泥をつかんで岩をも包む、「オールテレーンT/A KO3」 3つの秘密とその効果 ~待望のBFグッドリッチ新作タイヤ、オーストラリア試乗レポート~

本サイトの8月27日付ニュース記事でも注目された、BFグッドリッチの新作タイヤ「オールテレーン T/A KO3」の試乗会が、この7月にオーストラリアで開催された。
BFグッドリッチが、大々的に世界中のメディアをオーストラリアに招いてまでアピールしたかった期待のオールテレーン T/A KO3の性能、フィーリングをレポートする。
TEXT:吉田直志(YOSHIDA Naoshi) PHOTO:日本ミシュランタイヤ/スズキ

9年ぶりのモデルチェンジ! オールテレーンT/A KO3

今回ご紹介するBFGoodritch「オールテレーンT/A KO3(ティーエーケーオースリー)」は、1976年にクロスカントリー4×4用モデルとしてリリースされた「ラジアルオールテレーンT/A」の最新モデルで、シリーズとしては9年ぶりのフルモデルチェンジとなる。

BFグッドリッチ オールテレーンT/A KO3の試乗会は、オーストラリアで開催された。テストドライブとして組み合わされたのは、オーストラリアではメインストリームとなるピックアップトラック。
BFグッドリッチが生まれたのはいまから150年以上前となる1870年。アメリカにおいて、初となるラジアルタイヤを開発したブランドとしても有名。市販用タイヤをリリースする一方で、さまざまなモータースポーツで輝かしい成績を残してきた。タイヤのサイドには「BajaCampion」のロゴが刻印されている。

そもそもこのシリーズは、オン、オフともにバランスされた性能、そして機能美であるトレッドデザイン、さらにはクールなホワイトレターなどをアドバンテージとしてきたが、最新モデルはそれらすべてをいまのSUVユーザーが欲しいと思えるほどの魅力へと引き上げている。
ちなみに、SUV用タイヤとしてはオールテレーンという欲張りなカテゴリーに属し、全サイズともにLT規格となる。もちろん、日本の冬タイヤ規制時に走ることができるスリーピークマウンテンスノーフレークマーク、M+S刻印が施されている。

オールテレーン T/A KO3、3つの特徴

オールテレーンT/A KO3は、タイヤの特徴を示すキーワードとして、「トレッドウェア」「タフネス」「トラクション」と、その頭文字である3つのTを掲げている。このように、その性能をユーザーに分かりやすく伝えるスタンスは、BFグッドリッチブランドらしさ、つまり親しみやすさとなっている。

1.トレッドウェア

「トレッドウェア」は、日本語訳すると「耐摩耗性向上」。コンパウンドには、耐久性を高め、過酷なオフロードだけではなく、オンロードでの快適性もしっかりと折り込んだ、ニュー・オールテレーン・コンパウンドを採用。また、ブロックに数多く刻まれたサイプの倒れ込みを防いでブロック剛性を高めるフルデプス・3Dロッキングサイプは、さらには偏摩耗抑制によるロングライフを期待できるという。

ブロックに刻まれたサイプはその剛性を下げてしまうかと思いきや、実は3D構造となっており、加速時やブレーキング時にはしっかりと剛性。ハンドリングのよさにもプラスとなっている。

2.タフネス

耐久性向上を意味する「タフネス」については、ニュー・オールテレーン・コンパウンドによる耐久性アップに加えて、ショルダー部分のトレッドブロックをさらにサイドウォールにまで広げるコアガード・テクノロジーによって、外部からのダメージを抑制。まさに、オフロードレースで培われたテクノロジーを市販モデルへとフィードバックしている。

ショルダーブロックデザインはサイドにまでかかっている。

3.トラクション

トラクションでは、まず、このモデルの特徴でもあるブロックデザインがまさにその性能をダイレクトに表現している。
セレイテッド・ショルダー・デザインは、ショルダーにまでデザインされ、マッドはもちろんのこと、スノードライブでの走破性を期待できるもの。
フルデプス・3Dロッキングサイプは、ブロックの倒れ込みを防ぎながら安定感あるハンドリングを実現し、一方で偏摩耗を抑制。
そして、インター・ロッキング・トレッドデザインは、センター部のブロック剛性を高めることで、オンオフともにハンドリング、さらにはトラクション性能までをアップ。
まさにオンロードからオフロード、さらにはスノードライブにまで求められるオールマイティな性能をターゲットとしている。

泥を走り溝に詰まらせてしまった泥は、ショルダーへと誘導されるかのように排土されていく。オフロードタイヤに求められる性能だが、オールテレーンT/A KO3にもしっかりと設計されている。

ダート路ブレーキの、停止直前までのグリップ性能に大驚嘆

このオールテレーンT/A KO3を目にしてまず感じるのは、ブロック形状がランダムとばかりに並んでいるデザインだ。
実際に走ってみると、このブロックデザインのおかげで、オフロードにおけるトラクションはすこぶる高く、ダートからロックまでしっかりと路面を掴み、まさに、期待以上の安心感があった。

