「不易流行」やっぱりランクル。ランドクルーザー250こそシリーズのど真ん中だ

70、300シリーズに新型250が加わったことで、ランドクルーザーシリーズが完成した。「原点回帰」を唱えて開発されたランドクルーザー250。その実力は如何に?
TEXT:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:長野達郎(NAGANO Tatsuo/ニューモデル速報)

本来の役割と使命に“原点回帰”したのが250

トヨタ・ランドクルーザー250 ZX “First Edition” 4月18日に特別仕様車ZX”First Edition”とVX”First Edition”、合わせて8000台が限定発売された。月販基準台数は2250台

ランドクルーザー群の開発にまつわる話を聞いていたら、「不易流行」という四字熟語が思い浮かんだ。「不易」は時代の変化に関係なく、常に人を感動させる本来の姿。「流行」はその時代に応じた新しい表現だと辞書にある(角川必携国語辞典)。

1951年のBJ型に起源を持つランドクルーザーは「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」として、信頼性・耐久性・悪路走破性を進化させて現在に至る。この、信頼性・耐久性・悪路走破性こそが「不易」の部分だろう。時代の変化に関係なく受け継いでいるこれらの性能をベースに、約170の国と地域で「人の生活を支えるクルマ」として、時代に応じた新しい機能を付加したのが現行モデルである。

その最新事例がランドクルーザー250(ニーゴーマル)だ。ランドクルーザーは役割と使命に基づき、ステーションワゴンとヘビーデューティー、ライトデューティーに枝分かれした。常にその時代の最新技術を投入し、キング・オブ4WDにも位置づけられる高級・豪華路線を行くのが、ステーションワゴンの300シリーズだ。

ランドクルーザー250のテーマは「原点回帰」

1960年にデビューした40シリーズの堅牢性を受け継ぎ、業務用途や過酷な環境での使用を主体とするヘビーデューティーモデルが70シリーズ。そして、高い悪路走破性をベースに快適性を付与し、多くの人の生活実用を支えるライトデューティーモデルが250シリーズである。

前身のランドクルーザー・プラド(150シリーズ)が高級・豪華路線に寄りすぎてしまった反省から、250の開発にあたっては軌道修正が行なわれた。この件について、ランドクルーザー群の開発責任者を務める森津圭太氏は次のように説明する。

ランドクルーザー群の開発責任者を務める森津圭太氏

「本来であれば人の生活を支えるべき生活実用モデルが、高級・豪華な方向にシフトしてしまったのかもしれません。今回、(250は)ランドクルーザーの中心として、本来の役割と使命に“原点回帰”させ、質実剛健なオフローダーへとゼロから作り直しました。そこで、ブランドの中心を担う意志を込めて、コンセプトは『ザ・ランドクルーザー』としました。ランドクルーザーの真ん中に回帰させることで、プラドのサブネームを取り、ランドクルーザー250として生まれ変わりました」

ランドクルーザー・プラドは90(1996年)、120(2002年)、150(2009年)と30刻みで進化を遂げてきた。2024年4月18日に発売された最新型は、180ではなく250。刻みの大きさは進化の大きさを表しているという。

全長×全幅×全高:4925mm×1980mm×1935mm ホイールベース:2850mm
トレッド:F1665mm/R1665mm
最小回転半径:6.0m 最低地上高:225mm

300と同じGA-Fプラットフォーム採用

試乗会場に展示されていたプラットフォーム(300のもの)
GA-Fプラットフォーム
フレームの剛性は格段に上がっている

その250は300シリーズと同じGA-Fプラットフォームを採用している。ランドクルーザー伝統のラダーフレームだ。プラットフォームを一新したことで軽量化を果たしつつ、150プラド比で150%の高剛性を実現している。剛性が高いフレームを軽く作るのは難しかったが、非線形テーラードウェルドブランクと呼ぶ、異なる厚みの鋼板をレーザー溶接でつなぎ合わせたうえでプレス成型する技術を適用したことで、高い強度・剛性と軽量化を両立させることができた。

