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■NISMOチューニングのGT-Rが世界最速を記録
2013(平成25)年9月30日、日産自動車はNISMOチューニングのハイスペックモデル「GT-R NISMO」で、ニュルブルクリンク北コースのタイムアタックを決行。ミハエル・クルム選手が、量産車の世界最記録となる7分8秒679を叩き出した。
スカイラインの冠が取れたR35型GT-R
2007年に登場したR35型GT-Rは、それまでのスカイラインの冠が外れて日産GT-Rを名乗った。
最大の特徴は、エンジンがそれまでの2.6L直6 DOHCツインターボ(RRB26DETT型)から、専用開発された3.8L V6 DOHCツインターボ(VR38DETT型)に変更されたこと。最高出力は、先代のR34型スカイラインGT-Rの280ps/最大トルク40kgmから480ps/60kgmへと大幅に向上し、最高速度は300km/hを超えた。
エンジンは、フロント縦置きのフロントミッドシップレイアウトで、トランスミッションは6速DCT。クラッチ/トランスミッション/トランスファーを車体後方に設置し、“独立型トランスアクスル4WD”システムを採用。4WD自体は、電子制御トルクスプリット(進化版アテーサE-TS)が組み込まれた。
スタイリングは、より流線美が強調され、円形テールランプはスカイラインGT-Rからの伝統を継承。サスペンションは4輪マルチリンク、ブレーキはイタリア・ブレンボ製のベンチレーテッドディスクと、基本仕様は先代と同じだが、エンジンのパワーアップに対応した改良が加えられた。
ちなみに、車両価格はベースグレード777万円、プレミアムエディション834.75万円だった。
GT-R NISMOがニュルでその速さを証明
NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は、日産のワークスチームとして、国内外のモータースポーツに参戦し、数々のタイトルを獲得している。一方で、そのレースで培った技術とノウハウを生かし、市販用のチューニングパーツとともに、市販車をチューンナップしたコンプリートカーを日産のNISMOシリーズとして販売している。
デビューしたGT-Rは、NISMOと共同開発した年次改良によって進化を続け、2008年には最高出力485ps、2010年にはマイナーチェンジ版の2011年モデルで530psに、2012年モデルでは吸排気系の改良によって550psまでパワーアップした。
そのGT-Rの動力性能を高めるため、GT-R NISMOにはエンジンやエアロダイナミクス、サスペンションチューニング、軽量化など、NISMOの技術とノウハウが注入された。そして、世に送り出す前に世界最高峰のモンスターマシンであるという評価を得るため、2013年夏からニュル北コースでタイムアタックを始めた。
タイムアタックを重ねた2013年のこの日、ミハエル・クルム選手が2回目のタイムアタックで、7分8秒679を記録。ニュルブルクリンクにおける量産車の世界最速ラップタイムを記録したのだ。
最速GT-R NISMOがついに市販化
世界最速の称号を得たGT-R NISMOは、翌2014年2月末に日本を皮切りに、米国と欧州でも市場デビューを果たした。エクステリアは、フロントにカーボンバンパーとアンダーカバーのエアストレーキ、リアにはカーボンスポイラーによって優れた空力性能を達成し、インテリアには人間工学に基づいたレカロ製専用シートが装備された。
サスペンションは、路面に吸い付くようなグリップや正確なステアリング応答性を実現するため、専用のスプリングとビルシュタインダンプトロニックダンパーを採用し、走行中に3パターンのサスペンションモードが選択可能だった。
搭載された3.8L V6 DOHCツインターボエンジン(VR38DETT)には、高効率大容量タービンや気筒ごとの点火時期制御などを盛り込み、最高出力600ps/最大トルク66.5kgmを発揮。車両価格は1501.5万円で、2013年モデルGT-R(ピュアエディション)の価格875.7万円より約644万円高額である。
GT-R NISMOは、高額なため容易に入手できるモデルではないが、最高峰のスーパースポーツとしての地位は揺るぎない。
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その後もGT-R NISMOは進化を続け、今春(2024年)には、さらにブラッシュアップした2025年モデルも発表された。GT-Rの次期車は、いよいよフルEV化という情報も流れているが、必然的にGT-R NISMOもそうなる運命だろうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。