24年前にW210の4MATICのEクラス、ESP(エレクトロニックスタビリティプログラム/横滑り防止装置)が最初に付いて1番安かったのでESPを勉強するために買った。それ以来、Eクラスというのは、メルセデスのセンターフォワードなんだなと思っている。

新型Eクラス×清水和夫
Eクラスはメルセデス・ベンツのセンターフォワード

去年、国際試乗会に行った時に、1953年からの歴代Eクラスに乗った。そこにはなんかこう、哲学めいたものを感じた。

今回、日本に導入されたディーゼル、2.0Lエンジンのプラグインハイブリッド、セダンとステーションワゴンがある。
が、気になる4MATICはないの?と言ったら、この後でオールテレーンのEグラスがこのステーションワゴンで出てくる。「オールテレーン/Eクラス/ステーションワゴン/ディーゼル」、私が一番欲しいなと思っているクルマ。
SUVだとちょっと行きすぎている感じ?があるので、CクラスもEクラスも、ちょうどオールテレーンくらいがちょうどいい。

最初にそのオールテレーン的なクルマを出したのは、アウディのクワトロ。オールロードクワトロかな。SUBARUでもSUVの手前くらいのクロスオーバーSUV、トヨタ・クラウンもそうだが、その辺が今一番現実的に欲しいというか、日本では使い勝手がいい。SUVまでいくとクルマを駐めるところが限られてしまうし。

MB.OSにメルセデス・ベンツの未来が見える

今回、このクルマのディーゼルとガソリンに乗ってきて、やっぱりADASの進化、それがもの凄くいい。インフォテインメントも。デジタルコックピットで、ここになんかこう違う世界がある。

今までは「ハイ、メルセデス!」で音声認識していたが、一人乗りだと「この辺のガソリンスタンド!」と言うとすぐに出てきた。そういったインターフェースもどんどん良くなってきている。

この新型Eクラスから、メルセデス・ベンツはMB.OS(Mercedes-Benz Operating System)、これはNVIDIAと一緒に作っているが、それが初めて搭載された。将来的にこれはセントラルeアーキテクチャなのかなと思う。
まだ4つくらいのブロックに分けていると思うけど。このeアーキテクチャという領域は車載OSと称してどんどん良くなってくる。
AppleのiOSとかGoogleのAndroidみたいに、まずはOSを入れて、その上にいろんなユーザーフレンドリーなアプリケーションを載せていくっていうようなアーキテクチャーになるので、それがついにメルセデス・ベンツが最初にやったのかなっていう気がする。

新型Eクラス×清水和夫
私が今欲しいのは、オールテレーン/Eクラス/ステーションワゴン/ディーゼル! 登場を待つ

BMWもBMW OS8.5とか9.0とか、どんどん先進化してきている。
これからの自動車は、電動化と知能化と、OTAみたいな世界でデジタル技術を駆使し、どんどん進化していくので、その分クルマは便利に魅力的になる。
が、それだけ値段も上がってくる。
だから売り切り、買い切りから、サブスクみたいな乗り方もこれからあるあるなのかなと思う。

今回のモデルは全部4桁万円(1000万円)切ったので、本当に頑張ったプライシングだと思う。

【SPECIFICATIONS】
車名:メルセデス・ベンツE220d ステーションワゴン アヴァンギャルド(ISG搭載モデル)
全長×全幅×全高:4960×1880×1470mm
ホイールベース:2960mm
トレッド(前/後):1630/1645mm
車両重量:1930kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.4m
エンジン型式/種類;654M直列4気筒DOHC+ターボ
内径×行程:82.0×94.3mm
総排気量:1992cc
最高出力:145kW(197ps)/3600rpm
最大トルク:440Nm/1800-2800rpm
燃料タンク容量:66L(軽油)
ミッション:9速AT
燃料消費率(WLTCモード):18.2km/L
サスペンション(前/後):4リンク/5リンク
ブレーキ(前/後共):ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前/後共): 225/55R18
車両本体価格(税込):9,550,000円
【NEW Eクラス 価格(税込)】
・セダン
E 200 アバンギャルド:8,940,000円
E 220 d アバンギャルド:9,210,000円
E 350 e スポーツEdition Star:9,880,000
・ステーションワゴン
E 200 ステーションワゴン アバンギャルド:9,280,000
E 220 d ステーションワゴン アバンギャルド:9,550,000円

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著者プロフィール

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、N1耐久や全日本ツ…