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Eクラスに近いボディサイズに2.0Lガソリンターボを搭載
今回登場したCLEのボディサイズは全長4850mm、全幅1860mm、全高1420mm、ホイールベースは2865mmとなっている。従来のE200クーペスポーツと較べると、全長は+5mm、全高は-10mm、ホイールベースは-10mm。C180クーペスポーツと比較すると全長は+150mm、全幅+50mm、全高+15mm、ホイールベースは+25mmというサイズ差だ。なので、ボディサイズから見ると、Cクラスクーペを内包したEクラスクーペとでも言えるだろうか。
ドイツ本国ではパワートレインは2.0Lガソリンターボと2.0Lディーゼルターボ、ボディにはカブリオレもあり、さらにはAMGモデルもラインナップされているが、日本市場に導入されるのは後輪駆動2.0Lガソリンターボ+クーペボディのCLE200クーペスポーツのみの展開となる。
これまでのクーペモデルのイメージを引き継ぎながらも、僅かに逆スラント化されたフロントノーズや、スリーポインテッドスターモチーフの立体的なパターンをあしらったフロントグリルがエレガントさとエモーショナルさを引き立てる。サイドでは、リヤタイヤの上のボディを指でつまみ上げたような、鋭いエッジのラインに注目だ。リヤに目を移すと、なだらかに降りてきたルーフラインがボリューミーなフェンダーと一体化して、どっしりと構えながらも流麗なフォルムを形づくっている。
ふたつのディスプレイと厳選素材が生み出す寛ぎのインテリア
インテリアは12.3インチと11.9インチのふたつの高解像度ディスプレイがドライバーを迎える。センターの11.9インチメディアディスプレイは、センターコンソールから生えたような造形と、ドライバー側に6度傾けたデザインが特徴で、ドライバーオリエンテッドな空間を生み出している。
ISGが生み出すトルクが優雅な走りをもたらす
2.0Lガソリンターボエンジンはパワーが204ps/5800rpm、トルクは320Nm/1600−4000rpmというスペックだ。これに17kW/205Nmを発揮するモーターがアシストしてくれる。モーターパワーが加わると言ってもいわゆるマイルドハイブリッドであるから、走りはあくまでエンジンが主役だ。
一般的なハイブリッドと聞いて想像するような、モーターとエンジンを適宜切り替えながら……という走りとは異なる。ただ、メルセデス・ベンツがISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)と呼ぶアシスト用モーターの出力は17kW/205Nm。最高出力はともかく、最大トルクは2.0Lガソリンエンジン並の力を発揮するのだ。
なので、マイルドハイブリッドとはいえそのアシスト力は大きい。アクセルを踏み込んだ瞬間から立ち上がる205Nmのモータートルクがグイッとクルマを前に押し出し、エンジンのトルクバンドへとシームレスに繋がって1760kgのボディを滑らかに加速していく。この205Nmのモーターアシストの威力は大きく、追い越しを掛けようとアクセルを踏み足すようなシーンでも、大抵の場面でキックダウンすることもなく、静かに、力強くスピードを乗せてくれるのだ。その加速する様は流麗なクーペにふさわしい優雅なものだと言えるだろう。
CLEのドライブモードは4つ。エコ、コンフォート、スポーツ、そして自分で好みの設定を付くインディヴィジュアルだ。おそらくエコ、あるいはコンフォートで走る機会が多いと思うが、スポーツにするとエンジンは高めの回転をキープするようになり、足まわりも引き締まってステアリングの手応えが増す。ただ、あくまでもクーペであるから、ガツガツするようなスタイルにはならない。ジョギングでリラックスして走っているところから、いつもよりもちょっとペースを上げて走るような感じに近いだろうか。
ちなみに試乗したのは雨が吹き付けるような荒れた天気の下だったのだが、そのおかげで気がついたことがある。それは、雨天での視界が驚くほど良いことだ。2本のワイパーがフロントウインドウを拭き取る際に、普通は左右のワイパーが重なるあたりに拭き残しができるものだが、CLEではそれが一切無い。ウインドウ中央の上側にも、下側にも、拭き残しがまるで無くてクリアな視界を提供してくれるのだ。普通はどうしても中央上下に出来る拭き残しが視界を狭め、無意識に緊張を強いられるのだが、それが無い。晴天時とほぼ同等の視界の中、自然とリラックスした状態で運転できるので、雨天走行時の疲労も小さいはずだ。
最新MBUXがクルマとドライバーの距離を縮めてくれる
さて、CLEの目玉のひとつが第三世代のMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)を搭載したことだ。「Hey,Siri」や「OK,Google」と同じように「Hi,Mercedes」のキーワードで音声アシスタントを起動させ、ボイスコマンドで各種機能を使いこなすものなのだが、この対話機能の充実ぶりがめざましいのだ。「どこそこへ行きたい」と言えば即座に行き先候補が表示されるし、「運転席が暑い」といえばエアコン温度を下げてくれる。助手席にいる気心の知れたパートナーにあれこれとお願いするような感覚でCLEとの対話が可能なのだ。
また音声入力機能だけでなく、ドライバー個々のプロファイルを作成して、シートポジションやドアミラー位置、好みのアンビエントカラー、お気に入りのオーディオといったさまざまな設定を保存し、即座に呼び出せるようになっている。また、ルーティン機能が搭載され、在る一定の条件下で操作する項目を作動させられる。例えば、外気温が何度以下になったらシートヒーターを作動させて、アンビエントライトは何色にする、というようなルーティーン項目を設定・作動させられるというものだ。
このようにCLEは、単なる機械という枠を越えて、ドライバーの意志を汲み取って応えるパートナーのような存在でもあるのだ。もちろん、音声コマンドは発話をなんでも聞いてくれるというわけではない。だが、しゃべり方を工夫して理解して貰えると、CLEと上手く意思疎通できたようでちょっと楽しかったりするし、次はこんな風に伝えてみようかな、などと考えたりもするようになるのだ。例えるなら、初対面で感触を探りつつ会話していた相手と、段々理解を深めて気兼ねなく話すようになる過程と似たような感じだ。そう考えると、CLEは単なる移動のための道具ではなく、車内の空間をより快適にしてくれるパートナーでもあると言えるのではないだろうか。人間関係を構築するように、CLEとの関係を積み上げていく。最初はちょっと融通が利かないようにも思えるメルセデス嬢と、お互いを理解しあえる関係を作っていくのは、アナタ次第なのだ。
■メルセデス CLE 200 クーペ スポーツ(ISG搭載モデル)
全長×全幅×全高:4850mm×1860mm×1420mm
ホイールベース:2865mm
最低地上高:140mm
車両重量:1760kg
乗車定員:4名
最小回転半径:5.2m(ドライバーズパッケージオプション装着時:5.0m)
エンジン:2.0L直列4気筒ターボ
排気量:1997cc
最高出力:150kW[204ps]/5800rpm
最大トルク:320Nm/1600-4000rpm
モーター最高出力:17kW/1500-3500rpm
モーター最大トルク:205/0-750rpm
燃料タンク容量:プレミアム66L
WLTCモード燃費:14.5km/l
タイヤサイズ:245/40R19
車両本体価格:850万円