ボルボXC60 Google Apps and Serviceが入って「走るインフォテインメント」化して魅力UP

ボルボXC60 B5 AWD INSCRIPTION 車両本体価格:749万円
グローバルで見たときのボルボのベストセラー、XC60がマイナーチェンジした。日本導入は2017年10月で、その年の暮れには2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。ボルボとして初めての受賞だった。デザイン、快適性、機能性、内外装の質感に安全装備の充実などが高い次元でバランスされていることが評価された。日本ではXC40に次いで2番目の売上だが、ボルボ車全体に占める構成比は先代よりも現行のほうが高いという。発売から4年が経過しているが、魅力は色褪せていない。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
デザイン面の変更はフロントバンパー/グリル/テールパイプ(が隠された)/ホイール/新色である。

色褪せる前に手を打ったのが、今回のマイナーチェンジだ。外観の変更点は前後のバンパーに集中している。より直線的なデザインになり、シャープな印象が強くなった。リヤはテールパイプを見えなくしたのが特徴で、2030年までに販売する全車両をBEVにする計画を掲げているボルボらしいアプローチといえるだろう。内燃機関を積んでいることを示す要素を排除しにかかっている。ホイールのデザインも変更された。

インテリアは大きく変更していない。あえて指摘すれば、エンジンスタート/ストップ・スイッチの後ろにあったドライブモードの切り替えスイッチがなくなったことが変更点のひとつ。ドライブモード自体は残っており、ディスプレイ上でタッチ操作することで切り換えることは可能。PHEVモデルは依然として5種類のモードが残っているが、48Vハイブリッドモデルのドライブモードは簡素化され、基本的にはデフォルトの「コンフォート」と「オフロード」の2種類に絞り込まれた。

エンジン 形式:直列4気筒DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド 型式:B420T2 排気量:1968cc ボア×ストローク:82.0mm×93.2mm 圧縮比:10.5 最高出力:250ps(184kW)/5400-5700rpm 最大トルク:350Nm/1800-4800rpm 燃料供給:DI 燃料:プレミアム 燃料タンク:71ℓ
トランスミッションは8AT。48Vマイルドハイブリッドのモーター最高出力:13.6ps(10kW)/3000rpm 最大トルク40Nm/2250rpm

「誰でも使いやすいようにシンプルにする」考えの一環だという。ドライブモードが簡素化されたことを嘆く人はそう多くないだろう。それより、新しいインフォテインメントシステムの採用を歓迎する人のほうが圧倒的に多いに違いない。

Google Apps and Service(グーグル アプリ/サービス)が入った。まずは今回試乗したXC60に加え、V90、V90クロスカントリー、S90に導入され、順次他のモデルにも展開していくという。Google Apps and Serviceはナビゲーションシステムの「Google Maps」と音声認識システムの「Google Assistant」、アプリケーションの「Google Play」で構成される。

従来のSENSUSにかわって新インフォテインメントシステムは「Google Apps and Services」とVolvo Cars appだ。

手持ちのiPhoneやAndroid携帯などが車載インフォテインメント系とつながるApple CarPlayやAndroid Autoといった、スマートフォン・インテグレーションを取り入れたのではなく、クルマそれ自体がAndroidを身につけた。普段Googleを使っているなら、IDを入れることでクラウドを介してクルマと連携する。手持ちの携帯機器と家で「OK Google(オーケー、グーグル)」な生活をしているなら、クルマにもその世界が広がるということだ。しかも、シームレスに。

「OK Google」を合図にあいまい検索で近くのカフェを探してルートガイダンスをしてもらい(ステアリング右側のボタンを押すことでも起動する)、用事を済ませて帰途についたら、家に着く前に「エアコンつけておいて」とか、「電気をつけておいて」という指示を出すことができるようになる。Google Mapsは常に最新の地図データにアップレートされる。

Google Apps and Servicesはスマホでお馴染みのGoogle Maps、音声認識システムのGoogle Assistant(2022年Q1に導入予定)、そしてGoogle Playだ。

