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SUVテイストの軽自動車4車種の特徴と向いているユーザー層
軽スーパーハイトワゴンにSUVテイストという遊び心を加えたモデルの競争が激しくなっている。近年、同市場を開拓したスズキ・スペーシアギアが新型にスイッチし、ホンダがN-BOX JOYでついに参入。ダイハツ・タント・ファンクロス、三菱デリカミニも含めて選択肢が増えた。その分、どのモデルを指名するかうれしい悩みが増えたともいえるかもしれない。ここでは、4車種の特徴と向いているユーザー層を整理してみた。
スペーシアらしさも重視したスズキ・新型スペーシアギア
先代のスズキ・スペーシアに加わったスペーシアギアは、アウトドアテイストの内外装を備え、SUVブームもあってスペーシア・シリーズの販売増に貢献した。スペーシアが新型に移行したことに伴い、スペーシアギアも2代目にスイッチした。新型スペーシアギアのコンセプトは「10マイルアドベンチャー」で、約16kmという日常走行の中でも気軽にアウトドア気分に浸れるという想いが込められている。そのためか、アウトドアテイストを盛り込みながらも、先代よりも黒い樹脂パーツの面積を減らし、さり気なくSUV風味を主張している。グリルに一見するとジムニーを想起させる縦基調のメッキブロックを採用し、力強さを表現した。一方のインテリアはベース車と基本的に同じだが、シート表皮に山の稜線や歯車、タイヤパターンなどをイメージしたデザインを施したり、インパネボックスなどにカーキグリーンを配したりするなど、遊び心を盛り込んでいる。
装備では、撥水加工シートをはじめ、水汚れや泥汚れにも強く、手入れがしやすい防汚タイプラゲッジフロア、全車にステアリングヒーターを搭載するなど、上級仕様としての機能、装備を与えている。
パワートレーンや走りなどはベース車と同じで、三菱デリカミニが4WDに専用サイズのタイヤを与えるなどの方策は採っていない。新型スペーシアと同様に、マルチユースフラップの採用がトピックス(スペーシアギアは全車標準)。オットマンモード、レッグサポートモード、荷物ストッパーモードという1人3役をこなす同装備が機能面での最大の特徴となる。そのため、子どもがいるファミリーなど、ある程度、後席にも着座する機会があり、現行モデルの美点である居住性、積載性、乗降性などを評価しつつ、ベース車にはないアウトドアテイストを評価するユーザーに向けてアピールしている。
ホンダ・N-BOX JOYは独身の方やディンクスに最適
N-BOX JOYは、N-BOXの美点である、大きな荷物の積載性に多少の影響があっても後席を折りたたんでゆったりくつろげることを重視した。後席をダイブダウンさせることで、前席後方から荷室開口部までフラットになる「ふらっとテラス」は、日常の公園などでも気軽に、ひと時を過ごせるのがコンセプトだ。このフラットモード化により、自転車などの大きな荷物は少し出し入れしにくくなっているが、床下に約18Lの大容量アンダーボックスを備え、さらにパンク修理キットをその前方に収めるなど、使い勝手の向上に余念はない。
また、公園でゆっくりする際は、レジャーシートを敷いたり、アウトドアチェアを出したりするだろう。シートはレジャーシートを彷彿とさせるチェック柄としたのもユニークな点だ。シートの座面と背もたれだけでなく、アームレスト、後席背面、スライドボード上面に撥水素材のチェック柄ファブリックを採用している。男性、女性、あるいは年齢を問わず、受け入れられやすいチェック柄を模索したという。N-BOX JOYもタイヤサイズなどは変更せず、N-BOXらしい高い乗降性を確保し、日常での使い勝手やスマートさも意識した外観も目を惹く。さらに、ベース車と同様に、走りのクオリティの高さもそのままで、NAエンジンモデルでも実用上、不足のない走りを披露するはずだ。N-BOX JOYは、子どもがいる家族層にも使いやすいのはもちろん、「ふらっとテラス」を大きな特徴とすることからも独身やディンクスにもおすすめできる。
三菱・デリカミニを狙うなら、やはり4WDモデルにしたい
三菱デリカミニは、主にシニア男性からの支持が多く、女性からは顔が“こわもて”と受け取られることがおおかったというeKクロススペースの実質的な後継モデルだ。ただし、単に女性からも受ける顔つきになっただけでなく、日産と三菱のジョイントベンチャーであるNMKVでは異例といえる、三菱専用の足まわりの開発が、4WDモデルに注ぎ込まれたのが特徴だ。2WDの165/55R15タイヤに対して、165/60R15タイヤと専用ショックアブソーバーを履く4WDは、岡崎製作所のクロスカントリー路で入念な走り込みを行ったという。
専用タイヤを履くことで4WDは、2WDの155mmから160mmに最低地上高も高まった。三菱伝統のデリカの名を冠することもあり、4WDの比率が軽スーパーハイトワゴンの中でも高いという。それに加えて、グリップコントロールやヒルディセントコントロールも全車に備わる。雪上やキャンプ場などに向かう未舗装路などでもより安心して走破できるのがデリカミニの4WDモデルといえるだろう。
本格アウトドアを楽しむならアイディア満載のダイハツ・タントファンクロス
2022年10月のタントのマイナーチェンジを機に追加されたタント・ファンクロスは、タント最大の個性である助手席ピラーレス(ピラーイン)構造の「ミラクルオープンドア」を踏襲している。専用の内外装に加えて、撥水シート、防水加工シートバック、夜でも荷物の積載がしやすいラゲッジルームランプなどが用意されている。ファンクロスも含め、同マイナーチェンジでタントは、荷室側からも後席スライドが可能になり、上下2段式調整式のデッキボードを備えるなど、荷室に大きな改良を施した。
同ボードを上段にすれば後席前倒し時にフラットになり、大きな荷物の積載などがしやすくなる。下段にすれば荷室高を稼げるなど、余裕のある荷室高を有効活用。さらに、デッキボードは脱着可能で、アウトドアなどで荷物置き場(直接荷物を地面に置きたくないなどの声に応える)としても使える。
こうした使い方をする層にはハマる一方で、デッキボードを下段にすると当然ながら前に倒した後席との段差ができるなどのデメリットもある。一長一短あるのはどんなモデルにもあるだろうが、多少ラゲッジの使い方が限定されるようにも思える。とはいえ、開発陣の中にはアウトドアレジャーを楽しむ人も多いそうで、経験によるアイディアが盛り込まれている。