スズキ「スイフト」4代目フルハイブリッドは、マイルドハイブリッドより約20万円高い194万円で発売。コスパはどうだ?【今日は何の日?7月12日】

スズキ4代目スイフトハイブリッドシステム
スズキ4代目スイフトハイブリッドシステム
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日7月12日は、スズキの人気コンパクトカー「スイフト」の4代目にフルハイブリッドモデルが追加された日だ。ISGを使ったマイルドハイブリッドに対して、駆動用モーターとAGSを組み合わせ電池容量に余裕があれば車速60km/hまでEV走行できるのが特徴だ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:新型スイフトのすべて

■4代目スイフトに32km/Lのフルハイブリッド追加

2017年(平29)年7月12日、スズキは同年1月にフルモデルチェンジした4代目「スイフト」にフル(ストロング)ハイブリッドモデルを追加。これは、従来のマイルドハイブリッドに、駆動用モーターと4.4Ahのリチウムイオン電池を追加し、トランスミッションには5速AGS(自動MT)を使ったパラレルハイブリッドである。

スズキ4代目「スイフト」
スズキ4代目「スイフト」

●4代目スイフトでマイルドハイブリッドとフルハイブリッドを設定

スイフトは、軽快な走りと200万円を切るリーズナブルな価格が魅力で、2000年の誕生以来多くのファンから愛され続けているコンパクトカーである。モデルチェンジにより走りに磨きをかけるとともに、3代目では減速エネルギー回生のエネチャージやアイドルストップなどの採用により、燃費も向上させた。

スズキ3代目スイフト
2013年にデビューしたスズキ3代目スイフト(エネチャージ搭載)

2017年1月に登場した4代目では、補機ベルトでISGを駆動させるマイルドハイブリッドを設定。ISG(Integrated Starter Generator)は、スターターと発電機(オルタネーター)を統合した補助駆動装置のこと。12V電源で駆動し、エンジンを始動させたり、アイドルストップ時の再起動や加速時にエンジン出力をアシストする。ただし、モーターによるEV走行はできない。

そして同年のこの日、フルハイブリッドが追加された。上記のマイルドハイブリッドに、100V駆動の出力10kW/トルク30Nmの駆動用モーターと4.4Ahの駆動用リチウムイオン電池を追加し、トランスミッションに5速AGS(自動MT)を使ったパラレルハイブリッドである。これにより、モーターのアシスト領域が拡大し、電池容量に余裕があれば平坦路では車速60km/h程度までEV走行が可能になり、燃費と加速性能が向上した。

●4代目スイフトのフルハイブリッドはコスパが良くない?

スズキ4代目「スイフト」
スズキ4代目「スイフト」

4代目スイフトに設定されている2つのハイブリッドシステムのコストパーフォーマンスを比較してみた。

・マイルドハイブリッド車ML(1.2L 直4 NAエンジン+2.3kW ISG)
燃費:27.4km/L、車両価格:172.152万円
・フルハイハイブリッド車SL(1.2L直4 NAエンジン+10kWモーター)
燃費:32.0km/L、車両価格:194.94万円

スズキ「スイフト(フルハイブリッド)」の駆動用モーター
スズキ「スイフト(フルハイブリッド)」の駆動用モーター
スズキ「スイフト(フルハイブリッド)」と組み合わされる5速AGS(オートギアシフト)
スズキ「スイフト(フルハイブリッド)」と組み合わされる5速AGS(オートギアシフト)

フルハイブリッドは、マイルドハイブリッドに対して燃費が17%向上、車両価格は22.8万円ほど高い。フルハイブリッドの燃費効果は大きいように見えるが、ガソリン価格160円/L、1年間の走行距離1万kmと仮定すると、マイルドハイブリッドの年間ガソリン代は5万8400円、フルハイブリッドは5万円となり、その差額は8400円/年となる。両モデルの車両価格差22.8万円をガソリン代の差額で挽回しようとすると、27年もかかってしまうのだ。

スズキ4代目「スイフト」
スズキ4代目「スイフト」のリヤビュー

もちろん、フルハイブリッドのより力強い走りやEV走行が楽しめるといったメリットがあるが、経済性のみで判断すると大きなメリットはない。これが理由かどうか分からないが、マイルドハイブリッドの方が販売台数で上回り、フルハイブリッドは2020年8月に販売を止めている。

●マイルドハイブリッドに近い4代目スイフトのフルハイブリッド

スズキ4代目「スイフト」
スズキ4代目「スイフト」

4代目スイフトのフルハイブリッドのモーター出力(10kW/トルク30Nm)は、一般的なフルハイブリッドに比べるとモーター出力が低く、燃費向上率も大きくない。コンパクトハイブリッドの代表格トヨタの「アクア」は、スイフトのモーターの約5倍の出力に相当する45kW/169Nm(最新は67kW/120Nm)の駆動用モーターを装備している。
スイフトは、車速60km/h程度までEV走行可能というものの、実際のところ電池容量も小さいので加減速があれば頻繁にエンジンが起動して、アクアに比べればEV走行の領域は狭いことは避けられない。

スズキ4代目「スイフト」
スズキ4代目「スイフト」のコクピット

結果として、スイフトのフルハイブリッドの燃費32km/Lは、アクアの38.0km/L(2017年時点のJC08モード、現在はさらに向上)、フィットハイブリッドの38.6km/L(2020年モデル)に対して大きく劣っている。もちろん、この差はハイブリッドだけの差でないが、一般的に電池容量やモーター出力の差によって燃費差は大きくなるのだ。

スズキ4代目スイフトハイブリッドシステム
スズキ4代目スイフトハイブリッドシステム

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EV走行ができればフルハイブリッドと呼ぶのが一般的かもしれないが、実際のところマイルハイブリッドとフルハイブリッドの明確な定義があるわけではない。4代目スイフトのフルハイブリッドの仕様や機能は、マイルドハイブリッドに近いハイブリッドと言える。ちなみにスズキは、当初使っていたフルハイブリッドという表現を最近は使わず、マイルドハイブリッドとただのハイブリッドという使い分けをしているようだ。軽自動車で一般的なフルハイブリッドを成立させるのは、物理的にもコスト的にも現実的ではないのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…