Google Assistantの日本語対応は2022年第一四半期に導入の予定(日本語とロシア語の対応が遅れているのだそう)。試乗車は英語での対応となったが、「OK Google」の世界を味わうには充分で、アシスタントとのやり取りで目的地を設定したり、混み具合をたずねてみたり、翌日の天気を聞いたり、「1980年代の音楽をかけて」と頼んでみたり、「ボリュームを少し上げて」と指示してみたりした。アプリの操作だけでなく、エアコンの温度や風量など、車載システムの操作を指示することも可能だ。

ステアリングホイールの奥にある液晶ディスプレイのデザインが変わった。
ボルボらしいデザイン

車載ナビシステムはアップデートが追い付かないケースが多く、開業したばかりの施設が入っていないなんてことが多々ある(筆者もつい先日、目的地検索で戸惑った)。Google Mapsならそんな心配は要らないし、目的地の設定でストレスを溜めることがない。もちろん、最新の渋滞データも入る。このサービスは新車購入時から4年間は無償。5年目以降は有償(月額設定で検討中)で提供する予定だ。

新インフォテインメントシステムの採用に合わせ、ステアリングホイールの奥にある液晶ディスプレイのデザインが変わり、一気に未来的になった。テールパイプを見えなくしたり、ドライブモードを簡素化したりするのと同じアプローチはメーター表示にも適用されており、表示する情報を必要最小限に留めているのが特徴だ。ミニマリズムと呼ぶほどストイックではなく装飾的な要素は残っているが、視覚に入る情報はシンプルにしていくのが、最新のボルボの哲学だ。

Google Apps and Serviceと同時にVolvo Cars appが導入されたのもニュースである。ボルボ車専用のアプリで、このアプリを使うことでドアのロック&アンロックやエンジンリモートスタート、PHEVの場合は充電状態の確認、盗難に遭った際の追跡機能、緊急通報サービスや故障通報サービスが使えるようになる(一部機能は2022年以降に順次利用可能)。命に関わる問題なので、緊急通報サービスと故障通報サービスは15年間無料。その他のアプリはGoogle Apps and Serviceと同様に4年間は無料だ。

安全・運転支援機能系では、前車発進警告機能(先行車の発進を知らせる)とリヤ衝突回避・被害軽減ブレーキが追加された。クルマのIT系はスマホや家電に比べて遅れがちだったが、Google Apps and Serviceを導入したボルボはそれらと同じ感覚でつきあえるようになった。ボルボXC60は最先端を行く、走るインフォテインメントである。

タイヤサイズは235/55R19
コンチネンタルのEcoContact6を履く
Zenuity(ゼヌイティ)と共同開発した新しいセンサーシステムを搭載した。ミリ波レーダーはグリル内にある。ゼヌイティ社はボルボ・カーズとオートリブ社の合弁会社だ。最低地上高は215mm。最小回転半径は5.7mである。
ボルボXC60 B5 AWD INSCRIPTION
 全長×全幅×全高:4710mm×1900mm×1660mm
 ホイールベース:2865mm
 車重:1870kg
 サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
 駆動方式:AWD
 エンジン
 形式:直列4気筒DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド
 型式:B420T2
 排気量:1968cc
 ボア×ストローク:82.0mm×93.2mm
 圧縮比:10.5
 最高出力:250ps(184kW)/5400-5700rpm
 最大トルク:350Nm/1800-4800rpm
 燃料供給:DI
 燃料:プレミアム
 燃料タンク:71ℓ
 モーター:3330型交流同期モーター
 最高出力:13.6ps(10kW)/3000rpm
 最大トルク:40Nm/2250rpm
 トランスミッション:8速AT
 燃費:WLTCモード 12.1km/ℓ
  市街地モード8.3km/ℓ
  郊外モード:12.6km/ℓ
  高速道路:14.6km/ℓ
 車両本体価格:749万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…