しかし、このタイヤの真価はそれだけに止まらない。
そのひとつがハンドリングフィールで、ロックセクションをユルユルと走るシーンから、ドリフトさせながら駆け抜けるような走りまで、しっかりとタイヤをグリップさせているために、安心感に加えて、さらには愉しさまで導き出していた。そして、そのブレーキング性能を試すために、ダートで、クルマをフル加速させた後にフルブレーキングさせると、従来ありがちだった、ズ、ズズッといったような、停まることを期待させながらも、やはりダートではグリップを失ってしまうような…といったフィーリングがかなり抑えられており、クルマが停止した瞬間に思わず「これ、すごいぞ」と言葉にしてしまったほどだった。

ダート路での走行シーン。
水が溜まったシーンからヌタヌタの登り坂へと路面が変化し、さらにコーナーがあるにもかかわらず、タイヤはしっかりとグリップ。操縦性はもちろん、安心感にあふれていた。
ロック路での走行シーン。

そして、あらためてトレッドデザインをじっくりと眺めると、ブロックのレイアウトだけではなく、そこに刻まれたサイプが多いことにも気づく。このサイプの存在は、スノーシーンなどでのトラクション確保に寄与はするものの、剛性を下げてしまう存在でもある。しかし、発進加速時やブレーキングといった力がかかるシーンでは、このサイプがガシッと噛み、そこで高い剛性感を確保している。つまりドライバーには、タイヤを起因としたような曖昧さを感じさせない、そんな仕立てがなされていた。

もはやエア抜きは過去のもの? 岩をも包むたわみ性能

オフロード走破に求められる性能のひとつに、トレッドやショルダー面をたわませて岩を包み込むようなしなやかさがあるが、快適性といったオンロード性能もターゲットとしたこのモデルにそこまでの性能をプラスすることは難しい。そして、オフロード専用のタイヤの場合は、ロックセクションへのアタックは、一般に、いったんタイヤの空気圧を落とすことで対応している。
しかし、オールテレーンT/A KO3は、標準空気圧のままに、岩に当たったタイヤ面をたわませて、必要とされるトラクションを確保。そう、難易度がそれほど高くないシーンであれば、わざわざクルマを降りて空気圧を落として・・・なんていう作業をしなくてすむ。さらには、タイヤが隠れてしまうほどの水たまり、つまり、その底が泥濘たる状況でも、グリップ感をドライバーに伝えながら、難なく走り切ってしまう。まさにオフロード走行で求められる性能を想像以上に引き上げていた。

空気圧を落とさずとも、トレッドからサイドウォールをたわませて岩を包み込んでしまう。サイドウォールとトレッド部分の構造によって実現したパフォーマンスだが、それでいながら日常における剛性感もしっかりと備えている。

こうなると、オンロード性能で不足を感じるかも・・・と思いきや、そんなことはなかった。
まず、走り出してみれば、接地感をしっかりと確保しており、とにもかくにも滑らかで、少し速度を上げていくと、しなやかな乗り心地が顔を出してくる。あれだけハイレベルなオフロード性能を持ちながら、オンロードにおける性能もすこぶる高いことに驚いてしまった。
もちろん、その乗り心地に、LT規格モデルならではの固さは存在している。しかし、それは「固い」と表現するよりは、剛性感が高められていた印象が強く、個人的にはむしろサスペンションの動きにしっかり感が増したと思った。ならば静粛性は悪いのかといえばそんなことはなく、いわゆるうるさいと感じさせるような音質はキャビンに届かない。もちろん、ロードノイズだけではなく、パターンノイズも同様に抑えられており、この手のタイヤとしては優秀だ。そしてコーナーにおけるグリップにも不足はなく、むしろタイヤの剛性感がプラスされた分、ロールフィールに不安を感じさせるような動きは見当たらず、オンロードでも走る愉しさが高まった、そんな印象を受けた。

オフロードでの高い走破性を持ちながら、オンロードでは日常に求められる快適性をしっかりと備えていた。LT規格ゆえの固さは存在するが、不満を感じさせないレベルであり、そのバランスはすこぶる高い。

このモデルをひとことで評価するならば、まさに「いい感じ」。それは中途半端さではなく、「すごくいい」という意味合いの「いい感じ」だ。ゴツゴツしたブロックデザインはお父さんの冒険心を満たし、しなやかさがありながら、かつ、耳障り感が少ないところは、お母さんにも受け入れられるはず。さらに、オールテレーンT/A KO3は、カスタマイズサイズもだが、いわゆる純正サイズを多く取り揃えていることもアドバンテージだ。まずは、タイヤから…そう考えているSUVユーザーにも是非ともオススメしたいタイヤだ。

【適合サイズ一覧】 

「LRC」はロードレンジC、「LRD」はロードレンジD、「LRE」はロードレンジE、「LRF」はロードレンジFを示す。また、「RWL」はレイズドホワイトレターとなる。
オールテレーンT/A KO3には16~20インチのサイズが用意されるが、この10月にはジムニー用175/80R16の発売も予定されている。

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