スタイリングをテコ入れした販売絶好調モデル「トヨタ・ヤリス クロス」【最新コンパクトカー 車種別解説 TOYOTA YARIS CROSS】

「ヤリス兄弟」の中では3ナンバーサイズのワイドな「トヨタ・ヤリス クロス」。共有点は多いもののSUVらしい地上高と高い積載能力はヤリスシリーズでもオールマイティさで大きなポイントになる。24年1月の一部改良ではエクステリア、インテリアともトレンドを取り入れ、先進運転支援機能は最新版。2タイプのパワートレインと広い価格帯でユーザーにマッチする選択ができるだろう。
REPORT:青山尚暉(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:神村 聖 MODEL:新 唯

安全装備や内装仕様が超充実 後席居住性に積載力も魅力大

コンパクトハッチバックモデルのヤリスとともに販売絶好調なトヨタのコンパクトクロスオーバーモデルがヤリスクロス。その車名から、ヤリスをクロスオーバーモデルに仕立てただけのクルマがヤリスクロスと思いがちだが、それは大間違い。

エクステリア

扱いやすいコンパクトなサイズ感と、SUVらしい積載性を両立。直近の一部改良で、アッパーグリルのデザインも、より力強いイメージとなった。写真のマッシブグレーも新色として追加。最小回転半径は5.3m。

ヤリスとホイールベース、パワーユニットなどを共用するものの、こちらは全長4180㎜×全幅1765㎜×全高1590㎜の3ナンバーサイズとなり(ヤリスは5ナンバーサイズ)、最低地上高170㎜とともに、かなり本格的な4WD機能(ガソリン車)を備えているほか、リヤオーバーハングの延長によってアウトドアライフなどで不可欠な大きな荷物を積載可能とする大容量かつ使い勝手の良い荷室を実現。つまり、ヤリスとはまったく別仕立となるのだ。しかも価格は「X」のガソリン/FF車が190万7000円〜なのだから、売れないわけがない(HVでも229万5000円〜)。

乗降性

2024年1月には一部改良が施され、エクステリアはより力強いアッパーグリルにデザイン変更。インテリアではメーター部の7インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイを標準装備し、コンソールボックス付きフロントソフトアームレストを新採用(いずれも「X」、「U」を除く)。最新のディスプレイオーディオにはコネクティッドナビを5年間標準付帯(「X」を除く)して利便性を高めている。さらに先進運転支援機能のトヨタセーフティセンスは最新版となり、プリクラッシュセーフティの検出対象範囲を交差点での出会い頭時の車両や自動二輪車へ拡大している。

インストルメントパネル

一部加飾をガンメタリックに変更し、「X」以外には最新のディスプレイオーディオを標準装備。コネクティッドナビが5年間標準付帯される。メーターにも一部を除いて7.0インチTFTカラーディスプレイが採用されるなど、洗練された。

もっともホイールベースがヤリスと同じため、パッケージは前席優先。後席の居住スペースは身長172㎝の筆者がドライビングポジションを決めた背後に座ると頭上に120㎜、膝まわりに115㎜のミニマムなスペースでしかないが、シート位置がフロアから高めにセットされ、座面長がたっぷりあるため、アップライトかつ自然な姿勢で着座でき、長時間の着座も苦になりにくい。荷室はリヤオーバーハングの延長によって2段デッキボードを下段にセットすればアウトドアグッズはもちろん、大型スーツケース2個、またはゴルフバッグ2セットを積み込める十二分な積載力を誇っている。

居住性

そんな、意外なほど使えるヤリスクロスのパワーユニットは1.5ℓガソリンと1.5ℓエンジン+2モーターのHVが揃い、それぞれにFF/4WDを用意。しかも燃費性能はHV「X」のFFで30.8㎞/ℓを誇る好燃費車でもある。価格的にも魅力あるガソリン4WD車の走りは軽快感と全高、着座位置の高さを感じさせない水平感覚に徹した走行性能が好ましい。ただし動力性能は3気筒感こそほぼないものの、かなり穏やか。エンジンを回したときに車内にノイズが充満する騒々しさも気になる点。

うれしい装備

「Z」系と「GR SPORT」にはハンズフリーパワーバックドアをオプション設定。荷物を持ったまま足の操作でバックドアを自動開閉できる。停止位置メモリー機能、予約ロック機能付き。
月間販売台数      8221台(23年11月~24年4月平均値)
現行型発表       20年8月(一部改良 24年1月)
WLTCモード燃費     30.8 ㎞/ℓ※「X(ハイブリッド)」のFF車

ラゲッジルーム

一方、HVのFF車は高い燃費性能はもちろん、出足のEV走行(120km/hまで可能)によるスムーズさ、全体的な静かさ、モーターアシストによるトルキーな動力性能の余裕、ガソリン車に対して50㎏の重量増がもたらす、ガソリン車とは別格の落ち着き感ある乗り心地の良さが魅力となる。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.159「2024-2025 コンパクトカーのすべて」の再構成です。

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