【Tクロス ◯△✕判定】マイチェンで変わった? ◯は取り回しの良さ、✕は使いにくいアレ…って?

輸入SUVの売れ筋モデルでフォルクスワーゲン・ティグアンに次ぐ、2位につけているのがT-Cross(Tクロス)。日本のみならず世界的なSUVブームの中、コンパクトクラスの新型モデルが増えている。2024年夏に受けたTクロスのマイナーチェンジは、内外装のリフレッシュが中心だが、とくにアナウンスされていない走りの面でもブラッシュアップされていた。

TEXT&PHOTO:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)

【Tクロスの◯は?】取り回しの良さ、乗り心地の向上

2020年から22年まで3年連続で輸入SUV販売台数ナンバー1に輝いたTクロス。2023年は兄貴分のティグアンに1位の座を譲ったものの、輸入SUV屈指の人気モデルだ。

Tクロスのボディサイズは、全長4140×全幅1765×全高1580mm(R-Lineは全長4135×全幅1785×全高1580mm)で、最小回転半径は5.1m。古いタイプで高さ制限1550mmの機械式立体駐車場には入庫できないものの、大半の駐車場には入庫でき、取り回しの良さも光る。SUVとしては着座位置はそれほど高くはなく、Aピラーの角度が寝かされていることもあって斜め前方の視界も良好とはいえないが、取り回しに気を使うことはほとんどないはずだ。

今夏のマイナーチェンジでは、走りに関する変更点はアナウンスされていない。筆者は、2019年にTクロスが初めて上陸した際に行われた山中湖周辺の試乗会以降、いくどかステアリングを握る機会があり、マイナーチェンジ前最後となる特別仕様車「カッパースタイル」にも乗っている。今回、試乗したのは中間グレードの「TSI Style」で、215/45R18タイヤを装着(試乗車の装着タイヤは、ピレリのCINTURATO P7)。

搭載されるパワートレーンは、999ccの直列3気筒インタークーラーターボ「1.0L TSI」で、デュアルクラッチトランスミッションの7速DSGという組み合わせは変わっていない。ミラーサイクル化により、WLTCモード燃費が16.9km/Lから0.1km/L向上したほかは、最高出力85kW(116PS)/5500rpm、最大トルク200Nm/2000-3500rpmというエンジンスペックは同一だ。ただし、最高出力の発生回転数は改良前の5000~5500rpmから5500rpmに変わり、圧縮比も10.5から11.4に変更。なお、足まわりの変更などもとくにアナウンスされていない。

しかし、街中からスタートすると乗り心地が明らかに改善されているのにすぐに気がつく。引き締まった乗り味なのは確かなのだが、マイナーチェンジ前のコツコツとしたフィーリングや荒れた路面での揺すぶられる感覚がかなり抑えられている。これであれば、ドライバーはもちろん、助手席や後席の快適性も高まっているはずだ。

パワートレーンの洗練度も増した。7速デュアルクラッチトランスミッションの変速マナーがさらに向上し、1-2速、2-3速の変速の間やショックも小さくなった感がある。駐車時などの極低速域のスムーズさもトルコン付ATほどではないにしても磨かれている。さらに、エンジンスペックは変わらないものの、3気筒ならではの音、振動面もマイナーチェンジ前よりも小さくなったように感じられた。

【Tクロスの△は?】期待を込めてさらなる走りのフィーリング向上

このように、走りの面でもレベルが1段階上がった感のあるTクロスだが、40〜50km/hくらいの速度域で若干こもり音が伝わってくることがあるのと、路面によっては多少、横に揺すられるような車体の動きも残っている。より洗練度を高めていけば、輸入車に限らずBセグメントSUVの中でもトップクラスの動的質感が得られるはずだ。

また、些末な点だが、身長171cmの筆者には、前席の座面前後長が長く感じられるのも気になった。長身の方であれば太股裏のサポート性が良好ととらえるだろうが、シートハイトを調整しても座面前後長の長さが気になってしまう。女性からの支持も高いTクロスだけに、筆者よりも小柄な女性も乗る機会が多いだろう。ちょっと確認ポイントに入れておきたい点だ。

そのほか、些末といえば、マイナーチェンジ前と同様に、エンジンスタータースイッチが助手席側(シフトレバーの左奥)に配置されたままなのも惜しく感じられた。要は左ハンドル向けの配置をそのまま右ハンドルにも適用していて、スペイン・ナバラ工場の生産ラインの都合なのかは不明だが、初めてだと思わず探してしまう場所にある。

【Tクロスの✕は?】オプションの純正ナビゲーションの操作性

Tクロスに限らず、オプション設定される純正インフォテイメントシステム「Discover Pro」のSSDナビゲーションの操作性は、残念ながら良好とは言いがたい。操作性や画面表示は他では見られないオリジナル感が強く、かなりの慣れが必要で、初めてだったり久しぶりだったりすると戸惑うはずだ。目的地検索なども直感的な操作がやりにくい。ただし、スマホ連携の「Apple CarPlay」、「Android Auto」に対応しているため、こちらを使えばいいのかな、というのが本音。個人的には、ナビがレスとなる標準装備の純正インフォテイメントシステム「Ready 2 Discover」でスマホ連携を使えば満足できそうだ。

純正インフォテイメントシステム「Discover Pro」

Tクロス初となるLEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」の搭載(TSI Style以上)や全車に同一車線内全車速運転支援システム「Travel Assist」を標準化するなどしながら、「R-Line」は10万3000円のプライスダウンで389万5000円。「TSI Style」は2万1000円高の359万9000円。「TSI Active」は1万7000円高の329万9000円に抑えていて、初めての輸入車としてもおすすめできるコスパの良さも美点となっている。

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…