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■人気の3代目マーチに新開発の電動4WDモデルを追加
2002(平成14)年9月5日、日産自動車は人気のコンパクトカー3代目「マーチ」に、新開発の4WDシステム「e・4WD」モデルを追加した。e-4WDは、シンプルで安価なシステムで、エンジンによる前輪駆動をベースに後輪をモーターで駆動させ、必要な時だけ4WDとするオンデマンド型4WDである。
世界に通用するリッターカーを目指して誕生したマーチ
初代マーチは、リッターカーのパイオニアとして1982年10月にデビュー。内外装を著名なデザイナー、ジウジアーロがデザインしたことが話題になり、洗練された親しみのあるハッチバックスタイルと運転のしやすさが特徴だった。
パワートレインは、日産初のアルミ製1.0L直4 SOHCエンジンと4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせで、駆動方式はFF。世界戦略車として位置づけられ、欧州では「マイクラ」の車名で販売され、日欧で人気を獲得した。
1992年にモデルチェンジした2代目は、丸みを帯びたスタイリングに変更され、“日本カー・オブ・ザ・イヤー”、“欧州カー・オブ・ザ・イヤー”を受賞するなど、マーチの人気を不動としたのだ。
キュートなデザインと低燃費・高出力で人気を加速した3代目
3代目マーチは、2002年に登場した。それまでのマーチの基本コンセプトを継承しながら、2代目よりさらに丸みを持たせた、愛くるしいキュートなスタイリングが特徴だった。
パワートレインは、新開発の1.0L/1.2L/1.4Lの直4 DOHCエンジンと、4速ATおよび5速MTの組み合わせで、駆動方式はFF。可変バルブタイミング機構が装備されたエンジンや、ロックアップ機構付きトルコンATなどにより、超低排出ガス車の認定を受け、同時に低燃費と高出力が高い評価を受けた。
当時は、トヨタ「ヴィッツ」、ホンダ「フィット」などもデビューし、コンパクトカーの競争が激化していたが、3代目マーチの初年度の販売は平均1万台/月を超え、その後も最低でも5000台をキープする人気モデルとなった。
人気の3代目マーチにオンデマンド電動4WDを追加
3代目マーチの発売から半年後、新しく開発された電動4WD「e・4W」車が追加された。e・4WDは、FF車の後軸にモーターを付与するだけのシンプルかつ安価な4WD。通常はFFだが、滑りやすい路面の発進や走行などはモーターにより後輪も駆動する、いわゆるオンデマンド型電動4WDである。
ただし、モーター駆動用のバッテリーを備えず、オルタネーターでDC14Vを発電し、モーターへ最大42Vを印加し後軸を駆動する仕組みだ。したがって、モーター出力は3.5kW程度にとどまり、また駆動用バッテリーを持たないので減速時のエネルギー回生はできない。
前輪の空転を検知するとコントローラーがアクセル開度からモーターに必要なトルクを演算し、後軸を駆動する仕組みだが、作動域は0〜30km/hの低速条件に限られる。また、悪路での安定した発進や走行性能が得られるだけでなく、プロペラシャフトがないためスペースを有効に使える、電動化により機械的なフリクションロスが低減し燃費が良くなるというメリットもある。
車両価格は、1.4Lモデル「14c-four」が127.5万円、「14e-four」が150.0万円に設定された。当時の大卒の初任給は19.7万円(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で149万円と175万円に相当する。
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e・4WDは、システムがシンプルで安価なことからノートやキューブといった小型車に採用されたが、現在採用例はない。一方で、2018年7月の「ノートe-POWER」の4WD車は、同じe・4WDを搭載しているが、駆動用のバッテリーを搭載し、電源容量とモーターのパワーアップを図っている点が大きく異なる。今やハイブリッドやBEVでは、多少使い方に違いはあるが、電動4WDは普通に設定されている。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。