古き好きアメ車カスタムの本流はストリートロッドにこそあり!『スーパーアメリカンフェスティバル』の栄えあるアワードカーは!?

今回で31回目を数えるアメリカ車の祭典『Super American Festival at お台場』がダイバーシティ前にあるお台場ウルトラパークで開催された。今回のアメフェスで筆者はモーターファン.jpを代表してカーコンテストのアワードを授与する栄誉に預かることになった。筆者がアワードを選ぶとすれば、アメリカンモーターカルチャーに敬意を払ってSTREETROD(ストリートロッド)から選ぶことになる。さて、今回アワードに輝いたクルマはどんなクルマなのか? 合わせてエントリーしたその他のSTREETRODも紹介する。
REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

アメリカン・モーターカルチャーの保守本流
STREETRODを抜きにしてアメ車は語れない

PHOTO:田中享(アメ車ワールド)

2024年10月20日に「お台場ウルトラパーク」で開催された『Super American Festival 2024 at お台場』(以下、アメフェス)には、オーナー自慢のマシンが250台以上も大集結。主役はもちろんアメリカ車で、STREETROD(ストリートロッド)、マッスルカー、ピックアップトラック、SUV、STRRET VAN(ストリートバン)、LOWRIDER(ローライダー)とジャンル横断で様々なクルマが会場を埋め尽くした。

250台以上!? お台場で開催されたアメ車の祭典『スーパーアメリカンフェスティバル』の参加車両をチェック!今年はどんなレア車が?

今回で31回目を数えるアメリカ車の祭典『Super American Festival at お台場』がダイバーシティ前にあるお台場ウルトラパークで開催された。このイベントにはアメリカ車を中心に、さまざまな年代・車種・仕様のアメリカ車が集まった。カーショーだけでなく、ライブステージ、スワップミートと楽しみ方はさまざま。今回はイベントリポートとともに、エントリーマシンの中から注目したいアメリカ車をピックアップして紹介する。 REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

だが、その多くは戦後のモデル。アメリカン・カスタムカルチャーの象徴であり、本国では歴史と伝統を持つフォード・モデルTやモデルA、モデルBなどの1949年までの車両をベースにしたSTREETRODはここ日本では少数派。アメフェスの会場でもエントリー台数は片手で数えるほどしかなかったが、数が少ない分、その熱量は半端なものではなく、アメリカ本国のカーショーでも高く評価されるであろうレベルの高いマシンが集まった。

鮮やかなソリッドイエローが目を引くDEUCEこと1932年型フォード・モデルBロードスター。オールドスクールなハイボーイスタイルが見事にキマっている。

「MotorFan.jp アワード」を選ぶならSTREETRODでキマり!

今回のアメフェスで筆者はMotorFan.jpを代表してカーコンテストのアワードを授与する栄誉に預かることになった。アメフェスのポスターには協賛媒体としてOptionの名前があったので、ひょっとするとアワードを用意したのはMotorFan.jpではなかったのかもしれないが、いずれにしても三栄の媒体であるし、代表して取材に訪れていたのは筆者だけだったので、まあ、どちらでも良いのかもしれないが……。

DEUCEこと1932年型フォード・モデルBロードスター。バランス良く美しくしあげられたお手本のようなSTREETROD。

さて、この度のアワードを選ぶに当たって筆者が重視したのは「アメリカン・モーターカルチャーの歴史と伝統を体現したマシン」ということだった。となると、アメリカ車の中から選ぶのは当然として、すべてのアメリカン・モータースポーツとカスタムカルチャーの原点となるSTREETRODの中から選ぼうと考えた。

1932年型フォード・モデルBロードスターのリヤビュー。この車両は関東を中心に開催されるカーショーの常連でもある。
1932年型フォード・モデルBロードスターのインテリア。トリムやシートはブラウンの本革に張り替えられており、Billet Specialties Steeringのステアリングホイールに交換されている。

もともと禁酒法時代の密造酒の運び屋たちが官憲からの追跡を振り返すために生まれたSTREETRODは、すべてのアメリカン・モータースポーツとカスタムカルチャーの原点となるクルマである。NASCARに代表されるストックカーレースやドラッグレース、アメリカ人のV8信仰、カスタムカルチャーから生まれたHOTROD、クルージングやカーショーなどのカー文化……。これらはすべてSTREETRODから始まったと言っても過言ではないだろう。

1928年型フォード・モデルAロードスター・ピックアップ。サビを生かした経年劣化した雰囲気を味わいとするRATROD(ラットロッド)として仕上げられたマシンだ。

そして、STREETRODは制作するのに膨大な手間と時間、コストが掛かり、またCOOLなマシンに仕上げるには卓越したセンスと高い技術力が必要になる。まさにアメリカ車趣味の王道であり、これを避けてはアメリカ車のことは語れない究極のカスタムマシンなのである。

