やっぱりお買い得! スズキ・フロンクス、見た目以外もしっかり作り込まれている

今年10月に発売されたばかりのスズキのコンパクトSUV、フロンクス。全長4m以下の「扱いやすいクーペスタイルSUV」、そして価格254万1000でほぼフル装備の抜群のコストパフォーマンスで、スマッシュヒットとなっている。果たしてフロンクスは本当にお買い得?
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

装備充実、質感も安っぽくない

スズキ・フロンクス 全長×全幅×全高:3995mm×1765mm×1550mm ホイールベース:2520mm 月販販売目標は1000台だが、出だしは大きくそれを上回っている。

「これお買い得じゃない?」というのが、筆者の身近にいる人たちのスズキ・フロンクスに対する感想だ。スマホやPCで見るより、実物を見たり、触れたりしたときに一層その思いを強くする傾向があるようだ。筆者も同じである。

実物のフロンクスは存在感があり、質の高さを感じさせる。表現を変えると、少しも安っぽくない。全長は4mを切っている(3995mm)と聞くと、「そんなに短いの?」と疑いたくなるほど立派に見える。身長184cmの筆者が前席でドラポジをとった状態で後席に座っても充分な居住性が確保されているし、ラゲッジルームは日常の買い物にも旅行にも不便を感じない程度の容量が確保されている。

セレスティアルブルーパールメタリック

パーキングブレーキはハンドレバー式や足踏み式ではなく電動(EPB)だし、スマホのワイヤレス充電器は標準でついており、リヤにはUSBのポート(タイプA&C各1個)が設置されている。前席シートヒーターも標準装備。灯火類はリヤのウインカーも含めてすべてLEDだ。アダプティブクルーズコントロール(ACC)や車線維持支援機能、交差点での出会い頭や右左折時に歩行者や自転車を検知し事故による被害を軽減する機能や誤発進抑制機能など、運転支援や予防安全技術も充実している。

インテリアもエクステリアと同様で、図抜けた上質さはないけれども、少しも安っぽくない。エンジンは1.5L直列4気筒自然吸気で、これに6速ATを組み合わせる。2WD(FF)のほかに4WDの設定もあり、どちらもワンプライス。2WDは254万1000円、4WDは273万9000円だ。視覚を通じて感じる質の高さと装備の内容を照らし合わせて考えると、「フロンクスはお買い得」という結論に達する。

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「やっぱりお買い得! スズキ・フロンクス、見た目以外もしっかり作り込まれている」の1枚めの画像

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「やっぱりお買い得! スズキ・フロンクス、見た目以外もしっかり作り込まれている」の2枚めの画像

1.5Lの自然吸気+6ATは常用域ではストレスなし

エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:K15C 排気量:1460cc ボア×ストローク:74.0mm×84.9mm 圧縮比:11.9 最高出力:99ps(73kW)/6000rpm 最大トルク:134Nm/4400rpm 燃料:無鉛レギュラー 燃料タンク:37L
WA06A型交流同期モーター 最高出力:2.3kW/800-1500rpm 最大トルク:60Nm/100rpm

走りはどうか。海浜幕張駅(千葉市美浜区)至近の会場を拠点に、海沿いの幹線道路を走ったり、稲毛海岸駅周辺の碁盤の目に整備された市街地を走ったり、高速道路(東関東自動車道)を走ったりした。

海岸沿いの道路では信号が青になった途端、中速域と言っていい車速までのダッシュを求められるが、フロンクスはエンジンをうなるほど回さなくても流れに乗ってくれる。低回転域から充分な力を出してくれるので、発進〜常用域でのストレスがない。高速道路では、本線への流入で強めの加速を求めたり、追い越しを早めに済ませたりしたいシーンでエンジンがうなりを上げるが、1.5Lの自然吸気エンジンであることを考えれば妥当だ。

タイヤサイズは195/60R16 グッドイヤー ASSURANCE TRIPLEMAX2 ブレーキはFベンチレーテッドディスク Rがディスク

好みに合う、合わないはあるだろうが、筆者には減速時の制御が絶妙に感じられた。減速時は車速の低下に合わせてダウンシフトし、エンジンブレーキを徐々に強くしていく。空走感がないため安心感につながるし、車速のコントロールがしやすい。

