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■AE86以来となるトヨタのライトウェイトFRスポーツセダン
1998(平成10)年10月30日、トヨタからFRスポーツセダン「アルテッツァ」がデビュー。前後のオーバーハングを切り詰めた比較的コンパクトなボディに、高性能の2.0Lエンジンをフロントミッドシップにしたスポーツセダンは、多くのFRファンから注目を集めた。
30年以上経つ今も、高い人気を獲得しているAE86
トヨタを代表するFRスポーツセダンの「カローラレビン/スプリンタートレノ(TE27型)」は、1972年にカローラクーペの最高峰モデルとして1.6L直4 DOHCエンジンを搭載してデビューし、レビン/トレノの歴史が始まった。
なかでも、1983年に登場した4代目レビン/トレノの通称“AE86(ハチロク)”は、剛性の高い軽量ボディに最高出力130ps/最大トルク15.2kgmを発揮する高性能1.6L直4 DOHCエンジンを搭載したFRらしい俊敏な走りで、多くの若者を夢中にさせた。
その後1987年にFFレイアウトに変更された5代目AE92/AE91に切り替わった。当時は、レビン/トレノがFFモデルになったことでガッカリしたファンも多かったはず。
一方、1995年から連載を開始した連載コミック“イニシャルD(頭文字D)”の主人公が乗るクルマとしてハチロクが登場して人気が再燃。さらにドリフトが楽しめる希少なライトウェイトFRとして、中古車市場で価格は大きく跳ね上がり、空前のハチロクブームは現在も続いている。
AE86の後継モデルとして登場したアルテッツァ
AE86の販売終了以降、手頃な価格のライトウェイトFRスポーツを望むクルマ好きの声に応える形で登場したのが、1998年のこの日にデビューしたスポーツセダンのアルテッツァだ。
アルテッツァは、前後のオーバーハングを切り詰めた比較的コンパクトなボディにエンジンをフロントミッドシップにして重心を中心付近に近づけ、FRらしい切れの良い走りを実現。インテリアもスポーツモデルらしく黒を基調色とし、バケットシートが装備された。
パワートレインは、最高出力160ps/最大トルク20.4kgmを発揮する2.0L直6 DOHC(ハイメカツインカム)エンジンと4速ATの組み合わせ、加えて210ps/トルク22.0kgmの2.0L直4 DOHC(スポーツツインカム)エンジンと6速MTおよび5速ATの組み合わせが用意された。
車両価格は、ベースグレードのAS200(直6+4速AT)が207万円、ハイグレードのRS200(直4+5速AT)が224万円に設定されたが、もちろん人気は高性能のRS200だった。当時の大卒の初任給は、19.6万円(現在は約23万円)程度だったので、単純計算では標準グレードが242万円、ハイグレードが263万円に相当する。
アルテッツァは、久しぶりのFRスポーツセダンとして注目を集めたが、人気は発売中よりも中古市場でクルマ好きから人気を獲得するという皮肉な結果に終わってしまった。
アルテッツァの後継は上級化したレクサスIS
アルテッツァは、海外ではレクサスISとして欧州車のメルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズに対抗するプレミアムモデルとして販売された。2005年にモデルチェンジのタイミングで国内でもレクサスISへと切り替わり、アルテッツァの名はトヨタのラインナップから消えた。
ただし、レクサスISはアルテッツァのコンセプトをそのまま受け継いだわけでなく、アルテッツァよりもひと回り大きく、2.5L V6 DOHCエンジン搭載の「IS250」と3.5L V6&DOHCの「IS350」の高級スポーツセダンへと進化したのだ。
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久しぶりのFRスポーツセダンとして登場し、1998年~1999年日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄光にも輝いたアルテッツァだったが、評価されたほど市場では人気を獲得できなかった。ただし、クルマ好きが大好きな2L NAエンジン搭載のFRでMTが選べる貴重なモデルとして、その存在感は示したのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。