やっぱり「2位じゃダメなんです!」クラストップを追う2位清水和夫、「差は詰まってきた!」 【全日本ラリー選手権】

清水和夫と天野選手
天野智之選手に勝った京丹後2024!
モータースポーツの起源はラリーと言われている。長年モータースポーツにも関わってきた国際モータージャーナリスト・清水和夫氏も「ラリーから始まりラリーで終える」(まだ終えてない)と、70歳を迎えた今も鋭意参戦中だ。今回は、6月に群馬県で行われた「加勢裕二杯 MONTRE 2024」を終えクラス2位に位置している清水氏の奮闘を覗いてみた。
REPORT:永光やすの(Yasuno NAGAMITSU)/PHOTO:永光やすの、BUN渡辺(Bun WATANABE)

●「清水和夫を黙らせろ!」から始まった全日本ラリー選手権“再”参戦

2023と2024参戦マシン
白いほうが2022年まで戦った「ヤリスCVT」。赤いほうが2023年からの「ヤリスHEV」

御年70歳にして全日本ラリー選手権に挑戦し続ける、国際モータージャーナリスト・清水和夫さん。2021~2022年はヤリスCVT(JN-5)にて参戦していたが、2023年からはマシンをヤリスHEVに変更しJN-6クラスに参戦、電動車の鍛え上げをラリーを通して行っている真っ最中だ。
ちなみに、2台並んだ画像を見て分かる通り、2台ともナンバープレートが「・2 11」となっているのは、清水さんのお誕生日が「2月11日」だから。結構…カワイイ♪

チーム頑固一徹
チーム頑固一徹、スタッフ一同

誕生日と言えば、清水さんは今年2024年の2月11日で70歳、古希を迎えた。「古希で現役ラリードライバーとは凄い!」とよく声をかけられるそう。しかし、本人は「まだまだ成長している最中。やることはたくさんある!」と歳を感じさせないことしか言わない。確かに、世の中で2024年で70歳になる方を探してみたら…。
暴れん坊将軍:松平健さん/歌手:松任谷由実さん/野球・中畑清さん、俳優・ジョン・トラボルタさん、ミュージシャン・坂崎幸之助さん、高見沢俊彦さん(THEアルフィー)、タレント・ルー大柴さん、タレント・デーブ・スペクターさん…。
な~んだ、まだまだ70歳は現役で若々しい方ばっかり。なので、古希の星・清水さんにはさらに現役続行してもらわねばいけない!

ヤリスHEV
第2戦 4月12~14日「ツール・ド・九州2024 in 唐津」

そもそも清水さんが全日本戦に出るきっかけのひとつは、全日本戦参戦前、いやTGRラリーにチョイチョイ参加する前だったか、「なんだこのヤリスのCVT! パンツのゴムが伸びたような感覚は!!」と批判していたのを聞いたトヨタが、「CVTに文句言ってるこのジャーナリストは誰だ!? ソイツを黙らせろ!!!」と現場に指令が入った…とか。「清水和夫に文句の言われないCVTにしろ!」というお達しが出たことも、全日本ラリー選手権参戦のきっかけのひとつでもあった…らしい(※諸説あり)。

ヤリスCVT
2022年仕様のヤリスCVT

●JN-6クラスは車両制作も安価で参加しやすい

2021~2022年に清水さんが乗っていたヤリスCVTはJN-5クラス。ヤリスの前身ヴィッツ、マツダ・デミオなど、1500㏄以下の前輪駆動車が対象でAT車を含むクラス。参加台数も一番多く、超激戦区でもあり。

対して2023~2024年現在参戦するJN-6クラスは、1800㏄以下のハイブリッド車や電気自動車などのAE車両クラス。ヤリスCVTの他、ホンダ・フィット、CR-Z、トヨタ・アクアなどの車両が参戦している。ちなみに、このAE車両の“AE”ってなんだ?と思って関係者に聞いたり調べたりしたが、誰も知らず、どこにも出てこなかった。“Automotive Electronics”かと思うが確信は…無し。

第5戦 6月7~9日「加勢裕二杯 MONTRE 2024」
第5戦 6月7~9日「加勢裕二杯 MONTRE 2024」

ワークス系バケモノマシンも多く一番注目されるJN-1(GRヤリス、シュコダのラリー2車両など)や、JN-2(GRヤリスやWRX STIなど)、またJN-3(GR86やBRZのFR車)などに比べると、JN-5もJN-6もごく身近な車両で、価格やパワー、ラリーカー仕様への製作費用もそこそこ。入門クラスとしても適している。

JN-6車両について清水さんはこう語ってくれた。

第5戦 6月7~9日「加勢裕二杯 MONTRE 2024」
第5戦 6月7~9日「加勢裕二杯 MONTRE 2024」からレーシングスーツを新調

「ヤリスHEVはまず、燃費がいいからスタンドで入れる燃料がCVT(※2021~2022年)の時の半分。それと、バッテリーをどう使うか?というのは凄いポイント。ハイブリッドだからバッテリーは1kWhもないくらい大きくはない。が、小さいながらもそのバッテリーにどうやって電気を溜めるか等、そこに細かいノウハウがどうもありそう。それは技術屋さんと一緒に探りながら今、考えてるところ。だいぶ見えてはきたけどね」。

