トヨタのマイクロカーiQを「GRMNスーパーチャージャー」でドーピング! 355万円と高額でも限定100台は即完売【今日は何の日?7月22日】

トヨタ「iQ MRMNスーパーチャージャー」
トヨタ「iQ MRMNスーパーチャージャー」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日7月22日は、トヨタのユニークなマイクロカー「iQ」をGR(GAZOO Racing)がチューンアップした「iQ GRMNスーパーチャージャー」が誕生した日だ。スーパーチャージャーの威力によって、ベースに対して最高出力30%、最大トルクが48%向上したマイクロモンスターに変貌した。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・clicccar/MOVIE:StartYourEnginesX

■トヨタの「iQ GRMNスーパーチャージャー」がネット受付開始

2012(平成24)年のこの日、トヨタのマイクロカー「iQ」の高性能モデル「iQ GRMNスーパーチェージャー」を限定100台でネット受付を開始した。トヨタのモータースポーツを中心に活動する「GAZOO Racing」がチューンアップした高性能コンプリートカーである。

トヨタ「iQ MRMNスーパーチャージャー」
スーパーチャージャーの威力で小気味よい走りを披露したトヨタ「iQ MRMNスーパーチャージャー」

●遊び心満載の新世代マイクロシティカーiQ

iQが初めて登場したのは、2007年のフランクフルトモーターショーと東京モーターショーだった。世界中でCO2削減が叫ばれる中、トヨタの答えのひとつが大胆なダウンサイジングだった。

トヨタのマイクロカー「iQ」
2008年に誕生した個性的なスタイリングで注目されたトヨタのマイクロカー「iQ」

翌2008年11月にデビューしたiQの個性的なコンパクトボディは、市場からは大きな驚きをもって迎えられた。全長2985mm/全幅1680mm/全高1500mmは、軽自動車に比べて全長は410mmも短いが、全幅は205mmも広いという、ユニークかつダイナミックなスタイリングで、異形のヘッドライトや運転席の扇形のセンターパネルなども目を引いた。

室内は前席がセパレート式、後席がベンチ式のレイアウトで、助手席を前方にセットすれば、大人3名と子ども1名が無理なく乗れる室内スペースを確保。また、シートは新素材を採用しており、車重が900kgを切る軽量化成功した。
パワートレインは、最高出力68ps/最大トルク9.2kgmの1.0L直3 DOHC(欧州向けには1.3Lガソリンと1.4Lディーゼルも用意)と電子制御CVTの組み合わせ。その後、日本にも欧州仕様の1.3L直4 DOHCが追加された。車両価格150万円で販売され、販売台数は決して多くはなかったが、多様性が求められる時代に他に類を見ない個性的なコンセプトiQは大いに注目された。

●高性能のGRMNスーパーチャージャー登場

トヨタ「iQ MRMNスーパーチャージャー」
2012年にデビューしたトヨタ「iQ MRMNスーパーチャージャー」。IQをベースにGR(GAZOO Racing)がチューンアップ(

iQ GRMNスーパーチャージャーの9月発売を前に、2012年のこの日から先着順100台限定でwebでの商談申し込みが始まった。iQ GRMNスーパーチャージャーは、欧州仕様の1.3L直4 DOHCエンジン搭載の6MT車をベースにチューンアップした2009年発売のGAZOO iQ GRMNに、さらにスーパーチャージャーを装着した高性能コンプリートカーである。

iQ GRMNスーパーチャージャーは、ベースモデルの最高出力94ps/最大トルク12.0kgmを122ps/17.7kgmまでパワーアップさせ、クロスギアの6段MTを組み合わせた。
足まわりも専用のセッティングで、エクステリアについても前後のバンパーやサイドシル、左右のドアや前後フェンダー、ピラーまで専用品を装備。インテリアは赤と黒のツートーンで、本革巻きのステアリングホイールやシフトノブ、トヨタ紡織が開発した専用スポーツシート、専用デザインのタコメーターなどが採用された。

車両価格は、ベースモデルより192万円高の355万円だったが、限定100台は即完売する入手困難な人気モデルとなった。

●GRMNはGRブランドの頂点に君臨

トヨタ「ヴィッツGRMNターボ」
2013年に登場したトヨタ「ヴィッツGRMNターボ」

GR(GAZOO Racing)は、トヨタの社内カンパニーであり、また同社がモータースポーツで培った技術を展開するブランド名である。GRシリーズを性能の高さで並べると、究極のスポーツモデルに君臨するのが“GRMN”、その下に位置するのが操る歓びを日常的に実感させる本格スポーツ“GR”、そして走りを楽しむエントリースポーツモデルの“GRスポーツ”に棲み分けされる。
ちなみに、GRMNは“GAZOO Racing tuned by Meister of the Nürburgring”の略で、トヨタのかつてのマスタードライバーだった成瀬弘氏がニュルブルクリンクを拠点に開発したコンプリートカーのブランドを意味する。

トヨタ「86 GRMN」
2015年に登場したトヨタ「86 GRMN」
トヨタ「GRMNヤリス」
2022年に登場したトヨタ「GRMNヤリス」

GRMNを冠したモデルは、究極のチューンアップが施され、これまでに販売されたのは、iQ GRMNとiQ GRMN スーパーチャージャー以外では、「マークX GRMN」、「86 GRMN」、「ヴィッツGRMN」、「ヴィッツ GRMN ターボ」、「GRMNヤリス」などである。すべてが台数限定だが、どのモデルも瞬く間に完売してしまうほどの人気を誇っている。2024年7月現在のGRMNはヤリスのみ。また、SUVっぽいほうのセンチュリーにもGRMN仕様が存在しており、2024年1月の東京オートサロンのトヨタブースに登場。こちらはオーダーになっているようだ。

トヨタ・センチュリーGRMN
トヨタ・センチュリーGRMNが東京オートサロン2024に登場した

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コンパクトで可愛いiQもGRMNのチューニングにかかると、まったく別のモデルへと変身する。小さなクルマだからこそ、高速で伸びるターボでなく、低中速トルクや優れたレスポンスを発揮するスーパーチャージャーが採用されたのであろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…