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■キープコンセプトで正常進化した3代目キューブ
2008(平成20)年11月26日、1998年のデビュー以来、個性的でボクシーなハイトワゴンとして人気を獲得した日産自動車「キューブ」の3代目がデビューした。基本的には2代目のキープコンセプトだが、キューブの特徴である広い室内および荷室スペースをさらに向上させた。
キュートなスタイルと使い勝手の良さで大ヒットした初代キューブ
初代キューブは、その名の通り立方体フォルムのコンパクトなハイトワゴンとして1998年に誕生した。その独特なスタイリングは1990年頃に日産が進めていた「Be-1」や「フィガロ」といったパイクカーを彷彿させる、ちょっとレトロな雰囲気があった。
ホイールベースはマーチと同じだが、マーチより全幅を20mm広げ、全高はマーチより200mm高く設定したロング&ハイルーフによって、広い車室内と荷室スペースを実現。パワートレインは、最高出力82psの1.3L直4 DOHCエンジンと4速ATおよびCVTの組み合わせ、駆動方式はFFである。
キューブは、使い勝手を重視したシンプルなデザインによって、若者や若いファミリー層から人気を獲得。さらに114.8万円から入手可能な手頃な価格も後押しして大ヒット。初期には月販1万台以上を販売し10ヶ月で10万台を達成、登録台数1位を記録したこともあった。
さらに広くて快適な室内空間を実現した2代目
好調な販売を続けていたキューブは、初めてのモデルチェンジで2002年に2代目に移行。開発コンセプトは、“マジカルボックス”で、これはコンパクトな外観からは想像できない広い室内スペースと充実した収納装備を持つ魅力的な箱を意味する。
初代よりもさらにボクシーさを強調したキュービックなスタイリングと親しみのあるフロントマスク、さらに左右非対称デザインと横開きのリヤゲートなどで個性をアピール。ホイールベースを70mm延長し、ロング&ワイドルーフの採用により開放感のあるヘッドルームを実現。さらに、使い勝手の良いラゲッジや多彩な収納スペースも確保した。
パワートレインは、最高出力98psの1.4L直4 DOHCとCVTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFをベースに電動4WDの”e・4WD”も設定された。e・4WDは、FFをベースに後輪をモーターで駆動する電気式4WDで、通常走行はFFだが前輪がスリップすると後輪が駆動して4WDに切り替わる。
さらに翌2003年には、キューブに対して全長を150mm、ホイールベースを170mm延長した3列シート7人乗車の「キューブ・キュービック(cube3)」が追加されて人気を加速、初代ほどではないが2代目も順調に販売を伸ばした。
正常進化してグローバル展開を始めた3代目
初代、2代目と人気を獲得したキューブは2008年に3代目へとモデルチェンジした。先代キューブの特徴だった左右非対称デザインと横開きのリヤゲートを継承し、全体的なスタイリングも2代目のイメージを踏襲した。
またキューブの強みである室内スペースについては、2代目から100mmホイールベースを延長したことで室内空間をさらに拡大。リヤシートのニールームは45mm拡大、ヒップポイントは70mm後退し、リヤシートのヒップポイントを前席より64mm高めたシアターレイアウトが採用された。
パワートレインは、最高出力109ps/最大トルク15.1kgmの1.5L直4 DOHCエンジンとCVTの組み合わせ。駆動方式は、先代同様FFと電動4WDの”e・4WD”が設定されたが、e・4WDはモーターの出力アップやCVTとの協調制御などの改良が加えられた。
3代目は、キープコンセプトで正常進化だったが、先代までと大きく異なったのは、キューブとしては初となるグローバル展開を始めたこと。キューブは、左右非対称のデザインが特徴だったが、左ハンドル仕様を製造するにあたり、ハンドルに合わせ左開きと右開き2つのボディを作ることで対応した。
3代目も、それまでのキューブの魅力を昇華させて堅調な販売を続けたが、初代と2代目に比べて販売は右肩下がりとなってしまった。結局モデルチェンジすることなく、2019年にキューブは幕を下ろした。
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キューブ生産終了の理由のひとつは、ダイハツ「トール」、トヨタ「ルーミー」、スズキ「ソリオ」など人気のライバルに加えて、軽のスーパーハイトワゴンに市場を奪われたこと。さらに、海外展開が不調だったため、国内市場だけで勝負するのが困難という事情があったのだ。
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