ボディワークはチャネリング(フレームに架装されているボディの取り付け位置を下げて車高を低くする加工)、セクショニング(ボディを水平方向に切り取り、上下を切り詰める加工)、ルーフチョップによりローダウンした足廻りと相まって限界まで車高を低くしている。
1928年型フォード・モデルAロードスター・ピックアップの心臓は排気量454cu-in(7.4L)のシボレー製ビッグブロックV型8気筒エンジンに換装されている。

DEUCEのセダンデリバリールックにカスタムされた
中瀬板金の1929年型フォード・モデルAセダンをセレクト

今回、エントリーのあったSTREETRODは昨年に比べてエントリー台数は少なかったが、レベルの高さでは勝るとも劣らず、素晴らしいマシンが揃っていた。そんな中で筆者の目を引いたのが、静岡県浜松市からエントリーした中瀬板金(有)の1929年型フォード・モデルAセダンだった。

中瀬板金の1929年型フォード・モデルA2ドアセダン。シャシーやグリルをDEUCE用に交換し、1932年型フォード・モデルBルックとした。

一見するとベース車はDEUCE(1932年型モデルB)のセダンデリバリーの思われるかもしれないが、同社社員の笹ヶ瀬さんに話を聞いたところ、じつはフレームとフロントグリルをDEUCE用に換装し、ボディはストックのモデルA・2ドアセダンを活かしてセダンデリバリー風に仕上げたとのこと。ルーフはわずかにチョップして、ボディを上下に切り詰めたセクショニング加工を施し、定番のスタイルでありながら、なんとも美しく絶妙なプロポーションに仕上げている。

1929年型フォード・モデルA2ドアセダンのサイドビュー。ボディはストックのA型のものを加工してリアのサイドウィンドウを塞いでセダンデリバリー風にした。

さらに、エンジンはトライパワーキャブ付きスモールブロックV8に積み替え、ストレートエキゾースト、サスペンションの変更、ブレーキはビュイック用のアルフィンドラムなどを備えたオールドスクールなRESTMOD(レストア+モディファイ)に仕上げており、このカスタムメニューにフェンダーを取り去ったハイボーイスタイルがバッチリ決まっている。

1929年型フォード・モデルA2ドアセダンのリアビュー。フェンダーを取り去ったハイボーイスタイルがキマっている。

このマシンは社長さんのコレクションとのことで売り物ではないとのことだ。これほどハイレベルなマシンを作り上げる技術たるや中瀬板金は腕に覚えのある職人揃いなのだろう。

心臓部はエーデルブロック製スモールブロオクV8に換装しており、キャブレターはトライパワーを装着している。

なお、このモデルAは12月1日にパシフィコ横浜で開催されるMOONEYES主催の『32th YOKOHAMA HOTROD CUSTOM SHOW 2024』(横浜ホットロッドカスタムショー2024)にも出品を予定しているそうだ。写真を見て気になった方は、ぜひ会場にアシを運んで実車を見ていただきたい。その完成度の高さから同ショーでも何かしらのアワードは受賞できるものと信じている。

1929年型フォード・モデルA2ドアセダンのコクピット廻り。ストックの雰囲気を壊さないようにシンプルにまとめられている。
1929年型フォード・モデルA2ドアセダンのキャビン。ストックのセダンの状態から後部座席を取り去り荷室とした商用モデルのセダンデリバリーに作り直されている。

まだまだあるぞ!COOLなSTREETRODマシン!!

なお、中瀬板金のモデルA以外の会場で出会ったSTREETRODについては、写真を交えて紹介して行くことにする。

1937年型フォード2ドアセダン。東京・江戸川区のガレージダイバンの販売車両で車両本体価格は888万円(支払い総額928万円)で販売されている。コンディションが良好なことはもちろん、STREETRODとしての完成度も高い。
1937年型フォード2ドアセダンのリアビュー。1934年型までフォードのセダンにトランクはなく、折りたたみ式のキャリアに大型の旅行鞄をくくりつけていたが、1935年型からはトランクリッドが切られた独立したトランクを持つようになった。
ローダウンされた足廻りには、COLORADO CUSTOM製の17インチホイールに扁平タイヤが組み合わされている。
美しく仕上げられた1937年型フォード2ドアセダンのインテリア。
手をかけたボディワークにより美しいスタイリングを誇示する1937年型リンカーン・ゼファー3ウインドウクーペ。
1935年型シボレー ・マスター。ローダウンしたうえでバイザーやリアフェンダーのスパッツを装着。「BOMB」(ボム)スタイルでまとめられたクラシックスタイルで仕上げられたLOWRIDER。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…