GA-Fプラットフォームに300と異なるボディを載せるだけではつまらない。250の開発にあたっては、フロントオーバーハングの短縮とボディの四隅をそぎ落とすことにこだわった。その理由を森津氏は次のように説明する。

室内長×幅×高:2685mm×1600mm×1190mm

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「私が考えるクルマの理想形は、屋根が小さく見えてタイヤが四隅に配置されていること。それが一番カッコイイですし、性能的にも一番いい。まずは、それを実現したかった。さらに300との差別化を考えた場合に、扱いやすさを追求したいと考えました。250は生活に必要なクルマだからです。そこで、角をしっかりそぎ落として取り回しを良くしたい。そこもポイントでした」

プラットフォームの基本構造は300と同じだが、サイドフレームは短くしている。困難を極めたのは衝突安全性の確保で、そのために開発を3ヵ月ほど止めたという。それほどのこだわりが詰まっているということだ。衝突安全性を確保するためサスペンションの取り付け点を動かしたり、車軸より前にあったスタビライザーを後ろに動かしたりするなどの調整を行ない、衝突の際に「しっかりつぶすエリア」を確保した。

短いオーバーハングと角の切り落とし効果もあり、ランドクルーザー250は引き締まったボディと張り出したタイヤによる圧倒的な安定感を実現している。悪路で当たりにくくするためにランプやグリルを中央に寄せたことで、ランドクルーザー伝統の機能美を生み出してもいる。

エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ エンジン型式:1DG-FTV型 排気量:2754cc ボア×ストローク:92.0mm×103.6mm 圧縮比: 最高出力:204ps(150kW)/3000-3400rpm 最大トルク:500Nm/1600-2800rpm 過給機:ターボ 燃料供給:コモンレール式筒内燃料直接噴射 使用燃料:軽油 燃料タンク容量:80L トランスミッション:8速AT

パワートレーンは2種類。2.8L直列4気筒ディーゼルエンジン(最高出力150kW、最大トルク500Nm)と8速ATの組み合わせ、それに、2.7L直列4気筒自然吸気ガソリンエンジン(最高出力120kW、最大トルク246Nm)と6速ATの組み合わせだ。ディーゼルは力強い走りがウリ、ガソリンは良品廉価の位置づけである。

250はランドクルーザーで初となる電動パワーステアリング(EPS)を採用したのもポイントで、これにより「オフローダーの基本性能を追求するとともに、どんな道でも、誰でも扱いやすく楽しい走りを実現している」と説明する。ランドクルーザーの真ん中としての役割と価値を受け継ぎながら、時代に応じた新しい価値を付加したのが250だ。

右はVX”First Edition”(ガソリン ボディカラーはサンド)、左はGX(ディーゼルボディカラーはスーパーホワイトⅡ)
丸目型Bi-Beam LEDヘッドランプ(オートレベリング機能付)
位置づけとしては、角目が標準仕様だ。
タイヤサイズ:265/70R18 ダンロップ GRANDTRECK AT23
トヨタ・ランドクルーザー250 ZX "First Edition"
全長×全幅×全高:4925mm×1980mm×1935mm
ホイールベース:2850mm
車重:2410kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rトレーリングリンク車軸式
駆動方式:4WD
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
エンジン型式:1DG-FTV型
排気量:2754cc
ボア×ストローク:92.0mm×103.6mm
圧縮比:
最高出力:204ps(150kW)/3000-3400rpm
最大トルク:500Nm/1600-2800rpm
過給機:ターボ
燃料供給:コモンレール式筒内燃料直接噴射
使用燃料:軽油
燃料タンク容量:80L
トランスミッション:8速AT

WLTCモード燃費:11.0km/L
 市街地モード8.5km/L
 郊外モード11.0km/L
 高速道路モード12.6km/L
車両価格:785万円 

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…