「トヨタ・クラシック」って知ってる? トヨタ初量産乗用車「AA型」をモチーフに800万円/100台限定の超希少車【今日は何の日?6月20日】

トヨタ・クラシック
トヨタ・クラシック
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日6月20日は、1936年にトヨタ初の量産乗用車「トヨタAA型」をモチーフにした「トヨタ・クラシック」が誕生した日だ。トヨタの乗用車60周年記念モデルとして、1996年にトヨタAA型を最新技術で復刻させた特別仕様車である。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:トヨタ自動車株式会社「X」より

■トヨタ初の量産乗用車トヨタAA型の復刻版トヨタ・クラシック誕生

1996(平成8)年6月20日、トヨタの4ドアセダン「トヨタ・クラシック」が同社初の量産乗用車「トヨタAA型」の60周年記念車として100台限定で販売された。1936年に発売されたトヨタ・AA型をモチーフにして、ほぼハンドメイドで生産されたレトロ調の小型高級4ドアセダンである。

トヨタ・クラシック
トヨタ・クラシック(※画像はトヨタ自動車株式会社「X」より)

●トヨタ初の量産乗用車AA型は豊田自動織機で生産開始

トヨタ自動車のルーツは、1926年に豊田佐吉氏が設立した豊田自動織機製作所である。その織機内に1933年、長男の豊田喜一郎氏が自動車製作部門を設置し、完全オリジナル乗用車の開発を目指した。

トヨタ初の量産車「G1型トラック」
1935年に発売されたトヨタ初の量産車「G1型トラック」

1935年5月には自社製A型エンジンを搭載した試作車「乗用車A1型」が完成したが、当時は戦時下だったので、まずA型エンジンを搭載したトヨタ初の市販車「G1型トラック」の生産を1935年に開始した。
その翌1936年に、A1型を改良したトヨタ初の量産乗用車「トヨタAA型」の生産を開始。流線形のファストバック型のセダンAA型に搭載されたA型エンジンは、3.4L直6水冷OHVエンジンで、最高出力65ps/最大トルク19.4kgmを発揮した。トランスミッションは4速MT、駆動方式はFRだった。

「トヨタAA型」
1936年に発売されたトヨタ初の量産乗用車「トヨタAA型」

AA型乗用車は、シボレーやフォードの部品を参考にしながらも、あくまでも自前の国産技術にこだわり、最終的には純国産技術で仕上げられた。そして、翌1937年には自動織機内の自動車部が完全に独立し、トヨタ自動車工業が正式にスタートしたのだ。

●乗用車AA型の復刻版トヨタ・クラシック誕生

トヨタ・クラシック
1996年にデビューした「トヨタ・クラシック」は、トヨタAA型誕生60周年記念車だ

トヨタAA型をモチーフにしたトヨタ・クラシックは、丸いヘッドライト、ホワイトリボンタイヤやメッシュホイール、丸みを帯びたタイヤハウスなど、当時の美しいラインを再現しAA型を彷彿させた。インテリアは、木目調インパネや木目調ドアトリムアッパーなどに、真っ赤な本革シートと本革巻きシフトレバーノブがアクセントとなり、上質な室内空間を作り上げている。
パワートレインは、最高出力97ps/最大トルク16.3kgmを発揮する2.0L直4 OHVと、OD付4速ATの組み合わせ。駆動方式はAA型と同じくFR。AA型に比べると排気量は60%だが、最高出力は1.5倍となっており、60年間の技術進化を表している。

トヨタ・クラシック
「トヨタ・クラシック」のファストバック風のリア

生産は、熟練工によるハンドメイド工程が多かったこともあり、販売台数は100台限定で車両価格は800万円と高価だった。ちなみに当時の大卒初任給は19.5万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約944万円に相当する。

トヨタ・クラシック
トヨタ・クラシック(※画像はトヨタ自動車株式会社「X」より)
トヨタ・クラシック
トヨタ・クラシック(※画像はトヨタ自動車株式会社「X」より)
トヨタ・クラシック
トヨタ・クラシック(※画像はトヨタ自動車株式会社「X」より)

●初代クラウンをモチーフにしたトヨタ・オリジンも登場

2000年には、トヨタの国内自動車生産台数累計1億台達成を記念して、1955年に誕生した初代クラウン「トヨペット・クラウン」をモチーフにした「トヨタ・オリジン」が1000台限定で登場した。

トヨタ・オリジン
2000年にデビューした初代クラウン「トヨペット・クラウン」をモチーフにした「トヨタ・オリジン」
初代クラウン
トヨタ・オリジンのモチーフとなった初代クラウン

当時“鎌倉のベンツ”と呼ばれたミディアム高級セダン「プログレ」をベースに、215psを発揮する3.0L直6 DOHCエンジンを搭載、初代クラウンの特徴を巧みに再現された。具体的には、観音開きドアやボリューム感のあるエンジンフードに丸目2灯のヘッドライト、メッキされたフロントグリル、Cピラーまで回り込んだリアガラスなどである。
生産は、工程の多くを熟練工のハンドメイドとし、車両価格は「セルシオ」よりも高い700万円で限定販売1000台だった。

トヨタ・オリジン
2000年にデビューした初代クラウン「トヨペット・クラウン」をモチーフにした「トヨタ・オリジン」

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過去には多くのレトロ風モデルが存在してブームになったこともある。1980年代~1990年代に日産自動車から登場したパイクカーのように単にレトロ風デザインを採用したもの、トヨタ・クラシックやオリジンのように何かをモチーフにしたものがあるが、いずれも個性的なデザインであるがゆえに多くの場合、販売台数や販売期間が限定され、台数を狙った一般的な市販車とは異なる特別仕様車である。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…