トヨタ/GRと組む「ハースF1」ってナンダ? 日本人が代表を務めるメイド・イン・イタリアなアメリカンF1チーム

今年の夏ごろ、F1に参戦するハースがトヨタと交渉しているというウワサが流れた。7月にハースがフェラーリとの契約を2028年末まで延長したことでこの報道は沈静化したが、10月11日にトヨタとハースが業務提携に合意したと発表。これは決して“トヨタのF1復帰”を意味するわけではないが、近くトヨタ傘下の人材が世界を舞台に戦うことになる。その機会を提供するハースはどのようなチームなのか?ここでザックリとご紹介する。

2024年10月11日、トヨタのモータースポーツ部門であるTOYOTA GAZOO Racing(TGR)が記者会見を実施。サーキットレースの最高峰であるFIAフォーミュラ1世界選手権(F1)に参戦するマネーグラム・ハースF1チームとの提携に合意したと発表した。

トヨタとハースの交渉の噂はF1メディアで報じられてきたが、このたび両者が合意したのはF1というステージにおいてドライバーを含む人材を育成し、自動車産業の発展に向けて貢献することを目的とした提携。TGRは“オフィシャル・テクニカル・パートナー”として複数年にわたり、ハースと専門知識やリソースをシェアし、互いに利益を提供し合う。

このパートナーシップにより、TGRは傘下のドライバーにF1での走行経験を積ませることが可能となる。また、エンジニアやメカニックは走行データの解析ノウハウを学ぶと同時に、ハースのF1マシンの空力開発に参画。ハードな環境を想定したシミュレーションやカーボン部品の設計・製造から知見を得て、それを市販車領域へ落とし込むことができる人材の育成を目指すことになる。

では、将来を担う人材の受け入れ先となるハースは、どのようなF1チームなのか。

ハースは現在F1に参戦する10チームのうち最も若いチームで、2016年にF1に新規参入した。ちなみに1980年代に存在したチーム・ハースとは無関係だ。

チームの創設者は、アメリカのCNC工作機械メーカー『ハース・オートメーション』の創業者のジーン・ハース。彼は北米ストックカーの最高峰NASCARカップシリーズの強豪『スチュワート・ハース・レーシング』の共同オーナーでもあり、F1参入前からレーシングチームを運営してきた。

本拠地はNASCARチームと同じく、アメリカ合衆国ノースカロライナ州のカナポリスに置かれているが、同時にイギリスのバンベリーにもF1の前線基地としてファクトリーを所有している。

このチームの特徴は、マシンの多くの部分をアウトソーシングしている点。パワーユニットとギヤボックスなどのコンポーネントはフェラーリからの供給を受けているほか、シャシーなどはダラーラが製造している。アメリカンチームだが、イタリアの老舗コンストラクター2社の力を大きく借りているかたちだ。

そのおかげもあって、ハースはデビュー戦となった2016年開幕戦オーストラリアGPから2戦連続で入賞を果たすと、合計29ポイントを稼いで参戦初年度ながらコンストラクターズランキングで8位に。その後2018年にはコンストラクターズランキング5位に食い込む活躍を見せた。

シャシーのレギュレーションが大幅に変更された2022年には開幕戦バーレーンGPで5位入賞、また第21戦ブラジルGPではスプリントのポールポジションを獲得するなど見せ場を作り、コンストラクターズランキング8位となった。しかし、翌2023年は失速して同選手権で最下位となった。

これを受けて2024年、ハースは組織改革を実施。F1初年度の2016年からチーム代表を務めてきたギュンター・シュタイナーに代わって、同じく2016年からチームの要職を歴任してきた小松礼雄氏を後任に据えた。

2024年からハースのチーム代表を務めている小松礼雄氏。

小松体制となった2024年シーズンは昨季よりも好調で、第18戦シンガポールGPまでに31ポイントを獲得。角田裕毅が所属するビザ・キャッシュアップRBと僅差でコンストラクターズランキング6位を争っている。

次のラウンドは、ハースの地元戦であるアメリカGP。TGRとハースの提携により、このグランプリからマシンにTGRのブランドロゴが掲示されることになっている。

両者のパートナーシップは今後、複数年にわたって履行される。近年、世界ラリー選手権(WRC)と世界耐久選手権(WEC)というふたつの世界選手権で高い競争力を見せるTGRと、小規模ながら8シーズンにわたりF1を生き抜いてきたハースの提携はどのような結果を生み出すのか。

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