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『Road to SFC』プロジェクト シビック・タイプR(FL5)
『Road to SFC』プロジェクトの主役を演じるのは、シビック・タイプR(FL5)とシビック(FL1)。「SFC」とは、『Super FUN CIVIC』を意味するもので、乗る楽しさを突き詰めた、極上のFL5/FL1シビックをつくる。カッコよくスマートに、気持ちよく走れる、究極のFFストリートスポーツモデルに仕上げるというものだ。
そして2台に装着するタイヤは、それぞれダンロップDIREZZA ZⅢとダンロップ SPORT MAXX RSである。
ブリッツが各種パーツを開発し、ECU書き換えはSAHが担当。FL5はおもにA PITが、FL1はSAHが製作に携わる。マシンをテストするのは、レーシングドライバーの織戸学選手。ドライバーのリクエストが製品開発や推奨セッティングに反映されるという。
まずはベースモデルを紹介しよう。FL5シビック・タイプRは、『直感に響く最強のFFスポーツ』『完成形といえる究極のタイプR』を謳う。搭載エンジンは、4気筒DOHCターボのK20C型。最高出力330㎰/6500rpm、最大トルク42.8kgf-m/2600~4000rpm。排気量2ℓで、ノーマルでも凄いパフォーマンスだ。
シビック・タイプRのチューニングメニューは、ブリッツのカーボンインテークシステム、ニュルスペック・カスタムエディション(マフラー)、パワコンを装着し、『優しいブーストアップ』でフィーリングを高める。その後、SAHによる現車合わせのECUチューニングが控えている。「400㎰近いピークパワーが期待できますが、FFでも乗りやすい出力&トルク特性にして、もう一段パワフルに扱いやすいタイプRを目指します」とSAH鈴木氏は説明する。
車高調サスキットは、ブリッツのダンパーZZ-R Spec DSC PLUS。減衰力調整は32段階(64段階や96段階も選択可)。ストリートからサーキットのタイムアタックまで対応。タイプRの純正サスは電子制御を備えるが、ダンパーZZ-R Spec DSC PLUSは室内から減衰力の調節ができ、搭載機能のマップ制御では走行に合わせた自動切り替えも行える。そのセッティングデータの提供と、ストリート向けのバネレート仕様のテストも行っていく。
タイヤは、265/35R18サイズのDIREZZA ZⅢ。ホイールはENKEI GTC02で18×9.5J inset 45となる。純正は19インチだが、タイヤもホイールも選択肢が広がる18インチで仕上げていく。
織戸選手は次のようにインプレッションしている。
「5ドアのシビック・タイプRはスポーツドライビングだけではなく、オールマイティに使え、ファミリーカーとしてもアリ! 僕としては理想的なFFスポーツモデルのひとつ。ロー&ワイドのスタイルも独特な雰囲気があって、各部の操作感もいい。6速MTのシフトフィールとか、ステアリングの重さとか、メーターの見やすさとか。内装の質も好み。車高調キットのダンパーZZ-Rは、まず、減衰力をブリッツが基準とするフロント20段、リア16段で乗ってみた。やはりスポーツ走行を意識した、ちょっとハードな乗り心地。決して、硬過ぎて、運転が落ち着かないというほどではないが、ワインディングやサーキットならドンピシャと思えるセッティングなのだ」
シビック・タイプRはフットワークのスポーツ性とコンフォート性を、いかに高次元で両立させるか? そこがテーマとなった。サーキットでの速さよりも究極のストリートスポーツを目指し、日常のハンドリングと快適性の延長上で、サーキットも楽しめるようにする。「ダンパーZZ-R Spec DSC PLUSの機能を活かして、一方に偏らない、巧くバランスするサスチューンを提案したい」とA PIT 田中氏。織戸選手のリクエストを受けて、バネレートを下げたバージョンを用意する。
『Road to SFC』プロジェクト シビック(FL1)
いっぽうのFL1シビックは、歴代11代目となる。車体は先代FK7からロングホイールベース化され、リアのトレッドも拡大。その低重心スポーティフォルムは、FL5シビックタイプRのベースになっている。
エンジンは排気量1.5ℓのL15C型4気筒DOHCターボで、先代FK7も同名のユニットだったが、FL1ではヘッド、タービンなどが変更され、さらに低回転からレスポンスするVTECターボになった。トランスミッションは6速MTとパドルシフト付きのCVT。空力性能がアップグレード。操安性が高められた。ミドルクラスの車格として実用性、居住性も充実し、車両価格はタイプRより150万円~200万円ほど抑えられている。何より開発コンセプトは爽快シビック。遊べて、使えるクルマだ。
パワーチューンは、現状確認と今後のプランについて。「車格に対して、だいぶピークパワー付近の性能が抑えられている」というのがSAH鈴木氏の感想。織戸選手の試乗コメントとも一致する。中高回転の隠された力を引き出し、スポーツ感あふれるエンジンフィールに仕上げていく。
第一弾のメニューはブリッツのカーボンパワーエアクリーナー、ニュルスペック・カスタムエディション(マフラー)、パワコンの取り付けだ。簡単にできるブーストアップから。なお、マフラーは4本出し。専用リアディフューザーを組んで装着する。そして第二弾は、SAHによるECUチューニングが控えている。
車高調キットはダンパーZZ-R Spec DSC PLUSで、減衰力調整は32段(64段、96段も選択可)。FL1用はストリートを軸に開発され、バネレ-トはフロントが6㎏/㎜、リアは5㎏/㎜。装着時、ブリッツの基準車高は、ノーマルからフロントが-29㎜、リアが-45㎜となっているが、リアの下げ幅が多いのは、純正車高がいくらか前傾姿勢のため。タイヤは今年6月に新発売となったダンロップ SPORT MAXX RSで、サイズは235/35R19を選択。ホイールはENKEI GTC02で、19×8.0J inset 45となっている。純正サイズの235/40R18から1インチアップしている。
織戸選手は「これからの時代は、ちょっとスポーツ走行ができて、カスタマイズのベースになって、ファミリーユースにも対応というクルマが主役になりそう。FL1はスポーティで、それに相応しい素材といえる。そんなFL1のキャラクターに、ダンパーZZ-Rのサスセッティングはバッチリ合っていた。しなやかに、軟らかく足まわりが動く。ルックスもよくなるこの車高で、これだけの乗り心地が得られるなんて、ちょっとワザに驚かされた。エンジンは、さすがにタイプRと比べると大人しい。でも、いまどきの1.5ℓターボだけあって、ターボの特性が低回転からグッと立ち上がる。アクセルを踏んだときのピックアップがいい。しかし、パワー感はあるものの、上の回転域に向かうほど、盛り上がるスピードが緩やかになる。そこをもうワンランク上げられたら面白い。ブーストアップを施すと、どう変わるか? 次回が楽しみだ」とコメントしている。
シビックのフットワークは現状でも高く評価している。しかし、SAH鈴木氏はさらに詰めて、次回までにもっと質感を高めてくる予定。同時にエクステリアにも手を入れ、ブリッツのフロントリップスポイラーとリアディフューザーが取り付けられる。パワー系のチューニングは、いずれもエアクリーナーとマフラーの交換、パワコンの装着から。吸排気系の効率アップとターボのブーストアップで、エンジン潜在能力をどこまで引き出せるか? それぞれの進化に期待したい。