マツダ「カペラ」は3代目でロータリーが消えちゃった! 価格は95万円~【今日は何の日?10月28日】

マツダ3代目カペラ
3代目カペラのエンジンは1769㏄の排気量を持つ4気筒SOHCのVC型。ブルーに塗られたカタツムリ形のエアクリーナーの下にはシングルタイプのキャブレターが装着される
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、マツダの「ルーチェ」と「ファミリア」の中間に位置する中型ファミリーカー「カペラ」の3代目が誕生した日だ。初代と2代目には、ロータリー車とガソリン車が設定されていたが、環境性能の高まりを受けて3代目はガソリン車のみとなった。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・マツダロータリーのすべて、70年代国産車のすべて、G-WORKS

■ロータリーエンジンを止めガソリン車のみとなった3代目カペラ

2005(平成17)年10月28日、マツダ(当時は東洋工業)の3代目「カペラ」がデビューした。2代目までは、ロータリーエンジン車も設定されていたが、3代目は燃費と排ガスに有利で、コストがかからないガソリン専用車となった。

マツダ3代目カペラ
カペラ・ハードトップは、1978年にモデルチェンジした3代目にあたるモデルで、カペラとしては最後のFR車だ。特徴はそのデザインで、当時の欧州車を思わせる、柔らかい印象の直線基調。それにより空力性能に優れ、室内空間もライバルに比べて広く設計されている

優れた高速性能で特に米国で人気を獲得したカペラ

コスモスポーツ
1967年に誕生した量産初のマツダ・ロータリーモデル「コスモスポーツ」

マツダは、1967年の「コスモスポーツ」で世界初のロータリーエンジンの量産化に成功。その後、ロータリー搭載車のラインナップ展開を図り、第2弾「ファミリア」、第3弾「ルーチェ」に続いたのが、第4弾のカペラだった。

マツダ「ファミリア・ロータリークーペ」
1968年にデビューしたマツダ「ファミリア・ロータリークーペ」
マツダ「ルーチェ・ロータリークーペ」
1969年にデビューしたマツダ「ルーチェ・ロータリークーペ」、丸形ヘッドライトにイタリア風フォルムでお洒落さをアピール

“風のカペラ”のキャッチコピーで登場したカペラは、ジェット機を意識したウェービングラインに、角型ヘッドライトや骨太のリアクォーターピラーを採用して、ロータリーの力強さをアピールした。

初代カペラ
1970年発表の初代カペラ

4ドアセダンと2ドアクーペが用意され、パワートレインは最高出力120psを発揮する12A型ロータリー(573cc×2)エンジンおよび100psの1.6L直4 SOHCガソリンエンジンと、4速MTとの組み合わせ。最高速度は190km/h(ガソリン車は、165km/h)で同クラスの中で圧倒的な動力性能を誇り、ロータリー車は日本よりもむしろ米国で高速性能が評価されて人気を獲得し、海外で成功した初のロータリー車となった。

マツダ「カペラ」
優れた高速性能で特に米国で評価が高かったマツダ「カペラ」

セダンの車両価格は、ガソリン車が56.0万円、ロータリー車が69.8万円と、ロータリー車が13.8万円ほど高く設定された。その差は、現在の価値では約86万円にも相当し、日本ではロータリー車の人気は限定的となった。

排ガスや燃費で苦しんだロータリーエンジン

優れた走りで躍進したロータリー車だったが、1974年のオイルショックと日米の厳しい排ガス規制が大きな逆風となった。ロータリーエンジンは、その特殊な機構のためにガソリンエンジンよりも燃費と排ガスが劣っていた。当時のロータリーエンジンの排ガスは、ガソリンエンジンと比べるとNOxは半分程度だったが、HCとCOは5~10倍と多く、結果として燃費も悪かった。

その問題を解決するためにマツダは改良を進め、課題の排ガスを低減するためにサーマルリアクター(熱反応器)方式を開発した。サーマルリアクターは、排気マニホールド下流に設置して、これに吸気側に装備されたエアポンプからの新鮮な空気(酸素)を投入することで、未燃のHCとCOを燃焼させるシステムである。

マツダ「カペラAP」
1974年にデビューしたマツダ「カペラAP」。昭和50年排ガス規制対応車

カペラは、1974年に登場した2代目で昭和50年排ガス規制に適合したサーマルリアクター方式の排ガス低減システムを搭載した「カペラ1800AP(Anti-Pollution)」と1.6L&1.8L直4 SOHCガソリンエンジンを搭載した。

2代目カペラは、先代の基本的なスタイリングを継承し、見た目は大きな差異は見られなかったが、排ガス規制に適合するためのモデルだったのだ。

ロータリーを止めてガソリンエンジン専用車になった3代目

マツダ3代目カペラ
マツダ3代目カペラ

1978年のこの日、カペラはモデルチェンジで3代目に移行した。開発テーマは、“世界戦略車として、グローバルに認められるバランスの取れた高品質のファミリーカー”であり、走行性能と居住性をレベルアップさせた。

スタイリングは、欧州市場を重視したエアロダイナミクスに優れた水平基調とし、ボンネットを低く抑え、フロントグリルを傾斜させた落ち着いた雰囲気の4ドアセダンと2ドアハードトップが用意された。

マツダ3代目カペラ
マツダ3代目「カペラ」のシンプルなリアビュー

最大のトピックは、高価なロータリーエンジンにさらに排ガス低減対応のためにコストアップを強いられたことから、ロータリーエンジンをラインナップから外し、燃費・排ガスの良い低価格のエンジン車だけにした。パワートレインは、最高出力90psの1.6L&100psの1.8L直4 SOHCエンジンと4速/5速ATの組み合わせ。

マツダ3代目カペラ
3代目カペラのエンジンは1769㏄の排気量を持つ4気筒SOHCのVC型。ブルーに塗られたカタツムリ形のエアクリーナーの下にはシングルタイプのキャブレターが装着される

車両価格は、4ドアセダン(1.6L)のベースグレードが95万、2ドアハードトップのスーパーカスタム(1.8L)が117万円。当時の大卒初任給は10.2万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値でベースグレードが約213万円、スーパーカスタムが264万円に相当する。3代目カペラは、国内ではやや地味な印象だったが、欧州では高い評価を受けた。

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1970年代のオイルショックと排ガス規制強化で最もダメージを受けたのは、ロータリー搭載車だった。その後、排ガスや燃費の改良を進めて「コスモAP」や「サバンナRX-7」でいったん盛り返したものの、それも限界があり、結局2000年を迎える頃には市場から淘汰されることになったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…