トレンドはバンライフからオーバーランドへ! アウトドアシーンの新たなアクティビティとしてヒットの予感

近年、アウトドアシーンで人気上昇中のオーバーランド。日本では「OVERLAND JAPAN」がオーバーランダーたちの交流の場を提供すべく、SNSで情報発信やイベントを開催しているが、5月には年に1度のオーバーランドの祭典「OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO 2024」を開催。会場となった富士高原には、全国から約150台のオーバーランダーたちが集結して大きな盛り上がりを見せた。ここでは、「OVERLAND JAPAN」発足の経緯や会場に集まったツワモノたちの様子をレポートしよう。
REPORT&PHOTO 小原裕一郎(OHARA Yuichiro)

近年アウトドアシーンで盛り上がりを見せるオーバーランド

北米やオーストラリアでは比較的古くから親しまれているオーバーランドは、走破性の高いクロカン4WDを駆って森林、岩場、砂漠、海岸など大自然の中を走破しながら野営を繰り返す、いわばアドベンチャートリップだ。そもそも広大な自然が存在する大陸で生まれたスタイルなので、日本で本格的に楽しもうとすると北海道くらいしか場所がなく、これまで一部のマニアを除いてあまり盛んではなかった。しかし最近は、男心をくすぐる機能的なフォルムとアドベンチャー的な要素も手伝って、にわかに人気が高まっている。

大自然を相手にアドベンチャートリップをするのがオーバーランドの醍醐味だ。<出典:American Intake>
 

コロナ禍を機に盛り上がっていたキャンプブームは一段落した感があるが、その一方でバンコン(バンコンバージョン)などを使って、車中泊の旅を楽しむのが静かなブームになっている。車中泊ならば、テントやタープなどの設営・撤収が不要なことに加え、手軽に移動できるので、定住型のキャンプでは味わえない観光や温泉などのアクティビティを楽しめる点が人気の要因のひとつ。しかも、日本ではトイレや水道などインフラの整った道の駅やRVパーク、それに多くのコンビニが点在しているので、この点も追い風になっているのだろう。

手軽に車中泊の旅の旅を楽しみたいならばバンコンがオススメ。普段の足として活用でき、積載容量も大きいので、一石二鳥のメリットがある。

その対局にあるのが、大自然の中でアドベンチャートリップを楽しむオーバーランド。オフロード、雪道、砂地、岩場など、ハードな路面を走破しなければならないので、ベース車両となるのは走破性に優れたクロカン4WDが主流。これにルーフトップテント、サイドオーニング、水や燃料を携帯するためのタンク、スタックから脱出するためのトラクションボードなどを装備するのが標準的なスタイルとなっており、一見すると軍用車のような威圧感がある。しかし、この厳ついフォルムや機能性の高さに加え、どんな悪路も乗り越えていける走破性の高さが相まって、野営などハードなキャンプを好んでいた4WD乗りたちの心を揺さぶり、オーバーランドスタイルが注目されるようになった。

シボレー・コロラドをベースにオーバーランド仕様にカスタムした車両。200キロ以上の装備をしっかり支え、ハードなオフロード走行にも耐えるため、足回りも大幅に強化されている。

オーバーランダーたちのハブ的な役割を担っている「OVERLAND JAPAN」

日本でもにわかに人気が高まっているオーバーランドスタイルだが、現役のオーバーランダーたちのハブ的な役割を担っているのが、「OVERLAND JAPAN」というコミッティだ。といっても、主宰している小宮氏のインスタアカウント(@overlandjapan)が活動のベースとなっており、営利目的の会社組織でもなければ、民間団体のNPO法人でもない。あくまでボランティアの一環として、小宮氏個人がオーバーランドの魅力を多くの人々に知ってもらい、交流を図ってもらうためのプラットフォームとして情報発信をしている。

「OVERLAND JAPAN」のインスタアカウント(@overlandjapan)。カッコいいオーバーランダーたちの写真が満載でアドベンチャートリップの魅力が伝わってくる。

すべてのオーバーランダーのために「OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO」を開催

「OVERLAND JAPAN」の小宮氏がオーバーランドというキーワードに興味を持ち始めたのは、今から遡ること8年ほど前のこと。当時は120系プラドに乗っていて、犬を連れて釣りやキャンプを楽しんでいたが、徐々に装備を増強していく中で、オーバーランド仕様のクルマに興味を持ちはじめ、インスタで国内外のオーバーランダーたちとコミュニケーションを取るようになった。

