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新型アウトランダーPHEVはデザイン、質感、装備のすべてがレベルアップ
先代モデルと見比べると、新型は高級感も存在感も大幅にレベルアップしているのが一目瞭然。新型のボディサイズは全長4710mm×全幅1860mm×全高1740〜1745mmなので、先代よりも全長は15mm、全幅は60mm、全高は30〜35mmサイズアップしている。が、実車を前にすると、新型はそうしたスペックの差以上に堂々としているように見える。
そう感じさせる理由の一つは、一新されたフロントデザインだ。フロントフードが高くて厚みのあるものになったおかげで、顔つきの迫力が倍増している。人間だと小顔の方がうれしいが、SUVの場合は顔がデカい方が力強くていい。そして上側にデイタイムライト、下側にヘッドライトを配置する「だまし絵」的ライトによって先進さも感じさせる。
エクリプスクロスのマイナーチェンジモデルでも同様の手法が見られるが、新型アウトランダーPHEVはニューモデルとして一からデザインされたこともあり、より完成度の高いフロントフェイスになっているような気がする。
もう一つが20インチ・ホイールだ。先代は18インチだったので、なんと2インチアップである。人間も、上半身だけ一生懸命筋トレして下半身が貧弱だと「見せ筋」「チキンレッグ」などと揶揄される。新型アウトランダーPHEVは、上半身と下半身がバランス良く鍛え上げられた感がある。
ドアを開けて乗り込むと、エクステリア以上に新型の進化が感じられた。なにせ、先代が登場したのは2012年のこと(2012年の総理大臣は民主党の野田さんだった…懐かしい)。それ以降、世の中は急速にデジタル化が進んだこともあり、先代のインパネを見るとさすがに時代を感じさせられた。
新型のインパネは9年間の時の流れを感じさせるもの。ダッシュ中央上部には9インチのセンターディスプレイ、メーターには12.3インチのフル液晶ディスプレイを全車に標準装備。さらに最上級グレードにはヘッドアップディスプレイまで標準装備する。3つのディスプレイはいずれも見やすく、走行中でも素早く情報を確認することができた。
また、インパネやドアトリムには触感のいいソフトパッドを配置するほか、要所にステッチをあしらうなど上質感も大幅にレベルアップ。センターコンソールの加飾に本物のアルミを使っているというのも驚き。サドルタン(明るいブラウン)のアクセントカラーを採用する最上級グレードに至っては、「う〜ん、プレミアム」とつぶやきたくなるくらい良い雰囲気だ。
新型アウトランダーPHEVは、3列シート・7人仕様がラインナップに加わったこともトピックだ。実際に身長180cmの編集長が3列目に座ってみると、ご覧の通り。頭上スペースも膝前スペースも余裕はない。が、そもそも3列目に180cmの人間が座ろうというのが間違いでした。シートには1ヶ所に体重が集中しないようクッション内にお尻型のサポート材を設定するなど快適性への配慮もあり、背が低い子どもや女性なら長時間のドライブでも無理なく過ごせそうだ。
踏めば踏むほど曲がっていく!? 俊敏コーナリングが誰でも楽しめる
前置きが長くなったが、いよいよ新型アウトランダーPHEVの試乗スタート。まず印象的なのは、ツインモーター4WDらしい力強い加速だ。エンジンのようにだんだんと盛り上がっていくのではなく、カタパルト発進のように鋭くダッシュする。新型はフロントモーターが60kWから85kWに、リヤモーターが70kWから100kWへとそれぞれ出力が向上したこともあり、先代よりも加速性能は大幅に向上した。
そんなパワー感以上に印象的だったのが、ハンドリングだ。コーナーで調子に乗ってアクセルを踏んでいくと、普通はどんどん外側に膨らんでいくものだ。車重が重く、重心も高いSUVならその傾向はますます強くなる。それなのに新型アウトランダーPHEVときたら、踏めば踏むほどグイグイと曲がっていくではないか。自分のような下手っぴなドライバーでも、まるで運転が上手くなったかのようにスムーズにコーナーをクリアできる。これは楽しいぞ!
新型のご機嫌なコーナリングの源となっているのは、日産・ルノーと共同開発した新プラットフォームの剛性の高さ、一新されたサスペンション、そして三菱の伝家の宝刀「スーパーオールホイールコントロール(S-AWC)」だ。
S-AWCは、ハンドル角、ヨーレイト、駆動トルク、ブレーキ圧、車輪速などをセンサーで検知して、四輪を細かく制御する。新型アウトランダーPHEVでは前輪だけでなく後輪でもブレーキ制御されるようになり、滑りやすい路面でより安定して走れるようになったという。
もう一つ、コーナーが楽しい要因として挙げたいのがステアリングフィールだ。新型は2ピニオン式のパワーステアリングを採用する。アシストモーターをステアリング軸から離れた位置に搭載することで、センサーが操舵トルクをより正確に検知できるのがメリットだ。ロック・トゥ・ロックが先代の3.3回転から2.6回転へとクイック化されたこともあり、リニアな操舵感が実に気持ち良い。
ブレーキもゴリゴリ効いて頼もしい。新型は20インチの大径ホイールを履くおかげで、ブレーキディスクの大型化を実現。フロントφ350mm(先代はφ296mm)、リヤφ330mm(同302mm)となり、制動力がアップした。回生協調ブレーキにありがちな不自然さがないのも美点である。
今回試乗を行ったのはサーキット。SUVを試乗するには不向きな場所だと最初は思ったけれど、じつは新型アウトランダーPHEVの進化した走りを堪能するには最適だったというわけ。堂々たる存在感や室内の上質さ、優れた環境性能、そして走りの楽しさを兼ね備えた、まさに三菱のフラッグシップSUVと呼ぶにふさわしい1台である。
三菱アウトランダーPHEV P・主要諸元
■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4710×1860×1745mm
ホイールベース:2705mm
車両重量:2110kg
乗車定員:7名
最小回転半径:5.5m
燃料タンク容量:56L(無鉛レギュラー)
■エンジン
型式:4B12 MIVEC
形式:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:2359cc
ボア×ストローク:88.0×97.0mm
圧縮比:11.7
最高出力:98kW/5000rpm
最大トルク:195Nm/4300rpm
燃料供給方式:ECI-MULTI(電子制御燃料噴射)
■フロントモーター
型式:S91
定格出力:40kW
最高出力:85kW
最大トルク:255Nm
■リヤモーター
型式:YA1
定格出力:40kW
最高出力:100kW
最大トルク:195Nm
■動力用主電池
種類:リチウムイオン電池
総電圧:350V
総電力量:20kWh
■シャシー系
サスペンション形式:Fマクファーソンストラット・Rマルチリンク
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク・Rベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:255/45R20
■燃費・性能
【ハイブリッド燃料消費率】
WLTCモード:16.2km/L
市街地モード:17.3km/L
郊外モード:15.4km/L
高速道路モード:16.4km/L
EV走行換算距離(等価EVレンジ):83km
充電電力使用時走行距離(プラグインレンジ):85km
【交流電力量消費率】
WLTCモード:239Wh/km
市街地モード:220Wh/km
郊外モード:221Wh/km
高速道路モード:262Wh/km
一充電消費電力量:19.90kWh/回
■価格
532万700円