世界ラリー選手権(WRC)は11月21日から24日の4日間にわたり、2024年シーズンの最終ラウンドとなる第13戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2024』を開催する。
WRC日本ラウンドは2022年11月、12年ぶりにラリー界最高峰シリーズのカレンダーに復帰。以前は北海道でグラベル(未舗装路)イベントとして開催されてきたが、同年からは愛知県と岐阜県を舞台としたターマック(舗装路)イベントとなった。
今年のラリージャパンも昨年と同様、ラリーの中心となるサービスパークは愛知県豊田市の豊田スタジアムに置かれる。また、同スタジアム内には昨年からレイアウトが変更されたスーパーSSが敷設される。
ステージ数21、SSトータル距離302.59km、総走行距離1024.34kmで争われる本イベントは、21日にスタート。この日は午前9時にシェイクダウンが開始されると、午後5時から豊田スタジアムで執り行われるセレモニアルスタートを経て、スーパーSSでのSS1で競技が開始。翌22日からは本格的な走行が始まり、山間部の舗装されたワイディングロードでの走行が中心となる。
今年のラリージャパンには6クラス・44台が参戦。そのうち、総合優勝を争うWRCクラスにはTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(トヨタ)とHyundai Shell Mobis World Rally Team(ヒョンデ)が3台ずつ、M-SPORT Ford World Rally Team(Mスポーツ・フォード)が2台の合計8台が名を連ねている。
トヨタからは今シーズンを通して戦ってきたエルフィン・エバンスと勝田貴元に加え、8度のWRC王者であるセバスチャン・オジエがエントリー。ヒョンデはティエリー・ヌービルとオィット・タナック、アンドレアス・ミケルセンの3名、Mスポーツ・フォードはアドリアン・フォルモーとグレゴワール・ミュンスターを起用している。
また、伝説的な日本人ラリーストである新井敏弘やその息子で今季の全日本ラリー選手権のJN1クラスを制した新井大輝、さらに1994年にトヨタのドライバーとしてWRC王者に輝いたディディエ・オリオールがFIT EASY RACINGからトヨタGRヤリスを駆って参戦するなど、注目選手も多くエントリーしている。
ドライバー選手権はヌービルに優位、トヨタには自力戴冠の可能性アリ!
2024年シーズンのWRCはこれまでの12戦を終えて、ドライバー、コ・ドライバー、マニュファクチャラーのどの選手権もまだ決着しておらず、ラリージャパンがタイトル決定戦となる。
ドライバーズランキングでトップに立っているのは、今季2勝をマークする活躍を見せて225ポイントを獲得しているヒョンデのヌービル。それを、2019年にトヨタ陣営でWRC王者に輝き、現在はヒョンデでヌービルの僚友となっているタナックが25ポイント差で追っている。トヨタ陣営のドライバーをはじめとした他のライバルは、前戦セントラル・ヨーロピアン・ラリー終了時点でタイトル獲得の可能性が潰えている。
WRCでは2024年、ポイントランキングが大幅に変更された。得点機会は週末で3つあり、土曜日終了時点の総合上位10名(順に18、15、13、10、8、6、4、3、2、1ポイント)、日曜日(スーパーサンデー)のみのタイムによる上位7位(順に7、6、5、4、3、2、1ポイント)、パワーステージでの上位5名(順に5、4、3、2、1)にそれぞれポイントが付与される。しかし、得点が計上されるのは、ラリーを最後まで走りきったもののみとなる。
ポイントの計算はこれまでよりもだいぶ複雑となったが、日曜日の結果だけでも最大で12ポイントが稼げるようになったと同時に、土曜日までに大量のリードを持っていても最大ポイント(30ポイント)を獲得するには最後まで全力で走ることが求められるようになった。
今季の得点システムを踏まえると、数字的にはやはり、自力でタイトル獲得を決められるヌービルが優位な立場にあることは間違いない。25ポイントのアドバンテージを持つヌービルは、仮にタナックがラリージャパンで最大得点を稼いだとしても、最低6ポイントを稼げば良いためだ。この6ポイントは、最終日に優れたパフォーマンスを発揮できれば十分に獲得可能な数字だ。
状況次第では、最終的なポイントでヌービルとタナックが並ぶという可能性もある。たとえば、ヌービルがノーポイントに終わり、タナックが土曜日までとスーパーサンデーでともに1位、パワーステージで6位以下の場合などは、両者225ポイントとなる。
シーズン終了時点で同点となった場合、当該シーズン中の上位獲得回数が参照される。ただし、これまでの12戦において、ヌービルとタナックはともに優勝2回、2位1回、3位3回と、トップ3の獲得回数は同じ。4位入賞回数はヌービルが3回、タナックが2回で、ここで差がついている状態だ。
タナックは最低でも25ポイント以上を獲得し、かつ3位表彰台獲得以上の結果を求められる一方で、ヌービルとしては仮にラリー序盤で出遅れたとしても、日曜日のみの結果で6ポイントを稼げば悲願の初戴冠を決められる。ヌービルが数字的にも精神的にもアドバンテージを持っていると言えるだろう。
一方のマニュファクチャラー選手権は、トヨタとヒョンデの一騎打ちとなっている。第12戦終了時点でヒョンデが526ポイントでリードしており、511ポイントのトヨタが追うという構図だ。
マニュファクチャラーズ選手権においては各陣営がノミネートしたドライバー3名のうち、上位2名がポイント獲得対象となる。1ラウンドで稼げる最大ポイントは合計55点、ポイント差にして18点をひっくり返すことができるため、トヨタは15ポイントのビハインドを背負っているものの、自力でマニュファクチャラーズ選手権4連覇を掴む可能性はしっかりと残っている。
前述の通り、今季のWRCを戦うチーム/ドライバーは、多くのポイントを稼ぐためには最後までラリー全力で戦い抜かなければならない。そして、タイトル争いを展開するトヨタとヒョンデのドライバーは特に、強いプレッシャーに晒されながらも最大限のパフォーマンスを発揮し続ける必要に迫られている。
2024年シーズン最終戦ラリージャパンは最初から最後まで見逃せない戦いが展開されそうだ。