エンジン車と変わらぬ室内の広さや使い勝手が魅力「三菱eKクロスEV」【最新軽自動車 車種別解説 MITSUBISHI eK X EV】

もはやEV車は特別なものではないというあくまで軽自動車の一角として位置付けられた「三菱 eKクロスEV」。その通りに従来のeKクロス同様ハイトワゴンの居住空間を有し、柔軟で使い勝手の良い装備にEVのネガティブな特徴は感じられない。一方でEVらしいパワフルかつ静粛性に富む走行性能は余裕があり、街中での快適さはストレスなく秀逸と言える。
REPORT:安藤 眞(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:佐々木萌香

2.0ℓ級のゆとりある走り 補助金充実で低予算購入可能

販売台数では日産サクラに水を開けられているが、同じ出自をもつeKクロスEV。日産がサクラを「EVラインナップの一員」と位置付け、ニューモデルとして投入したのに対し、三菱は「EVはもう特別なクルマではない」とeKシリーズの一員に組み込んだ。という販売戦略上の違いによるもので、性能は同じだ。

エクステリア

電気銅線をイメージした「カッパーメタリックルーフ」は、EV仕様専用。リヤのEVバッジ、「ダーククロムメッキ」のフロントグリルやLEDフロントフォグランプも専用装備になる。最小回転半径は4.8m。

EV化による車内への影響はまったくなく、室内の広さや使い勝手はeKクロスと同じ。すなわち「ハイトワゴンとして十分な広さと使い勝手を両立している」ということ。後席は5対5分割で170㎜のスライドと折り畳みができ、乗員や荷物の量に応じて柔軟に対応できる。モーターはボンネット下に搭載し、前二輪を駆動するFF方式。モーター出力は自主規制があるため47kWにとどまるが、最大トルクは195Nmと軽ターボ車の約2倍。一定の回転数にならないと最大トルクが得られないエンジン(内燃機関)に対し、電気モーターは停止した状態からでも電流を流せば即座に最大トルクが出せる。だから体感的な加速は2.0ℓ以上。応答の速さまで考えれば、エンジンとは比較にならない。

乗降性

トルクバンドが広いため、変速機も付いていない。そのありがたさは、ショッピングモールの駐車場スロープを登る際に実感できる。急勾配とフラットな踊り場と急カーブが連続するため、状況の変化を先読みしながらアクセル操作しないとスムーズに走れないシチュエーションだが、モーター駆動のeKクロスEVならば、極めてイージーに運転できる。上り勾配でエンジン回転が跳ね上がることもないため、コンクリートに囲まれた狭い空間にエンジン音が反響することもなく、「今までのクルマは何だったの!?」という感覚になる。

インストルメントパネル

ピアノブラック調加飾による質感の高さが美点。EV専用の7インチカラーメーターは、バッテリーや電費などを表示。9インチディスプレイは、「P」に標準装備される。

バッテリーは総電力量20kWhのリチウムイオン電池をフロアトンネル下に搭載。カタログ上の走行可能距離は180㎞だが、ボクが外気温35度の真夏にエアコン全開で試乗した際でも電費は6.1㎞/kWhだったので、条件が悪くても100㎞は安心して走れるだろう。充電時間は3kWの普通充電器で約8時間だから、空っぽまで使っても夜間に満充電できる。3kWの普通充電器なら、設置費用も高額ではない。環境や補助金額にもよるが、0〜10万円程度で設置できるはずだ。

居住性

バッテリーの保証期間は8年または16万㎞と長く、この間に充電量が約66%以上まで回復しなかったら無償修理、または交換してもらえる。しかも今のところ、保証が適用されるところまでバッテリーが劣化したクルマはないとのことだ。問題となるのは価格だが、今なら政府から55万円の補助金が出るし、その上に都道府県別の補助金も用意されている。

うれしい装備

「マイパイロットパーキング」搭載車は、スイッチ操作でペダルとステアリング、シフト操作を自動化。後退/並列/縦列駐車に対応する。
月間販売台数                 330台(23年7月~12月平均値)
現行型発表                  22年5月
一充電走行距離※WLTCモード電費    180km

ラゲッジルーム

例えば東京都なら45万円だから、合計100万円の補助が受けられ、eKクロスEVの「P」(ハイエンド)でも208万円少々で手に入る。「P」にはスマートフォン連携ナビやETC2.0車載器、コネクティッド機能やステアリング&シートヒーターまで標準装備されているから、スーパーハイトワゴンのハイエンドグレードを買うよりお買い得とさえ言えるだろう。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.157「2024 軽自動車のすべて」の再構成です。

 

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