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インド生まれのBセグメントSUV。発売前から人気爆発!
2024年に注目の一台、スズキ・フロンクスに公道で試乗する機会がありました。暑い盛りからティザーがはじまっていたので、いかにも個性的なフロンクスのエクステリアにも見慣れているかもしれませんが、正式発売は2024年10月16日とごくごく最近の話だったりします。
あらためてフロンクスの概要を整理すると、ボディは全長4m未満で、全高は1550mmという多くの機械式駐車場に収まるサイズ。パワートレインは1.5L 4気筒DOHCエンジンにISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)を装備、6速ATと組み合わせたマイルドハイブリッド仕様となっています。駆動方式はFFを基本に、ビスカスカップリングのスタンバイ4WDも用意しています。
スタイリング的にクーペSUVといえるフロンクスにおいて注目されてきたのは、このブランニューモデルがインド製だということでしょう。グローバル化の進む中、アジア各国の現地工場で国産ブランドを生産、日本に輸入するといったソリューションは珍しくありませんが、やはり生産品質について気になる方も少なくないかもしれません。
その点について結論をお伝えすれば、少なくとも試乗車に触れたかぎりクオリティには何の問題もありません。
聞けば、フロンクスを生産するインド・グジャラート工場は2017年に稼働を開始した、スズキの中でもっとも新しいファクトリーであり、つまり生産設備なども最新版になっているということです。オートメーション化の進む自動車産業においては生産設備の新しさは高品質にダイレクトにつながる要素ですから、フロンクスの品質は心配する必要がないどころか、むしろ現在のスズキ車においてトップレベルであってもおかしくないわけです。
むしろインド生産の影響を受けているのはグレード構成でしょう。前述したようにフロンクスは1.5LマイルドハイブリッドでFFと4WDの駆動方式をラインナップしていますが、内装などの仕様は一種類だけのモノグレードとなっています。また、海外生産ゆえのラインオプション対応の難しさも考慮して、9インチナビ、前席シートヒーター、ワイヤレス充電器、電動パーキングブレーキ、カラーヘッドアップディスプレイ、各種ADAS(先進運転支援システム)などが標準装備となっています。
FFで254万1000円、4WDは273万9000円とBセグメントSUVとしては高価にも見える値付けですが、必要十分以上の標準装備内容をみれば、むしろリーズナブルといえそうです。そして、こうしたコスパの良さは本気で購入を検討していくと納得できるはずで、すでに1万台もの受注を集めているというのは、まさに装備も含めて価格を熟考したユーザーの多くが納得した結果かもしれません。
公道試乗で実感したラグジュアリー要素とスポーツ性の融合
じつは筆者が、フロンクスに乗るのは初めてではありません。すでにクローズドコースにおいてプロトタイプを試したことがあります。ただし、路面もよく、対向車などもいないクローズドコースではダイナミック系のパフォーマンスは感じられても、リアルワールドで重要な取り回しや静粛性などについてはわからない部分もあります。
今回の試乗では、雨に見舞われました。映えた写真を撮るのは難しい状況ですが、静粛性の確認にはもってこいの環境ともいえます。これ幸いと、雨足の強い中で公道を走り始めました。
驚いたのはフロントウィンドウを叩く雨の音くらいしか耳に入ってこないことです。タイヤは盛大に雨水を巻き上げているはずですが、そうしたノイズはほとんど気になりません。設計的にいえばフロントフェンダーにPUR(ポリウレタン樹脂)の隔壁を設けることで吸音・遮音性能を狙っていたり、ダッシュパネルの板厚を上げていたりといった部分がトピックスとなりますが、そのほか目立たない領域においても徹底したNVH対応設計がなされていることが想像できる静かなキャビンとなっています。