小宮氏が以前乗っていた120系プラド。当時から、すでに立派なオーバーランドスタイルになっていた。<出典:OVERLAND JAPAN>

当時、日本ではオーバーランドというキーワードはかなりマイナーだったが、同じスタイルの友人たちとオフ会を重ねる中で、一般のオーバーランダーもカスタムをするショップの人たちも共に楽しめるイベントを開催したいという想いが募り、2020年に第1回の「OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO」(@overlandjapan_campandexpo)を開催。今年は富士高原の「出井トマトフィールド」を貸し切って開催され、全国から約150台のオーバーランダーたちが集結した。

インスタグラムで発信された「OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO 2024」の告知画像。英語仕立ての絵作りでセンスの良さが光る!<出典:OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO>
「OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO 2024」で挨拶をする主宰の小宮氏。元ミュージシャンだけあって、トークも振りもカッコよく決まっていた。

アワード表彰式は「OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO」の目玉

「OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO」は、基本的にはオーバーランダーや関連するショップが一同に介し、キャンプをしながら交流を図るイベントだが、ここ数年は目玉のコンテンツとしてカテゴリー別のアワード表彰式が全員参加の形で行われている。

本部前でアワード表彰式の開催を待つ参加者たち。総勢200名ほどが見守る中、アワード表彰は盛大に行われた。

アワードのカテゴリーは、SUV、トラック、バン、総合アワードの4種類となっていて、主催者側で選考したクルマとオーナーが参加者の前で紹介される。選考にあたっては、オーバーランド仕様としての完成度や最新トレンドの取り入れ具合のほか、そのクルマを使ってどのようなライフスタイルを送っているかという点も考慮される。ここはオーバーランドならではの評価基準といえるだろう。では、表彰された4台を順に紹介しよう。

【SUV部門】大径タイヤと美しく整形されたオーバーフェンダーが特徴の新型ブロンコ。スタイリッシュでシティー派のオーバーランダーという印象だ。
【トラック部門】基本的にはタンドラの足回りを強化したプレランナー仕様だが、荷台部分をオーバーランド仕様にしてあり、2つの仕様を融合しているところが評価されて入賞した。
【バン部門】最近、欧米のオーバーランダーの間で人気のスプリンター4×4。この車両はHYMAR社によるカスタムが施されていて、インテリアは至れり尽くせりの豪華装備が特徴だ。
【総合アワード】大人気のトゥルーピーをベースに、本場オーストラリア製のパーツを豊富に装備した本格派。“これぞ本物のオーバーランド仕様”と思わせる納得の1台だ。

「OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO」はツワモノたちの宝庫

オーバーランドは、アウトドアシーンで人気上昇中のスタイルとあって、年に1度開催される「OVERLAND JAPAN CAMP AND EXPO」には、全国から多くのオーバーランダーたちが集結し、その数は年を追うごとにどんどん増えている。

そのせいか、会場にはハマーやタンドラなど迫力のフルサイズ4WDをはじめ、ランクル、プラド、ハイラックス、タコマ、グラディエーターなど人気の4WDをベースにした本格的なオーバーランダーたちが所狭しと鎮座し、まさにツワモノたちの宝庫といった印象。そんな光景を眺めていると、今後はますますオーバーランド人気に拍車がかかり、バンライフと同様、“アウトドアシーンにおけるアクティビティのひとつとして確立されるに違いない”と思わずにはいられなかった。

会場内でひときわ目立っていたハマー+トレーラー。どちらかというと軍用車両のような雰囲気だが、これもオーバーランドスタイルのひとつ。
仙台から参加していた女性オーナーさん。ハイラックスを好みのカラーでオールペンし、立派なオーバーランド仕様にカスタムしていた。
いかにもオーバーランドらしい武骨なカスタムが施されたこの車両の正体はタコマ。後ろに見えるテントトレーラーを牽引し、アドベンチャートリップを楽しんでいるそうだ。
タコマや4ランナーをベースにしたオーバーランダーも多数参戦。フルサイズのアメ車と比べると車幅が狭いので、一般道や林道などでも扱いやすい。
国産車も負けていない!オリジナルのボディカラーやオーバーフェンダー、強化された足回り、定番のオーバーランドパーツなどで美しく仕上げたプラド。そのセンスには脱帽だ。

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著者プロフィール

小原 裕一郎 近影

小原 裕一郎

メディアプランナー&ライター。メディア業界でテレビ視聴率調査、マーケティング(リアル&デジタル)、…