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19インチタイヤでも充分スポーティ
試乗のたびに伝えているがEX30、何度対面しても惚れ惚れするデザインだ。実は前回もそうだったのだが、今回も19インチタイヤ&ホイール(タイヤサイズは245/45R19)装着車に乗った。初回はオプションの20インチタイヤ&ホイール(245/40R20)装着車だった。19インチは上屋のボリュームに対して足元が貧弱に感じるかというとそんなことはなく、充分スポーティだし、スタイリッシュに見える。
筆者の感度が鈍いので、乗り心地や運動性能面に関して20インチと19インチの得失をつまびらかに語るほどの決定的な違いを検出できていない。20インチに惚れ込んだのなら選択するといいだろう、という印象だ。決定的なネガはなさそうである。
今回初めて、Volvo EX30アプリを使った。ドアの施錠/解錠、エアコンのオン/オフ、充電状態の確認などがスマートフォンでできる。9月だというのにまだ暑い日中、外出先で30分だけ用を済ませてクルマに戻る直前、室内を快適な温度にしておくのに便利だったし(室内温度が35.1℃と表示されているタイミングで使ってみた)、急速充電器で充電中にクルマから離れた場所で充電状態を確認できるのも便利に感じた。
前回の試乗レポートでは、ドアミラーの角度調整が不便だと伝えた。EX30の場合、ミラーの角度を調整するボタンはドアになく、センターディスプレイにメニューを呼び出して画面をタッチし、調整する必要がある。よく考えればわかることだが(と、自分を責めている)、そう頻繁に呼び出す機能ではない。実際、今回の3日間のつき合いでは、最初に角度を調整したきりで後は一切いじらなかった。複数のドライバーで共有する場合は、プロファイルを切り換えればいいだけの話である(その際、シートも自分好みのポジションに切り替わる)。
パワーウインドウのスイッチがドアではなく、センターアームレストの前端に設置されているのも「不便」だと前回お伝えしたが、3日間つき合うと自然に左手がスイッチを探すようになるから不思議だ。欧米車は方向指示器のレバーが左なのと同様、要するに慣れである。リヤのウインドウを上げ下げする場合は「REAR」のボタンを押して機能を切り替える必要があるが、押す機会は滅多にないかもしれないと、3日間のつき合いで思い至った。
パイロットアシストの出来は?
前回のレポートで「次の機会に試してみたい」と伝えたレーンチェンジアシストは、今回試すことができた。パイロットアシスト(ACC+車線維持支援)とセットで機能する。前回もそう感じたが、ギヤセレクターを押し下げるだけでパイロットアシストがオンになるのは、使い勝手がとてもいい。ステアリング上のボタン操作ひとつでオンになるモデルもあるが、EX30はレバーを押し下げるだけなので、スイッチを探す手元に視線を移す必要がなく、負担が軽い。
システムが車線変更をサポートするパイロットアシストが実行可能な状況になると、センターディスプレイに表示される自車マークの左右どちらかの車線、もしくは両方に緑の枠が表示される。方向指示器(左のレバーだ)を車線変更したい方向に動かすと、システムが車線変更を行なってくれる。その間、ドライバーはステアリングに手を添えている(トルクを与えている)必要がある。駐車枠に自動で駐車してくれるパークパイロットアシストと同じで、システム任せにしたほうが楽だと感じるなら、任せてみるといい。機能が搭載されていることを知っておくと役立つ機会が訪れるかも、という印象だ。
パイロットアシストの車速制御の巧みさに感心したのは今回も同様で、往復200km超の高速道路での移動は、迷うことなくパイロットアシストを使用した。そのほうが楽だからだ。前回は車間距離の長短を調節するスイッチがステアリングホイール上にないことに不満を述べたが、センターディスプレイの設定画面で車間距離を「普通」にしておくと、筆者の感覚とぴったりで、今回のドライブでは走行中に車間距離を調整する必要性を感じなかった。
ちょうどいいワンペダルドライブ
前回のドライブではワンペダルドライブをオフにして終始走行したが、今回は終始オンにして走った。長距離・長時間EX30とつき合っていると、筆者の場合はワンペダルのほうが性に合っていた。EX30はアクセルペダルの戻し側(減速側)の動きが穏やかなのがいい(頭がカックンとなりにくい)。といって減速度の出方が物足りないわけではなく、ちょうどいい。
ワンペダルドライブを選択した場合はアクセルペダルの戻しで完全停止する(停止後は自動でブレーキを保持してくれるので、ブレーキペダルを踏んでいる必要がない)が、停止に至るまでの減速フェーズの振る舞いがスムースで、停止に至るまでの動きが美しい。加速側だけでなく減速側も、アクセルペダルの踏み込みと戻しで意のままだ。
電費は6.9km/kWhと優秀
今回のドライブでは急速充電(東名・足柄SA下り、最大出力90kW)も体験した。バッテリー残量49%の状態で充電を始め、26分37秒充電して87%まで回復した(バッテリー容量は69kWh)。充電器が示す充電量は27.1kWhで、平均61.1kWの出力で充電できたことになる。メーターが表示する航続可能距離は160km伸びた(210km→370km)。もっとバッテリー残量が少ない状態で充電を始めれば、もっと大きな平均出力で充電でき、充電量も稼げただろう。他ブランドを含め、筆者はしばしばBEVで遠出をしているが、50kWを超える出力で充電できると、遠出は苦にならない印象だ。
足柄SA・下りで充電後は214.9km走り、その間の電費は14.4kWh/100kmだった。kWhあたりの電費に直すと6.9km/kWhである。400kmを超える3日間+αのトリップ全体では6.5km/kWhだった。筆者には6km/kWhを超えると優秀という感覚(というか、6km/kWhは超えてほしいな、という願望)が身に染みついており、そう考えるとEX30の電費はかなり優秀である。
ハーマンカードンのサウンドバーは?
