DUNLOP DIREZZA β02の強みを引き出した石川が躍動! 2戦連続単走2位で追走でも100点を叩き出す【D1GP TOKYO DRIFT】

前戦のオートポリスから2週間。東京・お台場の特設コースで2024年グランツーリスモD1GPシリーズ最後の2連戦が開催された。サーキットと違って凹凸が大きく、砂も多く、μが低いお台場の路面だが、そこは条件を選ばないDIREZZA β02の強みが発揮され、石川はあと一歩で単走優勝という走りを見せたほか、2戦連続でベスト8に入る活躍でシーズンを締めくくった。

Photo:サンプロスD1事務局

インターバルが2週間しかなかったこともあり、URAS RACINGの野村圭市、広島トヨタ team DROO-Pの石川隼也と松川和也のダンロップ勢3台に大きな仕様変更はなし。まず金曜日は公式練習が行われた。この日は松川が乗るHT・DUNLOP・85(AE85)に電子制御系統のトラブルが出たがそれも対処でき、そのほかに大きな問題はなく終了した。

コースは昨年のレイアウトに近いが、2コーナーが遠くなり、1コーナーから2コーナーの距離が長くなった。これによって、1コーナー進入で角度をつけきってしまうと2コーナーまでドリフトを届かせることが困難になるため、1コーナー進入では鋭く振り出しつつもやや抑えめのドリフトアングルにとどめ、その先で2コーナーに向けて角度を増していくというむずかしいコントロールが求められる。HT・DUNLOP・86(GR86)に乗る石川は、昨年このお台場で単走優勝しているが、今年の練習日も「コツをつかんだかもしれない」(松岡監督)という手応えで、まずまずの得点を出していた。

走行前は「点が出るかどうか不安」とも話していた石川だが、練習走行では高得点を連発していた。

第9戦が行われた土曜日の天候は晴れ。路面温度もこの時期にしては低くなかったが、このお台場特設コースはふだん駐車場として使われている場所なので、サーキットのようにきれいな舗装ではなく、凹凸も多ければ砂も多少浮いていて路面のグリップは低い。それでも、条件を選ばず安定したグリップと扱いやすさを発揮してくれるDIREZZA β02のおかげでドライバーはナーバスにならずに本番に臨める。

第9戦単走。松川はドリフト中の角度安定性で点を稼いだものの振り出しと振り返しで点が伸びず、また1本目に振りすぎてスピンしてしまった野村は2本目にはドリフトが戻ってしまって追走進出はならなかった。

しかし石川は1本目にクイックな振りからピタッと姿勢を止めてきれいに旋回し、98.99の高得点をマーク。そして2本目には勢いのある振り出しから大きな角度をつけ、アクセル全開度の高いドリフトを成功させて99.26点を出す。先に走っていた川畑の99.50点は超えられなかったが、2位で単走を終えた。

単走を2位で通過した石川。求められる走りを高次元で安定して出せていた。
振り出しが安定せず、2本とも大きなミスをしてしまった野村。追走進出はならなかった。

土曜日午後に行われた第9戦の追走トーナメント。石川の対戦相手はRX-7に乗る松井だ。1本目は後追いの松井にまずまずドリフトを合わせられてわずかに松井リード。2本目は後追いの石川が後半にかけて松井との距離をどんどん縮めていき大きく接近ポイントを獲得して逆転。ベスト8に進出した。

次の対戦相手は昨年のチャンピオン藤野。1本目は先行の石川も98.9点を出すいい走りを見せたが、藤野にきっちりドリフトを合わせられてしまう。2本目は後追いの石川が飛び込みでは藤野に食らいついていたものの、しだいに離されてしまって逆転ならず。石川はラウンド6位で終わった

追走トーナメントのベスト16で松井を破った石川。追走に入ってからも安定したレベルの高い走りを繰り返した。

最終戦が開催されたのは第9戦の翌日の日曜日。コースは前日と同じだ。この日の天候は曇りで競技中わずかに小雨が降る場面もあった。ウエット路面でも路面温度が低くても安定して性能を発揮してくれるDIREZZA β02のユーザーにとっては望むところだったが、けっきょく極端な天候の変化はなかった。

朝のチェック走行では2本しか走行できないにもかかわらず石川は99.32点を出し、安定して高得点が取れることを証明する。

単走決勝。石川は1本目まずまずの振りから、きれいな角度コントロールを見せて99.25点という、その時点でのトップスコアを出す。もう追走進出は確定的だ。そして2本目。こんどはさらに1コーナーの角度を増やし、タイミングよく角度増しをすると2コーナーで大きな角度を見せて99.69点をマーク。トップスコアを更新した。けっきょくシルビアに乗る中村が100.07点を出したために抜かれてしまったが、石川は2日連続で単走を2位通過した。

