ホンダ埼玉製作所完成車工場が環境省の定める「自然共生サイト」に認定

ホンダの四輪車生産工場である埼玉製作所完成車工場(埼玉県大里郡寄居町、以下寄居工場)の敷地が、環境省の定める生物多様性の保全区域「自然共生サイト」として、9月27日に認定された。

ホンダの生産拠点としては初めての認定に

ホンダ埼玉製作所完成車工場

ホンダは、環境省が主導する「生物多様性のための30by30アライアンス」に2022年4月より参画。ホンダの所有する敷地が自然共生サイトに認定されるのは、2023年10月のモビリティリゾートもてぎ(栃木県)に続き2件目で、ホンダの生産拠点としては初めて。

「30by30」は、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する国際的な目標として、2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締結国会議(COP15)で採択された。日本においては、30by30目標の国内達成に向けた仕組みの構築を目指し、環境省主導で「生物多様性のための30by30アライアンス」を設立し、自然共生サイトの認定を進めている。

自然共生サイトは、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定するもので、認定区域はOECM(※)として国際データベースに登録される。
※Other Effective area-based Conservation Measuresの略。民間等の取り組みにより保全が図られている地域や、保全を目的としない管理が結果として自然環境を守ることにも貢献している地域

寄居工場は、ホンダの四輪完成車生産におけるグローバルマザー工場として、2013年に稼働を開始した。ホンダは工場運営による地域生態系への影響を低減するため、敷地の30%近くを生物多様性に配慮した緑地として保全するだけでなく、「里山管理」を企業として実施することで、地域経済と生物多様性の保全の両方に貢献することを目指している。また、地元自治体などと協働して、水田ビオトープ(※)などを環境学習の場として活用し、従業員や地域住民の生物多様性理解促進にも取り組んでいる。今回、こうした活動の実績が評価され、寄居工場の敷地95.1haのうち、27.2haが自然共生サイトとして認定された。
※水田地域に整備された生物生息空間

寄居工場は、建設以前から存在するコナラ・クヌギ林、スギ・ヒノキ植林、アカマツ林、モウソウチク林などを剪定、伐採、林床管理することで、地域生態系の保全に重要な里山環境の維持に取り組んでいる。湿地環境についても、水田管理(田おこし、代掻きなど)、水路、ため池、調整池の草刈り、浚渫(しゅんせつ/※1)などを行い、地下水涵養(かんよう/※2)、下流側に位置する水田への水の供給、雨水流出抑制機能の保全を実現している。
※1:港湾・河川などの水深を深くするため、水底をさらって、土砂などを取り除くこと
※2:雨水が土中に浸透し、帯水層に地下水として蓄えられること

敷地内で確認されたゲンジボタル

外来種の駆除にも取り組んでおり、アメリカザリガニは自動捕獲装置・たも網、定置網などを用いて捕獲し、コンポストに投入して処理することで、環境にも配慮している。これらの取り組みの結果、敷地内にはカヤネズミ、ゲンジボタル、ヨツボシトンボなどの希少動植物も多く生息している。

敷地内で確認されたカヤネズミ

また、今回認定された敷地は緑地と隣接しており、周囲の鉄道や道路などの人為的影響から動植物を守る樹林地の役割を果たしている。南側の樹林地や西側のビオトープでは、アナグマ、イノシシ、ニホンジカなどの動物の痕跡が確認されており、隣接する緑地への動物の移動ルートとしても重要な機能を持っている。

敷地内で確認されたヨツボシトンボ

さらに寄居工場では、従業員や地域住民を対象に、水田ビオトープや竹林などを活用したイベントを開催し、ビオトープの働きや目的、多様な動植物の保全やその管理方針の共有と地域へのPR、生物多様性の主流化に向けた普及啓発などに貢献している。

ホンダ埼玉製作所 完成車工場 自然共生サイト概要

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