今回はオーディオも堪能した。EX30はフロントドアからパワーウインドウのスイッチをなくしただけでなく、スピーカーもなくした。その代わり、フロントウインドウの下にサウンドバーを備える。オーディオシステムはハーマンカードン(harman/kardon)製だ。サウンドバーのセンターにはφ80mmのミッドツイーター、その左右にそれぞれφ19mmのソフトドームツイーターとφ100mmのミッドレンジスピーカーが収まっている。また、ダッシュボードの裏にφ170mmのウーハーが設置されている。
リヤドアには従来どおりスピーカーが埋め込まれており、φ125mmのフルレンジを搭載。荷室右側にはφ200mmのサブウーハーが設置されている。アンプの出力は最大1040Wだ。サウンドは全座席/運転席/後席に的を絞ったサウンドフォーカスやサラウンド(オフ/低/中/高)、イコライザー(プリセットまたはカスタム)の設定切り替えが可能である。
さんざんいじった結果、筆者の耳にはサウンドフォーカス=運転席、サラウンド=低、イコライザープリセット=ダイナミック(低音と高音をやや持ち上げ)がちょうど良かった。そういう音が好みだというのもあるが、ドラムやベースの音が鼓膜を直に揺さぶるようで刺激的だし、ボーカルはクリアに聞こえる。BEVは総じてそうだが、EX30は遮音が行き届いており、高速走行時の車内が静かに保たれる。そのおかげもあって、車内は質の高いリスニングルームと化す。いいオーディオを備えているのも、EX30の魅力だと感じた。
東名・足柄SA・下りで充電後は、スナック菓子の袋がわずかにふくらむ程度には標高が高い(つまり気圧が低い)地点まで曲がりくねった山道を駆け上がった。途中、極低速車に行く手を阻まれたが、センターラインが破線になったところで追い越しを実施。このとき初めて今回のトリップでアクセルペダルを一気に深く踏み込んだのだが、瞬発力の高さといったらなく、追い越しはあっという間に終了した。リヤに搭載する最高出力200kW、最大トルク343Nmのモーターの実力を思い知った次第。苦しげなエンジン音とつき合わなくて済む長く続く急な上り勾配は、BEVのありがたみを強く感じるシチュエーションである。
ボルボEX30のエクステリアとインテリアを表現するのに思い浮かぶワードは、クリーン、ミニマル、エコロジー、機能的、合理的、スカンジナビアンなどなどだが、スタイリッシュでスマートなだけではなく、実はパワフル。EX30は澄まし顔の俊足クロスオーバーBEVである。
ボルボEX30ウルトラ シングル モーター エクステンデッド レンジ
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4235mm×1835mm×1550mm
ホイールベース:2650mm
サスペンション形式:前マクファーソン式ストラット 後マルチリンク
車両重量:1790kg
モーター:交流同期モーター
モーター型式:TZ220XSA02
モーター最高出力:200kW(272ps)/6500-8000rpm
モーター最大トルク:343Nm(35.0kgm)/0-4500rpm
駆動方式:RWD
0-100km/h加速:5.3秒
最高速度:180km/h
バッテリー容量:69kWh
WLTC航続距離:560km
交流電力量消費率:143Wh/km
市街地モード141Wh/km
郊外モード131Wh/km
高速道路155Wh/km
ブレーキ:前後ディスク
タイヤサイズ:前後245/45R19
車両本体価格:559万円