【登場が噂されるジムニー5ドア! ライバルはこれだ】①ダイハツ・タフト:逆のアプローチから生まれた同ジャンルのクルマ

インドではすでに販売されているスズキ・ジムニーの5ドアモデル。日本へ導入されれば、どのような車種と競合するのだろうか。ジムニー5ドアのライバルとなりうる車種との比較をシリーズでお伝えする。第1弾はダイハツ・タフトとジムニー5ドアの悪路走破性能にスポット当てて比較してみよう。

ダイハツ・タフトとスズキ・ジムニーの違い

2020年6月に登場したダイハツ・タフト。全長3395×全幅1475×全高1630mm。

ダイハツ・タフトとスズキ・ジムニーは同じSUVにカテゴライズされるものの、その成り立ちはまったく異なるクルマだ。

決定的な違いは車体構造にある。タフトは乗用車と同じモノコックボディを採用しており、軽自動車に大径タイヤを履かせたうえで車高をリフトアップし、SUVらしい特徴を与えたクルマに過ぎない。

高い剛性を生み出すジムニーのラダーフレーム

対するジムニーは、ラダーフレームと呼ばれる高強度・高耐久のはしご状フレームにキャビンが乗った構造をしており、ラダーフレームだけですべての負荷を受け止められるようになっている。サスペンションも駆動系も作りは本格的なオフロードカーそのものだ。

言ってしまえば、タフトは急傾斜や岩場を走行するようなオフロード走行には適さない。しかし、ジムニーのストレッチ版とも言えるジムニー5ドアは、タフトと用途が似てくる。

スズキ・ジムニー 5ドア。全長3985×全幅1645×全高1720mm(インド仕様)。

ボディが延長されることでジムニー5ドアは、持ち前の悪路走破性能がわずかに低下してしまう。より正確に言えば、ホイールベースが長くなったことで3ドアモデルよりも対地障害角が劣ってしまうのだ。

オフロード走行においてボディ剛性やサスペンション形式は重要だが、起伏のある路面を走行するうえでさらに重要なのは駆動方式と、駆動を邪魔しない車体下回りの設計と言える。

タフトとジムニー5ドアにおける下回りの設計に焦点を当てて、両車の悪路走破性能を比較してみよう。

対地障害角からジムニー5ドアとタフトのオフロード性能を比較

ジムニー5ドアの対地障害角図。3ドアのジムニーシエラに比べてランプブレークオーバーアングルが小さくなっている。

オフロード走行では「対地障害角」と呼ばれる以下の3つの数値が重要視される。

  • アプローチアングル:
    前輪の接地点とフロントバンパーの下面先端を結んだ線の対地角度
  • デパーチャーアングル:
    後輪の接地点とリアバンパーの下面先端を結んだ線の対地角度
  • ランプブレークオーバーアングル:
    前後輪それぞれの接地点とホイールベースの中心を結んだ線が交差する角度

以上をまとめた「3アングル」の数値は、車体全長とホイールベース、最低地上高の寸法に加え、車体下回りの形状によって大きく変動する。

アプローチアングルとデパーチャーアングルが大きいほど、平地から急傾斜を差し掛かる際、あるいは急傾斜から平地へ差し掛かる際にバンパーが地面に干渉しづらい。ランプブレークオーバーアングルが大きいほど凸部を乗り越える際に車体下面が腹づきしにくくなる。

バンパーや車体が地面と干渉すると、抵抗になるうえタイヤの接地面圧が低下して空転を起こしやすくなり、最悪はその場から動けなくなってしまう。対地障害角は悪路走破性能の高さを表す重要な指標と言えるだろう。

両車の対地障害角を含むスペックは以下のようになっている。

スペック/車名ジムニーシエラ(参考)ジムニー5ドアタフト
アプローチアングル36°36°27°
デパーチャーアングル47°47°58°
ランプブレークオーバーアングル28°24°
最低地上高210mm210mm190mm
ホイールベース2250mm2590mm2460mm

それぞれのアプローチアングルを比較すると、ジムニー5ドアは傾斜角36度以下の傾斜なら進入できることになる。それに対してタフトは27度までの傾斜でなければバンパーが路面と干渉してしまう。

デパーチャーアングルに目を向けるとタフトの方が圧倒的に優れていることが分かる。ただし、これはオフロード走行のためではなく室内空間を広げるために可能な限りタイヤを4隅に追いやった結果であり、多くの軽自動車がこれくらいの数値になることは覚えておきたい。

起伏がある路面では対地障害角が大きいほど地面とボディの干渉が少ない。

ジムニー5ドアとタフトとの比較で注目すべきはランプブレークオーバーアングルだ。

ジムニーシエラのランプブレークオーバーアングルが28度であるのに対し、ジムニー5ドアは24度に低下している。これは最低地上高はそのままにボディサイズを延長した弊害であり、ジムニー5ドアはホイールベースが広がった分、3ドアよりも凸部がある路面で腹づきしやすくなったことを意味する。

とはいえデメリットばかりではない。ホイールベースが広がることで、傾斜を走行する際は車体の前後傾斜角が抑えられるため乗りやすくなるなどのメリットもある。

SUV風の軽自動車であるタフトだが必要十分な対地障害角が確保されている。

一方、タフトの方はランプブレークオーバーアングルの正確な数値が公開されていないが、おおよその計算で求めると21度ほどになる。一般的な乗用車のランプブレークオーバーアングルは15度前後となるため、それより遥かに優れた数値であることは間違いない。

タフトはジムニー5ドアのライバルとして十分な性能

ジムニーシエラの室内長は1770〜1790mm。荷室長はフロントシートまで最大1470mm。ジムニー5ドアはこれらの数値にホイールベース延長分を数値になる。

SUVとひとくくりにされても、用途によってクルマに求められる性能は異なる。

3ドアのジムニーおよびジムニーシエラの悪路走破性能はクロスカントリー競技車両としては一級だが、多人数で大量の荷物を積んで移動するような使い方は、室内空間の狭さが用途に制限をかけてしまう。

ジムニー5ドアは悪路走破性能の低下と引き換えに、荷室と後席居住性の拡大を狙ったクルマと言える。一方のタフトは、日本における日常の利便性が追求された軽ハイトワゴンに手を加えて悪路走破性能を引き上げたクルマだ。

ジムニー5ドアとタフトは、逆方向からのアプローチで生まれた同じジャンルのクルマと言えるだろう。こういったクルマは絶対的な悪路走破性能よりも、室内空間の広さや使い勝手のよさといった点に比重が移る。

タフトの室内長は2050mm。荷室長はフロントシートまで最大1340mm。

タフトは小さな車体にも関わらず室内長は2050mmもある。ジムニー5ドアの正確な室内長は公開されていないが、延長されたホイールベース値の340mmをそのまま足しても2135mmに留まり、タフトと大きな違いはない。

両車ともラゲッジルームには防水処理が施され、荷物フックなどのユーティリティが充実している点も同様だ。

ランプブレークオーバーアングルの数値が多少低くなったとしても、ジムニー5ドアの悪路走破性能は十分に高い。しかしハードなオフロードを走行でなければタフトの高いトータルバランスが光る。

タフトとジムニー5ドアは、お互いにライバルとして十分に張り合える性能を備えたクルマと言えるだろう。

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