スタートで抜けなきゃ勝ち目なし? 2024年のスーパーGTの“逃げ切り”トレンドはいつまで続くのか

全日本スーパーフォーミュラ選手権と並び、日本のサーキットレースの最高峰のひとつとなっているスーパーGTシリーズ。マシンやルールに様々な変更が加えられた2024年シーズンは今がちょうど折り返し地点。ここでこれまでのシーズンの流れを振り返ってみよう。

2024年のスーパーGTシリーズは、様々な変化があった。

最も目立つ変更点は、GT500クラスマシンの顔ぶれが変わったこと。GT500クラスでは2年ごとにマシンの空力開発が解禁されるが、ベース車両の変更もこのタイミングで行われる。

2024年シーズンのホンダ・シビックタイプR-GT
2023年のNSX-GT

ホンダはマシンを昨季までのNSXから、シビックタイプRへとスイッチ。また、ニッサンは通常のZから、ロングノーズ仕様のZ NISMOにアップデートした。一方、トヨタはGRスープラを継続しているが、しっかりと空力開発を進めてきた。

2024年のZ NISMO GT500
2023年のZ GT500

車体の更新に伴い、昨年までのNSXはダウンフォースが強いぶん空気抵抗も大きいという傾向が強かったが、今年のシビックは逆に最高速の伸びがいいという“キャラ変”が起きているが、依然として3陣営の速さは拮抗している状況。シーズン前半4戦でスープラが2勝、Zとシビックが1勝ずつと、勝ち星もきれいに分かれている。

2024年のGR Supra GT500
2023年のGR Supra GT500

また、長年にわたりGT500クラスで活動してきたミシュランが昨年限りで同クラスでの活動を休止したことにともない、ミシュランユーザーだったニッサンの2チームがブリヂストンにタイヤメーカーを変更。これにより、GT500においては15台中12台がブリヂストンタイヤを履く状態となった。

2024年に向けては各種ルールも変更されている。

レースにおいて大きいのは予選の方式とドライタイヤの持ち込みセット数。
予選はQ1とQ2が行われるのは変わらないが、これまでのQ1での上位だけがQ2に進めるノックアウト方式から、Q1とQ2のタイムを合算する方式となった。
また、ドライタイヤの持ち込みセット数が4に削減(300kmレースの場合。レース距離が300kmを超える場合は別途定められる)。さらに、予選Q1とQ2、そして決勝の最初のスティントをひとつのセットで走らなければならなくなった。

これらの変更により、予選ではふたりのドライバーのアベレージスピードだけでなく、決勝を見据えたタイヤマネジメントの技術も問われるようになった。

くわえて、今季は新たに3時間レースと350kmレースを新設されたことも大きなトピックのひとつだ。

そんな2024年シーズンはすでに4レースを消化し、ちょうどシーズンの折り返し地点に到達している。

今シーズンここまでの4戦では、ポールシッターによる先行逃げ切りの展開が目立っている。ゴールデンウィークに開催された第2戦富士3時間は、予選2番手のNiterra MOTUL Z(高星明誠/三宅淳詞)が優勝しているが、彼らはスタート直後の1コーナーでトップに立つと最後までトップを譲ることなくチェッカーまで快走したかたちだ。

第2戦富士3時間のオープニングラップ

そして、優勝者だけでなく、上位グリッドからスタートしたマシンがそのまま上位でフィニッシュする傾向も強く、予選4番手以下から表彰台を獲得したのは第4戦富士350kmで3位となったKeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)のみと、ここまでは上位では順位の入れ替わりが少ないシーズンとなっている。

もちろんオーバーテイクがないわけではないが、タイヤメーカー数の減少や3社の実力が拮抗具合が影響し、今季はポジションの変動が起きる要素がこれまでよりも少なくなっているのかもしれない。

au TOM’S GR Supra

そんななか、ランキングトップに立っているのが、au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)だ。昨季のチャンピオンは開幕戦岡山でポール・トゥ・ウィンを飾ると、その後も入賞を続け、4戦で41ポイントを稼いでいる。