大規模施設内の荒れたアスファルト路面を微低速で走行するシーンでは乗り心地に張りの強さを感じたが、中〜高車速でうねりのある路面を走るシーンではしなやかな乗り味に終始し、「この瞬間、気持ちいい!」と感じた。

開発にあたった技術者によると、フロンクスは新型スイフト(2023年12月発売)から変えた走りのコンセプトを受け継いでいるという。先代スイフトまでは荷重移動でノーズを沈み込ませてクッと曲がる仕立てとしていたという。新型は車体剛性を上げつつ主にダンパー減衰力のセッティングにより、運転席の自分を中心に、例えて言うならミズスマシのようにスイスイ動くような仕立てとした。スイフトのその動きをベースに、より乗りやすく仕立てたのがフロンクスだという。

別の表現を用いれば、荷重移動に持ち込まなくてもハンドルを切れば即座に反応する、どんなドライバーが運転しても破綻しない乗り味ということになる。これは、緊急回避的なシーンも想定してのことだ。その背反で、ひび割れたアスファルト路面はやや苦手となっているようだ。一般道、あるいは高速道路で定常で走っていたり、ワインディングロードを自分のペースで走ったりするようなシーンで、とくに心地良く感じる仕立てとなっている。

スズキ・フロンクス(FF 6AT)車両価格:254万1000円
FFモデルのWLTCモード燃費:19.0km/L
 市街地モード15.1km/L
 郊外モード19.3km/L
 高速道路モード21.2km/L
車両重量は4WDよりも60kg軽い1070kg

4WDの設定があるのもいい

スズキ・フロンクス(4WD 6AT)車両価格:273万9000円 ボディカラーはオピュレントレッドパールメタリック×ブラック2トーンルーフ(5万5000円)

4WDの設定があるのもフロンクスの特徴だ。いまどき4WDの設定自体が貴重だという側面もあるのだろう。初期受注ではスズキの予想を超え、4割程度のユーザーが4WDを注文しているという。4WDシステムはアクティブに前後トルク配分を制御する電子制御カップリングではなく、前輪のスリップに対してパッシブに反応するビスカスカップリングを採用した。

4WDはビスカスカップリング式を採用する

4WDを設定するからにはきちんと機能させなければ意味はない、というのがスズキの4WDに対する考え方だそう。だから、振動は出やすくなってしまうものの(必ず出るというわけではない)、イニシャトルクを高めた仕様としている。電子制御カップリングに比べて効きが弱いイメージのあるビスカスだが、効き勝手な方向でセッティングしているということだ。

どういう効果があるかというと、駐車している間に雪が降り続けると、タイヤのまわりに雪が積もって段差が生まれる。発進時はその段差を乗り越えなければ脱出できない。こういう状況のときに一発で出られるような特性を目指して作り込んでいる。「安心と安全を買うつもりで4WDを選んでいただきたい」というのが、スズキ側からのメッセージだ。

見た目では判断できない走りのフィーリングや“質”の部分に関してもしっかりできており、その部分も含めてフロンクスはお買い得に感じられる。

「サポカーS ワイド」、国土交通省による「ペダル踏み間違い急発進抑制装置(PMPD)認定車」に該当する。
スズキ・フロンクス(4WD 6AT)
全長×全幅×全高:3995mm×1765mm×1550mm
ホイールベース:2520mm
車重:1130kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:K15C
排気量:1460cc
ボア×ストローク:74.0mm×84.9mm
圧縮比:11.9
最高出力:99ps(73kW)/6000rpm
最大トルク:134Nm/4400rpm
燃料:無鉛レギュラー
燃料タンク:37L
WA06A型交流同期モーター
最高出力:2.3kW/800-1500rpm
最大トルク:60Nm/100rpm
トランスミッション:6速AT
WLTCモード燃費:17.8km/L
市街地モード14.4km/L
郊外モード17.9km/L
高速道路モード19.8km/L

車両価格:273万9000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…