ストロングハイブリッドでも機械式AWDにこだわるスバル。新型クロストレックe-BOXERの走りは?

スバル・クロストレックにストロングハイブリッドが加わる。気合いの入ったエンジン+ハイブリッドトランスアクスルから後輪へはプロペラシャフトが伸びる。そう、後輪はあえてモーター駆動としていないのだ。スバルのこだわりを見ていこう。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:山上博也(YAMAGAMI Hiroya)FIGURE:SUBARU

機械式AWDはアクセルペダルを踏み込んだ際にラグがないのがいい

SUBARU クロストレック Premium S-HEV 全長×全幅×全高:4480mm×1800mm×1575mm ホイールベース:2670mm 車重:1660kg

e-BOXER(ストロングハイブリッド)を搭載するクロストレックは、足まわりにも手を加えた。マイルドハイブリッド版e-BOXERに対して約50kgの重量増に対応するためだけではなく、「上級グレードにふさわしい快適かつ上質な乗り心地と安心感を提供」するのが狙い。重量増に対しては、ばねレートを少し上げたという。リヤダンパーは筒内部のベアリングディスタンス間を55mm延長。その結果、実質的にロッド長が伸び、横力が入ったときに摺動部にかかる力が低減できて動き出しがスムースになる。

新型クロストレックe-BOXERの走りは? | 写真(全18枚)

リヤダンパーロッドの延長は横力を受けた際のフリクション荷重を減らして減衰力を下げずに硬さ感を低減し、しなやかな乗り心地を実現する。
バルブスプリングの追加により初期圧を出し、スムーズな減衰とフラット感を向上。減衰力はそのままに揺さぶられ感を改善した。

さらに、ボトム側にチェックバルブスプリングを追加し、動き始めに減衰力をしっかり出すようにした。路面の小さな凹凸への追従性を上げる狙いだ。フロントはロワーアーム車体側取り付け点のブッシュ特性を見直し、駆動力や外力がかかった際のトー変化を抑える方向でチューニング。操舵に対する動きの正確性(ライントレース性)向上を狙った。

タイヤの指定内圧が前後それぞれマイルドハイブリッド版e-BOXERに対して10kPa上がり、フロント240kPa、リヤ230kPaとなっているのは燃費のためだ(転がり抵抗を低減させたい)。装着するタイヤ銘柄(オールシーズンタイヤのファルケンZIEX ZE001A A/S、225/55R18)に変更はない。

クローズドなコースで現行e-BOXER(マイルドハイブリッド)と新型e-BOXER(ストロングハイブリッド)を比較試乗。新型は車格がひとつふたつ上がったかのような上質なドライブ体験が味わえた。

クローズドな環境の舗装路でクロストレックのマイルドハイブリッド版e-BOXERと、e-BOXER(ストロングハイブリッド)を乗り比べた。マイルドハイブリッド版はモーターの働きを体感しづらいが、ストロングハイブリッドは発進からモーターの存在を強く感じる。発進はモーターのみの動力で走るEV走行。そこそこ強く踏み込んでもエンジンは始動せず、モーターのみで粘る。アクセルペダルの踏み込みに対する応答が良く、イメージどおりの力を出して加速してくれるので、爽快だ。

アクセルの踏み込み量や車速の上昇にともなってエンジンは始動するが、それで急に騒々しくなることもなく、気分を邪魔しない。SIドライブでSモードを選択すると、アクセルの踏み込み量に対する感度が高くなり、より強い加速が得られる。全開にした際の加速はIモードでもSモードでも同じだ。ストロングハイブリッドの0-100km/h全開加速タイムは、マイルドハイブリッド版e-BOXERより2.1秒速いという。速さもさることながら、騒々しさが異なり、ストロングハイブリッドのほうが上質だ。

スキー場の斜面を利用した特設コースで、e-BOXER(ストロングハイブリッド)に乗った。どしゃ降りの雨で路面はドロドロになっており、スタックする車両が続出する状況だった(そんな状況でも試乗イベントを中止しないのがスバルらしい?)。

機械式AWDは頼もしいと感じると同時に、アクセルペダルを踏み込んだ際にラグ(応答遅れ)がなく期待どおりの力を出してくれるので、ドロドロの悪路ではとくに扱いやすい。オンロードだけでなくオフロードでも、モーターが主体となって力を出すストロングハイブリッドのありがたみを実感した。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…