ホンダ・ブリオはシンプルでスタイリッシュな1.0Lクラスのコンパクトカー!走りの「RS」はワンメイクレースも開催するハッチバック

日本車が大きなシェアを持つことで知られるインドネシアで、2024年7月18日~28日の期間、国際モーターショー「ガイキンド インドネシア国際オートショー2024(GIIAS2024)」が開催された。筆者が会場を巡り出会った、日本には無い"日本車"たちを紹介したい。
REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

コンパクトハッチバック「ブリオ」とは?

ホンダがインドネシアの2023年新車販売台数で、トヨタ、ダイハツに次ぐ3番目のシェアを持つことは以前も紹介したが、その販売を支える人気車が現地のエントリーモデル「Brio(ブリオ)」だ。現地ホンダの発表によると、2024年8月の販売台数が4558台となり、ホンダ車の販売のうち53%を占めたという。今回は、ご当地人気ホンダ車であるコンパクトハッチ「ブリオ」を取り上げたい。

ブリオ(2011年/インド)(PHOTO:Honda)

ホンダ・ブリオの歴史だが、2011年3月、アジア市場向けのコンパクトカーとしてタイで発表された。1.2L及び1.3Lの自然吸気エンジンを備えた全長3610mmの5ドアハッチバックで、現地で多くの部品を調達し、製造もおこなうことで低価格を実現し、身近なホンダとして愛された。

初代ブリオ・サティア(2013年/インドネシア)(PHOTO:Honda)

2018年8月にインドネシアのモーターショーで発表された現行型となる2代目も、その立ち位置は同様だ。さらに生産地も初代がインドネシアやタイなどの複数の拠点で行われていたが、2世代は全てがインドネシア製となっており、これもご当地ホンダ車のひとつなのだ。最新のアップデートでは、2023年5月にマイナーチェンジを実施し、内外装に変更が加えられている。

2代目ブリオRS(2018年)(PHOTO:Honda)

スポーティ仕様はやはり「RS」!

ブリオのグレード構成は、標準車となる「Satya(サティア)」とスポーティ仕様の「RS」の大きく二つに分かれる。サティアのみエントリーの「S」と装備を充実させた「E」の2種類に分かれる。

ブリオRS。内外装をスポーティに仕立てたブリオの上級仕様車だ。

ただ基本仕様はほとんど共通だ。ボディサイズは、サティアが全長3795mm×全幅1680mm×全高1485mmに対して、RSは全長のみが3810mmと少しだけ大きい。これはバンパーの仕様などが異なるため。ホイールベースは、全仕様共通の2405mmとなる。そのサイズ感は、全長と全幅こそ軽自動車のN-ONE(※)より大きいが、意外にもホイールベースは短い。なので、しっかりと5人乗り仕様で、荷室もちょっと大きい。いわゆる欧州でいうAセグメントカーなのだ。

「GIIAS2024」のホンダブースに並ぶブリオRS(左)とブリオ・サティア。

パワートレインも全車共通で、1.2L直列4気筒DOHC i-VTECを搭載し、最高出力90ps/6000rpm、最大トルク110Nm/4800rpmを発揮する。トランスミッションは5速MTとCVTを設定。ちなみにエントリーのサティアSは、MT専用グレードだ。でも「S」が示すのは「スポーツ」ではなく「シンプル」だろう。

ブリオ・サティアのエンジンルーム。搭載されるエンジンは1.2L直列4気筒DOHC i-VTEC。RSもパワートレインは共通だ。

エクステリアは、イタリア語で「元気」や「陽気」を意味する名前が示すように、若々しくエネルギッシュに仕立てられている。マイナーチェンジで、フロントマスクが変更され、よりフロントグリルを強調した顔付きとなり、ヘッドライトもLEDデイライト付きの新デザインに改められた。

ブリオ・サティアのハニカムメッシュ仕様のフロントグリル。LEDデイライト付きのヘッドライトはハロゲン式だ。

エクステリアのサティアとRSの違いだが、RSでは、LEDヘッドライト、LEDフォグランプ、RS専用デザインのダーククローム仕上げのフロントグリル、ウィンカー内蔵のブラックドアミラー、ダーククロームの専用15インチアルミホイール、サイドスカート、ディフューザー付きリヤバンパーなどが挙げられる。

ブリオRS。専用デザインのグリルとLEDヘッドライトなどの装備が、精悍な顔つきを作る。
ブリオRSのリヤビュー。リヤバンパーの下部にディフューザーを追加。さらにリヤスポイラーの形状も異なる。

一方、サティアは、クロームメッキ付きハニカムフロントグリル、ハロゲンヘッドライト、カラードドアミラー、14インチアルミホイール(※Eグレードのみアルミ)などと仕様が異なる。日本のNシリーズの標準車とカスタムの作り分けに似ているが、日本のRSのように足回りを変更したりはしていない。

すっきり顔となるブリオ・サティア。MCで元気溢れるイエローのボディカラーが追加された。
ブリオ・サティアのリヤビュー。
14インチアルミホイールに175/65R14サイズのダンロップ・エナセーブを装着。

インテリアの違いはより限定的だが、最大の違いはフロントシートだ。RSがヘッドレスト付きとなるが、サティアはヘッドレスト一体型シートに。このため、座面の形状が異なるのだ。一方、後席は、いずれも3座共に調整可能なヘッドレスト付となっている。撮影車はRS用のシートカバーが装着されているが、いずれのシート生地はデザインこそ異なるが、モケットタイプとなるようだ。

ブリオRSのフロントシート。
ブリオRSのリヤシート。
ブリオRSのラゲッジスペース。
ブリオ・サティアのフロントシート。
ブリオ・サティアのリヤシート。
ブリオ・サティアのハンドルまわり。

シンプルなクルマではあるが、必要な装備はしっかりと押さえている。エアコンはデジタル表記だし、メーターも視認性に優れるスピードメーターとタコメーターを備えた3連式メーターだ。今や必須アイテム(?)のディスプレイオーディオも全車標準装備となる。

ブリオ・サティアのコックピット。ステアリングのスイッチ類は左スポークのみ。ダッシュボードのスイッチ類も化粧パネルで塞がれている。

但し、スマホと接続できるのは、RSグレードのみというのはご愛敬だが……。それでもパーキングセンサーやリモコンドアロック、RSではスマートキーを標準化するなど、日常での利便性をしっかりと考慮された内容だ。

ブリオRSの前席。助手席側ダッシュボードのカーボン調加飾やエアコン吹き出し口にレッドの差し色を施すなど、スポーティな雰囲気を演出する。

日本円なら159万円から!RSによるワンメイクレースも開催

気になる価格は、1億6790万ルピア(S/5速MT)~2億5310万ルピア。日本円だと約159万円~240万円となる。サティアは2億ルピア以下に抑えられて一方で、RSは2億ルピア半ばでちょっと高い。

実は、サティアだけのスペシャルな部分がある。それがリヤエンブレムで、ホンダの「H」マークではなく、専用仕様となるのだ。RSは通常のHエンブレムであるため、これは身近なホンダの象徴ともいえるだろう。

ブリオ・サティアのリヤエンブレムは「H」ではなく別デザイン。
ブリオRSのリヤエンブレムは「H」で、RSのバッヂはレッド。

またRSグレードをベースとしたモータースポーツ活動にも取り組んでおり、ワンメイクレース「Honda City Hatchback & Brio Speed Challenge」などのレースも行われている。まさにインドネシアのホンダの顔であり、身近なヒーローなのだ。

「Honda City Hatchback & Brio Speed Challenge」のブリオ。(PHOTO:Honda)

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…