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■ロータリーエンジンを止めガソリン車のみとなった3代目カペラ
2005(平成17)年10月28日、マツダ(当時は東洋工業)の3代目「カペラ」がデビューした。2代目までは、ロータリーエンジン車も設定されていたが、3代目は燃費と排ガスに有利で、コストがかからないガソリン専用車となった。
優れた高速性能で特に米国で人気を獲得したカペラ
マツダは、1967年の「コスモスポーツ」で世界初のロータリーエンジンの量産化に成功。その後、ロータリー搭載車のラインナップ展開を図り、第2弾「ファミリア」、第3弾「ルーチェ」に続いたのが、第4弾のカペラだった。
“風のカペラ”のキャッチコピーで登場したカペラは、ジェット機を意識したウェービングラインに、角型ヘッドライトや骨太のリアクォーターピラーを採用して、ロータリーの力強さをアピールした。
4ドアセダンと2ドアクーペが用意され、パワートレインは最高出力120psを発揮する12A型ロータリー(573cc×2)エンジンおよび100psの1.6L直4 SOHCガソリンエンジンと、4速MTとの組み合わせ。最高速度は190km/h(ガソリン車は、165km/h)で同クラスの中で圧倒的な動力性能を誇り、ロータリー車は日本よりもむしろ米国で高速性能が評価されて人気を獲得し、海外で成功した初のロータリー車となった。
セダンの車両価格は、ガソリン車が56.0万円、ロータリー車が69.8万円と、ロータリー車が13.8万円ほど高く設定された。その差は、現在の価値では約86万円にも相当し、日本ではロータリー車の人気は限定的となった。
排ガスや燃費で苦しんだロータリーエンジン
優れた走りで躍進したロータリー車だったが、1974年のオイルショックと日米の厳しい排ガス規制が大きな逆風となった。ロータリーエンジンは、その特殊な機構のためにガソリンエンジンよりも燃費と排ガスが劣っていた。当時のロータリーエンジンの排ガスは、ガソリンエンジンと比べるとNOxは半分程度だったが、HCとCOは5~10倍と多く、結果として燃費も悪かった。
その問題を解決するためにマツダは改良を進め、課題の排ガスを低減するためにサーマルリアクター(熱反応器)方式を開発した。サーマルリアクターは、排気マニホールド下流に設置して、これに吸気側に装備されたエアポンプからの新鮮な空気(酸素)を投入することで、未燃のHCとCOを燃焼させるシステムである。
カペラは、1974年に登場した2代目で昭和50年排ガス規制に適合したサーマルリアクター方式の排ガス低減システムを搭載した「カペラ1800AP(Anti-Pollution)」と1.6L&1.8L直4 SOHCガソリンエンジンを搭載した。
2代目カペラは、先代の基本的なスタイリングを継承し、見た目は大きな差異は見られなかったが、排ガス規制に適合するためのモデルだったのだ。
ロータリーを止めてガソリンエンジン専用車になった3代目
1978年のこの日、カペラはモデルチェンジで3代目に移行した。開発テーマは、“世界戦略車として、グローバルに認められるバランスの取れた高品質のファミリーカー”であり、走行性能と居住性をレベルアップさせた。
スタイリングは、欧州市場を重視したエアロダイナミクスに優れた水平基調とし、ボンネットを低く抑え、フロントグリルを傾斜させた落ち着いた雰囲気の4ドアセダンと2ドアハードトップが用意された。
最大のトピックは、高価なロータリーエンジンにさらに排ガス低減対応のためにコストアップを強いられたことから、ロータリーエンジンをラインナップから外し、燃費・排ガスの良い低価格のエンジン車だけにした。パワートレインは、最高出力90psの1.6L&100psの1.8L直4 SOHCエンジンと4速/5速ATの組み合わせ。
車両価格は、4ドアセダン(1.6L)のベースグレードが95万、2ドアハードトップのスーパーカスタム(1.8L)が117万円。当時の大卒初任給は10.2万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値でベースグレードが約213万円、スーパーカスタムが264万円に相当する。3代目カペラは、国内ではやや地味な印象だったが、欧州では高い評価を受けた。
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1970年代のオイルショックと排ガス規制強化で最もダメージを受けたのは、ロータリー搭載車だった。その後、排ガスや燃費の改良を進めて「コスモAP」や「サバンナRX-7」でいったん盛り返したものの、それも限界があり、結局2000年を迎える頃には市場から淘汰されることになったのだ。
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