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■トヨタの「iQ GRMNスーパーチャージャー」がネット受付開始
2012(平成24)年のこの日、トヨタのマイクロカー「iQ」の高性能モデル「iQ GRMNスーパーチェージャー」を限定100台でネット受付を開始した。トヨタのモータースポーツを中心に活動する「GAZOO Racing」がチューンアップした高性能コンプリートカーである。
●遊び心満載の新世代マイクロシティカーiQ
iQが初めて登場したのは、2007年のフランクフルトモーターショーと東京モーターショーだった。世界中でCO2削減が叫ばれる中、トヨタの答えのひとつが大胆なダウンサイジングだった。
翌2008年11月にデビューしたiQの個性的なコンパクトボディは、市場からは大きな驚きをもって迎えられた。全長2985mm/全幅1680mm/全高1500mmは、軽自動車に比べて全長は410mmも短いが、全幅は205mmも広いという、ユニークかつダイナミックなスタイリングで、異形のヘッドライトや運転席の扇形のセンターパネルなども目を引いた。
室内は前席がセパレート式、後席がベンチ式のレイアウトで、助手席を前方にセットすれば、大人3名と子ども1名が無理なく乗れる室内スペースを確保。また、シートは新素材を採用しており、車重が900kgを切る軽量化成功した。
パワートレインは、最高出力68ps/最大トルク9.2kgmの1.0L直3 DOHC(欧州向けには1.3Lガソリンと1.4Lディーゼルも用意)と電子制御CVTの組み合わせ。その後、日本にも欧州仕様の1.3L直4 DOHCが追加された。車両価格150万円で販売され、販売台数は決して多くはなかったが、多様性が求められる時代に他に類を見ない個性的なコンセプトiQは大いに注目された。
●高性能のGRMNスーパーチャージャー登場
iQ GRMNスーパーチャージャーの9月発売を前に、2012年のこの日から先着順100台限定でwebでの商談申し込みが始まった。iQ GRMNスーパーチャージャーは、欧州仕様の1.3L直4 DOHCエンジン搭載の6MT車をベースにチューンアップした2009年発売のGAZOO iQ GRMNに、さらにスーパーチャージャーを装着した高性能コンプリートカーである。
iQ GRMNスーパーチャージャーは、ベースモデルの最高出力94ps/最大トルク12.0kgmを122ps/17.7kgmまでパワーアップさせ、クロスギアの6段MTを組み合わせた。
足まわりも専用のセッティングで、エクステリアについても前後のバンパーやサイドシル、左右のドアや前後フェンダー、ピラーまで専用品を装備。インテリアは赤と黒のツートーンで、本革巻きのステアリングホイールやシフトノブ、トヨタ紡織が開発した専用スポーツシート、専用デザインのタコメーターなどが採用された。
車両価格は、ベースモデルより192万円高の355万円だったが、限定100台は即完売する入手困難な人気モデルとなった。
●GRMNはGRブランドの頂点に君臨
GR(GAZOO Racing)は、トヨタの社内カンパニーであり、また同社がモータースポーツで培った技術を展開するブランド名である。GRシリーズを性能の高さで並べると、究極のスポーツモデルに君臨するのが“GRMN”、その下に位置するのが操る歓びを日常的に実感させる本格スポーツ“GR”、そして走りを楽しむエントリースポーツモデルの“GRスポーツ”に棲み分けされる。
ちなみに、GRMNは“GAZOO Racing tuned by Meister of the Nürburgring”の略で、トヨタのかつてのマスタードライバーだった成瀬弘氏がニュルブルクリンクを拠点に開発したコンプリートカーのブランドを意味する。
GRMNを冠したモデルは、究極のチューンアップが施され、これまでに販売されたのは、iQ GRMNとiQ GRMN スーパーチャージャー以外では、「マークX GRMN」、「86 GRMN」、「ヴィッツGRMN」、「ヴィッツ GRMN ターボ」、「GRMNヤリス」などである。すべてが台数限定だが、どのモデルも瞬く間に完売してしまうほどの人気を誇っている。2024年7月現在のGRMNはヤリスのみ。また、SUVっぽいほうのセンチュリーにもGRMN仕様が存在しており、2024年1月の東京オートサロンのトヨタブースに登場。こちらはオーダーになっているようだ。
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コンパクトで可愛いiQもGRMNのチューニングにかかると、まったく別のモデルへと変身する。小さなクルマだからこそ、高速で伸びるターボでなく、低中速トルクや優れたレスポンスを発揮するスーパーチャージャーが採用されたのであろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。