エンジンについても同様で、小さめのアクセル開度で流れに乗って走っている範囲では、さほど存在を感じないほど静かで、ISGのおかげもあってアイドリングストップからの再始動も非常にマイルドに仕上がっています。ただし、パドルシフトで低いギアを選ぶなどアグレッシブに走らせようとすると、4気筒らしいエンジンサウンドが耳に届きます。1.5Lクラスでは3気筒エンジンも増えていますが、やはりエンジンを味わいたいなら4気筒の魅力が優っていると実感した次第です。
ハンドリングについても基本的には落ち着いていますし、電動パワーステアリングも重すぎず軽すぎずちょうどいい塩梅のチューニングとなっています。運転が楽しく、なおかつ高級感もあるわけです。
さらに感心させられたのは渋滞にも対応したACC(アダプティブクルーズコントロール)の追従&停止性能です。広角カメラとミリ波レーダーをフュージョンしたシステムをフロンクス専用にチューニングした結果、先行車に合わせて加減速するリニア感が満足できるレベルなのはいうまでもありませんが、渋滞で停止する際のふるまいが非常に高いレベルにあるのです。
BセグメントクラスのACCでは、確実に停止するけれどノーズダイブやピッチングが大きく、もう少しうまい運転ができないものか、と思うことも正直あります。しかし、フロンクスのACCはとくに停止する瞬間の制御が非常に高いレベルにあります。前述したように静粛性にも優れていますから、走っているときの印象は全体として高級感を醸し出すのです。
スタイリッシュなクーペSUVフォルム、ゴージャスな色づかいのインテリア、そして静かでスムースな走行フィール…こうした走り味はBセグメントとは思えないレベルにあります。誤解を恐れず表現するなら、「フロンクスはBセグメントのハリアー」と考えると、その仕上がりやターゲットユーザーが理解しやすいかもしれません。
それくらい全体に高級感のある、クラスレスな乗り味となっています。
最小回転半径4.8mの小回り性能と見切りのいいボディ
しかし、「Bセグメントのハリアー」というのは、プアマンズ・ハリアーという意味ではありません。ハリアーをディスるわけではありませんが、やはりDセグメントSUVというのはボディサイズも大きいため日本で使うには”持て余してしまう”面があるのは否めません。
一方、フロンクスは全長が4m未満と短いだけでなく、最小回転半径の4.8mと非常に小さくなっています。ちなみに、スズキ車でいうと全長3.8mほどのスイフトで最小回転半径は4.7~4.8m、軽自動車のスペーシアでも15インチタイヤ装着グレードでは4.6mとなっていますから、フロンクスの小回り性能が高いことが理解できるでしょう。
さらにエンジンフードのデザインが絶妙でノーズ位置が把握しやすいという特徴もあります。さすがに軽自動車から乗り換えると大きく感じるかもしれませんが、個人的にはスイフトと同じ感覚で取り回すことができると感じました。前後ともダイナミックな形状のフェンダーは目に入りやすく、3ナンバーボディの幅についても車両感覚を捉えやすいともいえます。
スタイリッシュで高級感のあるクーペSUVで、市街地走行をノンストレスに楽しめるというのはフロンクスを積極的に選ぶメリットとなります。その意味では、古典的な表現をすると『小さな高級車』の新しい選択肢といえるのかもしれません。
スズキ・フロンクス主要スペック
FRONX
全長×全幅×全高:3995mm×1765mm×1550mm
ホイールベース:2520mm
車両重量:1070【1130】kg
エンジン種類:直列4気筒DOHC VVT
総排気量:1460cc
最高出力:74kW(101PS)【73kW(99PS)】
最大トルク:135Nm【134Nm】
モーター種類:直流同期電動機
最高出力:2.3kW(3.1PS)
最大トルク:60Nm
変速装置:6速AT
駆動方式:FWD【4WD】
WLTCモード燃費:19.0【17.8】km/L
燃料タンク容量:37L
使用燃料:レギュラーガソリン
最小回転半径:4.8m
タイヤサイズ:195/60R16 89H
乗車定員:5名
メーカー希望小売価格:254万1000円【273万9000円】
※【 】内は4WD