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WRC撤退後のスバルのモータースポーツイメージを牽引した”ニュル”
WRCを撤退した後のスバルのモータースポーツイメージを牽引したのがニュルブルクリンク24時間耐久レースへの挑戦と、スーパーGT(GT300クラス)への参戦。
本書では特に辰己氏が長年指揮してきたニュルブルクリンク24時間耐久レース『STI NBR CHALLENGE』を、2008年から2024年まで年毎に詳細に振り返る。
『STI NBR CHALLENGE』を支えた各人各社の辰己氏への言葉も数多く収録されており、辰己氏が率いる『STI NBR CHALLENGE』をどのように見ていたのか、どのように関わってきたきたのかがつぶさに語られている。
主題は『STI NBR CHALLENGE』ではあるものの、自動車開発者としてスバル/STIで過ごしてきた辰己氏の54年間や、その哲学・理論についても迫っている。そこには初代レガシィがあり、サンバーがあり、STIコンプリートカーがある。
また、結びとして現在の日本のモータースポーツで圧倒的な存在感を示す「モリゾウ選手」がメッセージを贈っている。
辰己英治氏といえば初代レガシィとコンプリートカー
辰己氏の経歴において、初代レガシィの開発に携わったことはこれまでもさまざまなメディアで取り上げられてきた。本書では勇退した今だから言えることにも踏み込んでおり、これまでに無い内容になっている。
辰己氏がスバルからSTIに移って手掛けたコンプリートカーについても、特に印象深い3台をピックアップして辰己氏と共に振り返りかえる。さらに、アーカイブではSTIコンプリートカーを網羅しており、どのようなクルマがあったのかとてもわかりやすい。
貴重な写真も掲載!初代レガシィによるN1耐久参戦秘話は必見
なかでも見どころはP130から始まる特別対談。辰己英治氏と共に戦ったこともあるレーシングドライバー/モータージャーナリストの桂伸一氏、スバルチューナーとして有名なプローバに所属した松本晴比古氏が、1990年代初頭に初代レガシィでN1耐久レースに参戦したことを振り返る。
初代レガシィといえばWRCを筆頭としたラリーやダートトライアルといった未舗装競技のイメージが強いが、耐久レースとはいえサーキットレースに参戦し、時にスカイラインGT-R(R32)と伍して戦っていたことは、今となってはあまり知られていない。
特に対談では桂氏が持参した貴重な当時の写真も開陳され、本書でも同ページには多数が掲載されている。当時のN1耐久レースの情報は今となってはなかなか乏しく、対談の内容も写真も非常に興味深い内容だ。
ファン必見の充実したコンテンツ
他にも辰己氏とスバル/STIにまつわる様々なトピックが収録されており、スバルファンであれば隅々まで楽しめることは間違いない。エンターテインメントとしてはもちろん、資料性も高い1冊になっており、ぜひお手元に置いておかれることおすすめしたい。
Mr.SUBARU/STI 辰己英治の軌跡(サンエイムック)
発売日:2024年12月9日
価格:2600円
発行:三栄
CONTENTS
P2 PROLOGUE ~カリスマの引退~
P8 ラストインタビュー「会社員人生に悔いなし。面白い日々でした」
P12 The HISTORY of NBR CHALLENGE 2008-2024
P52 辰己英治の車両開発理論考察「教科書を疑え」
P56 SUBARU専務取締役 藤貫哲郎が語る「辰己流エンジニアリング」
P58 日本で一番いいワゴンを作る 開発コード「44B」
P62 再録・KYOSHO MINI CAR & BOOK対談「ラダーフレームがクルマの基本」ボディ作りはサンバーから学んだ
P66 モータースポーツと車両開発
P72 STIコンプリートカー開発ストーリー
P84 STI Complete Car Archive
P89 辰己イズムの象徴「フレキシブルパーツ」とは?
P90 フレキシブルタワーバー販売10万本への道のり
P92 レーシングドライバーと辰己英治
井口卓人&山内英輝/佐々木孝太/久保凜太郎
カルロ・ヴァン・ダム/ティム・シュリック
P101 マルセル・エンゲルスの思い出
P102 エンジニア4人の証言
小澤正弘/沢田拓也/坂田元憲/市澤 眞 P106 プローバ代表 吉田寿博インタビュー
P108 モータースポーツマーケティングと辰己英治
P110 SUBARU/STIの伝統 ディーラーメカニックの歴史
P114 サプライヤーと辰己英治
DUNLOP/BBS/FUJITSUBO/東亜工業/ENDLESS/BMC/MOTUL
P130 [特別対談]辰己英治×桂伸一×松本晴比古
P136 ドイツの仲間から届いた辰己総監督への感謝
P138 スバルテクニカインターナショナル株式会社代表取締役社長 賚寛海インタビュー
「一台を見る」ことの意味
P140 モリゾウから辰己英治へのメッセージ