TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は10月11日、FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)に参戦するマネーグラム・ハースF1チームと車両開発分野などにおいて協力関係を結ぶことについての基本合意書を締結したと発表した。
TGRはトヨタのモータースポーツ部門と言うべき存在。国内外のモータースポーツで得た知見を市販車分野にフィードバックし、より良い商品の開発や人材育成に寄与してきた。
このたびTGRは、ハースと協力関係を締結。具体的には、TGRの育成ドライバーやエンジニア、メカニックがハースのテスト走行に参加。ドライバーはF1での走行経験を積む一方、エンジニアとメカニックは、走行から得られる膨大なデータの解析ノウハウを学ぶと同時に、ハースのF1マシンの空力開発に参画することとなる。
かつてトヨタは、2002年から8シーズンにわたりF1に参戦。2009年に撤退するまでに通算140GPに参戦し、ポールポジションは3回、ポディウムフィニッシュは13回獲得したが、優勝は叶わず。コンストラクターズ選手権では、2005年の4位が最高位となった。
現在はTGRとして世界耐久選手権(WEC)と世界ラリー選手権(WRC)というふたつの世界最高峰カテゴリーに参戦中。
WECには2012年シーズンにエントリーすると、2014年に8戦中5勝を挙げてダブルタイトル獲得。ル・マン24時間においては2018年に初優勝を果たすと、2022年まで5連覇を達成した。
WRCには2017年シーズンに復帰し、翌2018年シーズンにマニュファクチャラーズチャンピオンに輝くいた。ドライバー選手権においては2019年にはオィット・タナックが世界王者となると、2023年まで同選手権5連覇を果たしている。
また、海外のフォーミュラカテゴリーにおいては現在、WECドライバーの平川亮がマクラーレンF1のリザーブドライバーを務めているほか、昨年史上最年少でスーパーフォーミュラとスーパーGTの国内2冠を達成した宮田莉朋がF1直下カテゴリーのFIAフォーミュラ2選手権(F2)に参戦。トヨタの育成プログラム出身ドライバーふたりがF1参戦に近い位置で活動している。
一方のハースは2016年にF1に新規参戦。実業家のジーン・ハースが創設したこのチームは、北米NASCARで戦う有力チームのスチュワート・ハース・レーシングと同じく、本拠地をノースカロライナ州に本拠地を置くほか、F1向け施設をイギリス・オックスフォード州のバンベリーに持つ。
アメリカ色の強いハースだが、F1参戦に際してはフェラーリと技術提携を結んでおり、今年7月にはフェラーリとの契約を2028年まで延長。同年末までフェラーリ製パワーユニットを搭載することを発表している。
ハースはデビュー戦である2016年開幕戦オーストラリアGPでロマン・グロージャンが6位となり、F1初戦初入賞を果たした。その後、現在に至るまでF1で中団を争うチームとしてエントリーを続けており、いまだ表彰台獲得は果たしていないものの、ポールポジションは一度獲得。
2024年シーズンはニコ・ヒュルケンベルグとケビン・マグヌッセンのラインナップで戦い、第18戦シンガポールGPまででコンストラクターズランキング7位につけている。
このたびのTGRとハースが合意に至った協力関係は、ドライバーやエンジニアといった人材育成を通じて自動車産業の発展に向けたものであり「トヨタのF1復帰」に直結するものではないが、TGRはハースの「オフィシャル・テクニカル・パートナー」として専門知識やリソースを共有し、F1という世界最高峰の舞台で共闘していくこととなる。