いっぽう松川は1本目は振り出しの点が伸びず、2本目は通過指定ゾーンを外してしまうなどして敗退。2本目にはまずまずの走りを見せた野村も、最後にコースリミット超過で減点されるなどして敗退となった。

ドリフト中の角度や安定性では高得点をとっていた松川だが、キレのある振り出しができず点が伸びなかった。
完璧な組み立てでスコアを更新し、一時はトップに立った石川。最終戦も単走は2位だった。

野村は、「置きに行く走りをすれば、絶対後悔しちゃうんで、思いきって走りました。自分的にはコースに収まってたつもりだったんですけど、ちょっと出てたっすね。ドライバー的にはすごい気持ちよかったんで、力を出しきれなかったという悔しさはないです。出しきって、コースも出ちゃってっていう感じだったんで、来年につなげれる形で終われたかなと思うんですけど、1回ぐらい追走に残りたかったですね。

今シーズンあと1歩届いてないんですけど、そのあと1歩が何かっていうのも、なんとなくはわかってるんで、ちょっと来年に向けて、このオフシーズンのあいだに、クルマもそうですけど、ドライバーもいっぱい練習して。来年『なんか変わったね、圭市』っていわれるような姿を見せれるように。頑張ります。

ただ、お台場のグリップが高くない路面でもDIREZZA β02は非常に安定してましたね。途中で引っかかるるとか、極端に滑るとか、そういうのがなく、安定してずっと高いクリップを保ってくれてました。

クルマは今シーズン開幕に投入してから、だいぶ熟成されてきたんですけど、足のセットはまだほかのトップの選手とはちがうと思うんですよ。そういうのも研究しつつ、タイヤの性能を100%引き出せるような足を作っていけたら、もっと高い車速も出せるし、もっと放り込んでも回っていけると思うので、そんな足と乗りかたを研究したいと思います」と語った。

今季がD1GPステップアップ初年度だった野村。あと一歩というラウンドも多かったが、ポイント獲得には至らなかった。

そして日曜午後に最終戦の追走トーナメントが行われた。石川の最初の対戦相手はシルビアに乗る田野。1本目先行の石川は安定した素晴らしい走りを見せるが、田野も進入から非常に近いドリフトで石川に合わせる。しかし最後のコーナーで田野が石川をプッシュしスピンさせてしまう。これで田野は大きく減点され石川がリード。2本目は石川も後追いから近いドリフトを見せて勝利した。

石川のベスト8での対戦相手は、前の対戦で破った田野のチームメイト横井だ。この前に降雨があり、路面はわずかに濡れていたが、1本目先行の石川はキレと安定を兼ね備えた走りで100点をマーク。しかし横井はその石川に近い距離できっちりドリフトを合わせてきたため、ポイントは横井にリードされてしまう。2本目後追いの石川は、2コーナーで横井との距離を詰めたものの、振り返したあとのヘアピンで後ろにまわってしまい、大きな接近ポイントはとれなかったため逆転には至らず終了。最終戦の順位は6位となった。

ベスト16では田野を倒した石川。ベスト8では見事な先行の走りを見せたが、勝負では負けてしまった。

大会後、広島トヨタ team DROO-Pの松岡監督は、「この2戦は合格点だとは思います。ドライバーもメカニックもがんばりました。追走での100点は気持ちよかったね。それでうちは変な駆け引きもしないから合わせやすいんだろうね。横井には気持ちよく腹に入られましたね(苦笑)。でも今シーズンどうなることやらというスタートだったから、よくここまで来てくれました。

それに、今日の得点を見ていただければわかるとおり、朝の路面温度の低いときから、追走のハーフウェットのときまで、DIREZZA β02はものすごいワイドに使えるんで、今日の石川は練習走行から本番まで99点を割ったことがない。これがやっぱりね、ダンロップタイヤの強みだと。さまざまな路面に対してワイドに性能を発揮できる部分っていうのがやっぱりダンロップが特に優れている部分で、それもそれはもう間違いなく今日の1日で実証できたと思います。

まぁ、昨日も今日も2位で、どんだけ2位が好きなんや。ずっと2位だ。オートポリスの第7戦も。それをあとひとつ上げて。でも、シーズン最初の追走に残れないところから、ベスト16、ベスト8って着々と来てるんで、そこはね、ここからが楽しみしかないんで、来年も期待してください」こう話してシーズンを締めくくった。

最後の2連戦は石川がいずれも単走2位、そして追走6位という成績。そしてそれ以上に、キレと安定を兼ね備えたドリフトで99点以上を連発していた石川の走りはDIREZZA β02のグリップの高さと扱いやすさ、そして条件を選ばないオールマイティな性能を証明して2024年シーズンを終えた。

シーズン後半にかけて上り調子で成績を残せたことにまずまず満足の松岡監督。

キーワードで検索する

著者プロフィール

MotorFan編集部 近影

MotorFan編集部