【ルノー・アルカナ ◯△✕判定】アルピーヌのエッセンスが光る! ✕は独特の操作感…。国産車では見慣れないボタンとは?

CセグメントSUVの「ルノー・アルカナ」は、クロスオーバースタイルでありながらも200mmの最低地上高、大人4人でも実用になる居住性を備える。さらに、荷室容量480Lを誇るラゲッジは、奥行きがあり、大開口による積載性の高さも魅力だ。同社独自のフルハイブリッドを設定し、22.8km/LというWLTCモード燃費はルノー キャプチャーとともに輸入SUVナンバー1を誇っている。マイナーチェンジを受けた最新モデルでその実力を探ってみた。

TEXT&PHOTO:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)

全車に「エスプリ アルピーヌ」のエッセンスを盛り込む

2024年10月に受けたマイナーチェンジでルノー・アルカナには、用意される2グレードに「エスプリ アルピーヌ」の名が加わっている。A110というミッドシップ2シーターを擁するアルピーヌの名を冠し、そのエッセンスが盛り込まれた。

ただし、パワートレーンやシャーシなどがスポーティ仕様、装備になるわけでなく、専用エンブレムや「Alpine」ロゴ入りシートなど、内外装の加飾にとどまっている。イメージとしては、以前の「ルノー・スポール(R.S.)」ではなく、「R.S.ライン」に近いといえそうだ。ただし、こうした専用エンブレムや加飾は、オーナーの所有欲をくすぐりそう。

なお、「エスプリ アルピーヌ」は、「スポーツシック」というキーワードを掲げている。日本では、スポーツとシックという言葉は、どちらかというとテイストは異なるが、フランスでは近い意味合いだそうだ。

エクステリアは、フロントグリルに2Dの最新ロゴが使われ、ハーフダイヤモンドのシェイプが立体的に浮かび上がる顔つきになった。「ロサンジュ」と呼ばれるダイヤモンドのブランド・エンブレムが2D化になり平面的になったものの、同エンブレム下側のグリルが立体感を増したことで、バランスが取られた。

また、リヤにもフラットなエンブレムが配され、ブラックの車名ロゴ、クリアタイプのテールランプ、ブラックのエキゾーストフィニッシャーにより引き締まったムードを漂わせている。足元は、全車18インチから19インチになり、アルミホイールのデザインも刷新されている。

内装で目を惹くのは、7.0インチから9.3インチに拡大されたタッチ式センタースクリーンで、操作性と視認性の向上を確認できた。また、ステアリングやステッチにトリコロールをモチーフとしたデザインが施されている。

なお、動物愛護の点からインテリアはレザーフリー化され、「TEP」レザーのステアリング、TEPレザーとスェード調のシートなどに変わった。そのほか、ドライバーの視界をサポートするサイドビュー機能、ブラックルーフの採用、17万円で電動パノラミックルーフが設定されている。

マイナーチェンジで「E-SAVE」機能を追加

今回、試乗したのはE-TECHフルハイブリッドで、走りに影響しそうなのは19インチアルミホイールの採用、「E-SAVE」機能の追加だ。なお、「E-SAVE」機能は、マイナーチェンジ前(モデル後期)の特別仕様車「アントラクト」にも搭載されていた。

同機能は、早朝深夜の住宅街など静かにモーター走行をしたい際などにバッテリー(電気)を取っておくのが狙いではなく、上り坂が続く山道や高速道路などでバッテリー残量が減り、モーターアシストが途切れないようにするためのセーブ機能だという。これにより、上り坂でもアルカナらしい伸びやかな加速が享受できるようになるという。

実際にアクアラインを使い、川崎方面から木更津方面に向かうだらだらと続く上り勾配で「E-SAVE」をオンにすると、状況によるものの、エンジン再始動が頻繁になる印象を受けた。さらに、走行モードをスポーツにすると、エンジンの出番が増えることもあり、バッテリーへの充電が増えるようだ。

【アルカナの◯は?】途切れることのないモーターアシストで、スムーズな走りが持続

最新アルカナの○は、同機能により上記のようなシーンでモーターアシストが途切れることなく、持ち前のスムーズな走りが持続するようになったのが1つ。なお、今回の改良でパワートレーン自体は変わっていない。ドッグクラッチを使うフルハイブリッドのシステム出力143PSという数値も不変だが、スペックを超えた力強い加速フィールは相変わらず美点だ。

ドッグクラッチの変速は、ECOからスポーツにすると、低いギヤを引っ張り、鋭い加速を引き出すのが特徴で、ECOでも高速道路の合流時などでも不足を抱かせない。ダイレクトかつスムーズなドッグクラッチの変速がそれを支えている。

【アルカナの△は?】低速域でのゴツゴツとした乗り心地

△をあげるとすると、18インチから19インチ化された走りへのわずかな影響だ。見た目は確かに映えるようになった反面、少しオーバーサイズのブーツを履いているような乗り心地になっている印象。

とくに低速域でのゴツゴツとした動きがあり、ルノーに期待される、しなやかな猫足というのは、今や昔の話であることを再認識させられる。とはいえ、18インチから19インチ化されても大差といえるほどの変わりっぷりではない。

【アルカナの✕は?】あえて言うなら、走行モードの切替の操作性だろうか

×といえるほどの課題や使いにくさは、短時間の試乗ではほとんど感じられなかった。強いてあげればクーペクロスオーバーの泣き所である斜め後方視界が限られている点。また、走行モードやエアコン、アンビエントライトなどの「マルチセンス」の設定をタッチディスプレイで操作する必要があることだろうか。

それほど頻繁に操作する人は少ないだろうが、とくに走行モードはECOとスポーツではキャラが結構変わるだけに、ステアリングスイッチなどで操作できるとより扱いやすくなるのは間違いない。

また、マイナーチェンジで加わった「E-SAVE」モードを呼び出す際は、花びら(?)をイメージしたようなハードスイッチを押すことになる。納車時に説明を受けないと何のスイッチか分からないまま乗ることになりそうだ。

ルノー アルカナは、CセグメントSUVのクロスオーバーモデルの中でも普及価格帯といえる329万9000円〜389万5000円に抑えている。デザインを購入理由にあげる人が多いそうで、ルノーらしい小気味の良い走りと実用になる居住性や積載性も備えている。

日本では2022年5月の発売以来、生産体制の厳しさもあり、約2000台という販売台数だそうだが、生産の懸念がなくなればもっと売れることは間違いなさそうだ。

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…