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■軽の中でもスタイリッシュさと性能が際立ったミニカスキッパー
1971(昭和46)年5月12日、三菱自動車の「ミニカスキッパー」がデビュー。スキッパーは、「ミニカ70」をベースにしたファストバックスタイルのスペシャリティカーで、軽らしからぬ力強い走りと名車「ギャランGTO」をスケールダウンしたようなスタイリングが注目を集めた。
●ベースとなったミニカは、三菱における軽の基幹モデル
ミニカは、1962年に前年発売の軽商用車「三菱360」をベースにした三菱(当時は三菱重工)初の軽乗用車として誕生し、その後2011年まで50年近く販売された三菱を代表する軽の基幹モデルだ。
初代ミニカは、最高出力17psの359cc 2気筒空冷2ストロークエンジンに4速MTを組み合わせ、駆動方式は当時主流のRRでなくFRを採用。最高速度86km/hの実用性の高さと、広いトランクスペースを持つ3ボックススタイルがアピールポイントだった。
1969年にモデルチェンジで登場したのが、スタイリッシュに変貌した2代目「ミニカ70」で、最高出力26psの空冷エンジン加えて28psの水冷エンジンも加わった。このミニカ70の派生モデルのクーペとして登場したのが、ミニカスキッパーである。
●名車GTOを彷彿させる軽のスペシャリティカー誕生
1970年代、ホンダ「N360」が火付け役となり軽自動車でも高性能時代が到来、各メーカーから様々なスポーティなモデルが登場した。
スキッパーは、当時人気だったスポーティでクーペのようなスタイル、いわゆるスペシャリティカーだった。ファストバックにカットオフテールを組み合わせたスポーティなスタイリングは、名車「ギャランGTO」をスケールダウンしたミニチュア版のようだった。
パワートレインは、ミニカ70用の360cc 直2気筒水冷2ストロークエンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式はエンジン縦置きのFRレイアウト。シングルキャブ仕様エンジンの最高出力34psに対して、GTグレードのエンジンはSUツインキャブを装着し38psにパワーアップし、最高速度が100km/hを超える力強い走りで多くの若者を魅了した。
車両価格はGTグレードが44万円。ちなみに、当時の大卒初任給は4.7万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約215万円に相当する。
●1970年代に登場した様々な軽のスペシャリティカー
1970年代から1980年代にかけ、トヨタ「セリカ」やホンダ「プレリュード」、日産自動車「シルビア」のようなスポーツカーのようなスタイリングで、スポーツカーほどではないが高性能のクーペスタイルのクルマは、スペシャリティカーと呼ばれ若者から圧倒的な人気を獲得した。デートの際に女性からも好まれることから、デートカーとも呼ばれた。
軽自動車でも、1970年代に同様なコンセプトのスペシャリティカーブームが起こった。パイオニア的な存在は、1970年に登場した「ホンダZ」とされ、続いたのが軽初の2ドアハードトップ、ダイハツ「フェローMAX(1970年~)」、三菱のファストバックに仕上げた「ミニカスキッパー(1971年~)」、2ドアクーペのスズキ「フロンテクーペ(1971年~)」などだ。
いずれも、廉価でスタイリッシュなフォルムで軽快に走ることから、走り好きの若者から人気を集めた。その後1990年代には、さらに走りに特化したスズキの「アルトワークス」やスバル「ヴィヴィオRX-R」、ダイハツ「ミラTR-XX」などの軽のホットハッチも人気を博したが、残念ながら現在は絶滅状態になっている。
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近年の軽自動車は、実用性を重視した背の高いハイト&スーパーハイトワゴンが主流であり、スキッパーのような運転を楽しむスタイリッシュな軽が人気を獲得するのは難しい。軽自動車にも、スタイリングと性能を追求していた良き時代があったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。