スーパーGTでは獲得ポイントに応じてハンデの“重し”を積まなければならないサクセスウェイト制度を採用している。そのため、優勝すると次戦以降は苦しいレースを強いられるのが普通だ。しかし、au TOM’S GR Supraは予選では下位に甘んじるも、決勝ではしぶとく追い上げるレースを展開。第2戦富士3時間では予選11番手から4位、第3戦鈴鹿3時間でも予選11番手から5位、第4戦富士350kmでは予選14番手から7位と、驚異的な強さで“ダメージ”を最小限に食い止めている。

STANLEY CIVIC TYPE R-GT

ランキング2位はSTANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)。いまだ勝利はないものの、開幕戦岡山と第4戦富士で表彰台に登壇しているほか、au TOM’S GR Supraと並んでこれまでの4戦すべてで入賞を果たしており、ウィナーを上回るポイントを獲得している。

Niterra MOTUL Z

ランキング3位にはNiterra MOTUL Z、同4位にはDeloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)と、第2戦と第3戦の優勝車両が続いている。

Deloitte TOM’S GR Supra

シーズン後半にはスポーツランドSUGOとオートポリスという、比較的レースが荒れやすいステージでのレースが控えており、サクセスウェイト制度も相まって、現在ランキング下位となっているマシンが急浮上してくる可能性は充分にある。

スーパーGTの2024年シーズン後半戦は8月31日~9月1日に開催される第5戦鈴鹿350kmでスタートする。

2024年スーパーGTシリーズ GT500クラス ドライバーランキング(第4戦富士終了時点)

Rank.No.DriverCarPts.Tyre
136坪井 翔/山下健太au TOM’S GR Supra41BS
2100山本尚貴/牧野任祐STANLEY CIVIC TYPE R-GT37BS
33高星明誠/三宅淳詞Niterra MOTUL Z30BS
437笹原右京/G.アレジDeloitte TOM’S GR Supra28BS
514大嶋和也/福住仁嶺ENEOS X PRIME GR Supra27BS
68野尻智紀/松下信治ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #826BS
738石浦宏明/大湯 都史樹KeePer CERUMO GR Supra25BS
823千代勝正/R.クインタレッリMOTUL AUTECH Z23BS
917塚越広大/太田 格之進Astemo CIVIC TYPE R-GT22BS
1039関口雄飛/中山雄一DENSO KOBELCO SARD GR Supra19BS
1112平峰一貴/B.バゲットMARELLI IMPUL Z19BS
1216大津弘樹/佐藤 蓮ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #1615BS
1364伊沢拓也/大草りきModulo CIVIC TYPE R-GT7DL
1419国本雄資/阪口晴南WedsSport ADVAN GR Supra3YH
1524松田次生/名取鉄平リアライズコーポレーション ADVAN Z2YH

2024年スーパーGTシリーズ GT300クラス ドライバーランキング(第4戦富士終了時点)

Rank.No.DriverCarPts.Tyre
12堤 優威/平良 響muta Racing GR86 GT46BS
265蒲生尚弥/篠原拓朗LEON PYRAMID AMG44BS
388小暮卓史/元嶋佑弥JLOC Lamborghini GT332YH
4777藤井誠暢/C.ファグD’station Vantage GT331DL
54谷口信輝/片岡龍也グッドスマイル 初音ミク AMG28YH
656佐々木 大樹/J.P.デ・オリベイラリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R27YH
752吉田広樹/野中誠太Green Brave GR Supra GT25BS
831小高一斗/中村 仁apr LC500h GT20BS
97荒 聖治/N.クルッテンStudie BMW M419MI
106片山義章/R.メリ・ムンタンUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI14YH
1187松浦孝亮/坂口夏月METALIVE S Lamborghini GT314YH
127B.スペングラーStudie BMW M48MI
1345K.コッツォリーノ/L.ワドゥーPONOS FERRARI 2967MI
1496新田守男/高木真一K-tunes RC F GT37DL
1518小林崇志/小出 峻UPGARAGE NSX GT34YH
1665黒澤治樹LEON PYRAMID AMG3BS
1761井口卓人/山内英輝SUBARU BRZ R&D SPORT3DL
1862平手晃平/平木湧也/平木玲次HELM MOTORSPORTS GT-R1YH
1960吉本大樹/河野駿佑Syntium LMcorsa GR Supra GT1YH
2011富田 竜一郎/石川京侍GAINER TANAX Z1DL

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