●ヤリスCVT時代から続くライバル・天野選手との戦い

最大のライバル、豊⽥⾃動織機・天野智之選手とのバトルはヤリスCVTのJN-5クラス参戦時から始まっている。

「とにかく、差を詰める! だから今、目指しているのは、今年1年かけて天野智之選手とどこまでガチで争えるか、だ。確実に同レベルか勝てるっていうコースもあるけど、逆にココはオレが遅くてダメっていうところがある。なので、天野選手に対して負けているところを明確にして、ソコを克服しないと天野選手を抜いての本当のチャンピオンにはなれない」(清水)と、2024年5月に行なわれた第4戦「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg(通称:ラリー京丹後)」クラス優勝後に、天敵?最大のライバル天野選手との差について語っている。

左から、1位天野さん、2位海老原さん、3位清水さん
2023年JN-6クラス上位3名。左から、1位天野さん、2位海老原さん、3位清水さん(2023JAF表彰式)

JN-6クラスになってからの2023シーズン、シリーズ優勝は天野智之選手(豊田自動織機・DLアクアGR SPORT)だった。2位が海老原孝敬選手(スマッシュ DL itzz フィット)で、3位が清水和夫選手(SYE YARIS HEV)。「3位なんかじゃダメなんです!」と言ったかどうかは…知らんけど。

清水さんと天野さん
2024ラリー丹後では清水さんがクラス優勝!「二度とないからな!」と天野さんに言われてしまったw

2024シーズンの途中経過では、トップが天野智之選手(TRT・DLアクアGR SPORT)、2位が清水和夫選手(SYE YARIS HEV)となっている(7月5日~7日2024 ARK ラリー・カムイ終了時点/海老原選手は6位)。「2位じゃダメなんです!」よね。

●差は徐々に縮まってきた!

第5戦 6月7~9日「加勢裕二杯 MONTRE 2024」
第5戦 6月7~9日「加勢裕二杯 MONTRE 2024」

ではここで、2023全シーズンと2024シーズン(第6戦終了時点)での、天野選手と清水選手のタイム差を見てみよう。

★2023年

新城ラリー2023
第2戦 3月3~5日「新城ラリー2023 Supported by AICELLO」
ツール・ド・九州2023
第3戦 4月14~16日「ツール・ド・九州2023 in 唐津」
久万高原ラリー2023
第4戦 5月5~7日「久万高原ラリー」
京丹後2023
第5戦 6月9~11日「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」
第7戦 9月8~10日「RALLY HOKKAIDO」
第7戦 9月8~10日「RALLY HOKKAIDO」
ラリーハイランドマスターズ2023
第8戦 10月13~15日「第50回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2023 supported by KYB」

★2024年

三河湾2024
第1戦 3月1~3日「Rally三河湾2024 Supported by AICELLO」
ツール・ド・九州2024
第2戦 4月12~14日「ツール・ド・九州2024 in 唐津」
久万高原ラリー2024
第3戦 4月26~28日「久万高原ラリー」
第4戦 5月10~12日「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」
第4戦 5月10~12日「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」で見事クラス優勝!
京丹後2024
第4戦 5月10~12日「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」
加勢裕二杯 MONTRE 2024
第5戦 6月7~9日「加勢裕二杯 MONTRE 2024」
第6選 7月5~7日「2024 ARK ラリー・カムイ」
第6選 7月5~7日「2024 ARK ラリー・カムイ」

赤字で記した“天野選手に勝っているSSや、負けているSSでのタイム差も、確かに「な、詰まってきただろ?」(清水)。

2024 ARK ラリー・カムイ
2024 ARK ラリー・カムイは2位!

ラリー・カムイ前に聞いた話。
「北海道グラベル(未舗装路)2戦の作戦っていうか、ターマック(舗装路)のラリーとはまず路面が違う。スペックも車高上げて、足もタイヤも変わるから、今までのターマックとはクルマが全く違う仕様になる。カムイを走るのは初めてだからオレも頭の中が赤ちゃん状態。手探りっていうか、最初からペースを上げるっていうことは考えられない。とにかく自分の経験値を上げないといけない。それである程度グラベルのことが分かったら、第7戦 9月6日~8日『RALLY HOKKAIDO』で勝負だな!」

それでも2024 ARK ラリー・カムイはクラス2位!

2024 ARK ラリー・カムイ
2024 ARK ラリー・カムイのピット作業は泥んこだから大変!

さて、清水和夫さんの戦い、2024年も残すところあと2戦を残すのみ(第7戦 9月6日~8日「RALLY HOKKAIDO」/第8戦 10月18日~20日「第51回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2024 supported by KYB」 )。
さぁ、シリーズではどうなるか? どこまでトップの天野選手に近づけるか??
「応援してくれ!!」(清水)

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永光 やすの

いすゞ・ジェミニZZ/R所有時にチューニング雑誌「OPTION」誌の取材を受けたのをきっかけに編集部でバイト…