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都会派高級SUVという新ジャンルを開拓したハリアー
1997年にデビューした初代ハリアーは、カムリをベースにモノコックボディの流麗なスタイリングと、セダンにも負けない広々とした快適な室内空間で高級感を演出。装備についても、ワイドマルチディスプレイ、オプティトロメーター、キーレスエントリーなどを標準化し、高級車の定番である本革シートも設定された。
一方、最低地上高は185mmを確保、アプローチアングル28度、デパーチャーアングル23度と、オフロード走行にも対応可能。パワートレインは、最高出力140psを発揮する2.2L直4 DOHCエンジンおよび220psの3.0L V6 DOHCエンジンの2機種と、電子制御3ATの組み合わせ、駆動方式はFFとセンターデフ式4WDが用意された。
高級セダンと4WDのいいとこ取りした高級SUVのハリアーは大ヒット。翌年に米国でもレクサス「RX」として発売され人気を獲得。オフロードを主戦場とする従来のSUVとは根本的に異なる都会派の高級SUVという新ジャンルを開拓したハリアーは、世界中のSUVに大きな影響を与え、続々と高級SUVが登場したのだ。
大出力モーターで燃費とパワーを向上させたハリアーHV
2003年に登場した2代目ハリアーは、ボディをひと回り大きくし、安全支援技術を盛り込むなど、さらに商品性を向上させて好調なスタートを切った。
そして、デビューから2年後の2005年に待望のハイブリッドモデル「ハリアーHV」を追加。ハイブリッドシステムは、211psを発生する3.3L V6エンジンに、プリウスの2倍以上のトルクを発生する167psのフロントモーターを組み合わせたTHS IIを採用。THS IIは、THSに対して出力と効率を向上させた進化版THSである。
さらに、リアにも68psのモーターを配置して、リアモーターを状況に応じて駆動させる電動4WD“E-Four”を採用。システム出力は272psで、V型8気筒の4Lエンジンに匹敵する動力性能を発揮することから、レクサスブランドでは「RX400h」と名付けた。一方、10・15モード燃費の17.8km/Lはコンパクトクラス並みで、世界最高水準を達成した。
車両価格は、標準グレード409.5万円、中間グレード441万円、プレミアムグレード462万円の3グレードが設定され、初代から続いた好調な販売をハイブリッドがさらに加速したのだ。ちなみに、当時の大卒初任給は19.7万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値はそれぞれ478万円/515万円/539万円に相当する。
前後輪の駆動力を最適化して走りも追求したE-Four
ハリアーで採用された電動4WDの“E-Four”は、2001年に「エスティマ・ハイブリッド」で初めて搭載された。通常のハイブリッドの前輪を駆動するエンジンとモーター/ジェネレーター(M/G)に加えて、後輪もM/Gで駆動する電動4WDである。
発進時や全開加速時には、前後のモーターが駆動する4WDで、エンジン出力をモーターがサポートして力強い発進加速を達成。また、悪路や雪路などで前輪がスリップした場合も、瞬時にリアモーターが駆動し4WDにして車体姿勢を安定させる。一方通常走行では、エンジンとモーターで走行するFF駆動のハイブリッド運転によって低燃費を実現する。
電動4WDは、エンジンの出力とは無関係に4輪の駆動力を制御できるので、より安定した走行性能が得られるのが特徴。プロペラシャフトなどが不要で車体設計の自由度が高く、燃費の向上も図れる。一方で、コスト高が課題だが、電動車が増えることで電動4WDも普及しつつある、将来有望な技術だ。
走行安全性を高める総合型安定システムVDIM
ハリアーHVのもうひとつの注目技術は、総合型安定システム(VDIM:Vehicle Dynamics Integrated Management)である。
VDIMは、走行安定性を確保するために走る・曲がる・止まるをABS(アンチロック・ブレーキシステム)、ブレーキアシスト、TRC(トラクションコントロール)、VSC(車両安定性制御システム)によって統合的に制御する方式である。
ABSは、ドライバーが急ブレーキを踏んだ際にタイヤをロックしないようにするシステム。ブレーキアシストは、ドライバーが急ブレーキを踏む際の力をアシストするシステム。TRCは、クルマが発進する際にタイヤの空転、VSCは雨天などで滑りやすい道路で横滑りを抑制するシステムである。
VDIMは、これらのシステムを統合制御し、優れた予防安全性や操縦性、走行安定性を確保し、例えば滑りやすい路面でも運転者の意図する通りの走行ラインを安定して走行できるのだ。
ハリアーHVが誕生した2005年は、どんな年
2005年には、トヨタ「ハリアーHV」以外にもトヨタ「ラクティス」、ホンダ「エアウェイブ」、ダイハツ「エッセ」、三菱自動車「アウトランダー」などが誕生した。
ラクティスは、クラストップレベルの広い室内スペースが売りのトールワゴン。エアウェイブは5ナンバーサイズのステーションワゴンだが1代限りで生産終了。エッセはミラベースの軽セダンで安価なエントリーモデル。アウトランダーはミドルサイズSUVだがこの時はPHEVでなくガソリン車のみである。
この年、レクサスブランドが日本で開業。当初のラインナップはGS(アリスト)、IS(アルテッツァ)、SC(ソアラ)の3モデルだった。また三菱自動車とダイムラー・クライスラーが提携を解消し、スバル(当時は富士重工業)がGMとの関係を解消した。
自動車以外では、中部国際空港が開港。愛知万博(愛・地球博)が開催され、日本初の磁気浮上式リニアモーターカー(リニモ)が会場までの一定区間で運行を始めた。JR福知山線で脱線事故が発生し、107名が死亡した。
また、ガソリン125円/L、ビール大瓶2 00円、コーヒー一杯450円、ラーメン560円、カレー670円、アンパン120円の時代だった。
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都会派高級SUVという新ジャンルを開発したハリアーに、さらなるパワーアップと燃費低減を実現したハリアーHV。優れた走破性が魅力のSUVながら低燃費を達成した、日本の歴史に残るクルマであることに間違いない。