【タイモーターエキスポレポート】

スズキ・セレリオは軽自動車以上スイフト未満のコンパクトカー!装備も仕様もとにかくシンプル!このアナログさがどこか懐かしい……

微笑みの国、タイの首都バンコクにて2024年11月28日~12月10日の期間で国際モーターショー「第41回モーターエキスポ2024」が開催された。タイは、日系ブランドが大きなシェアを持つ日本車大国でもある。そこで出会った日本では出会えない日本車を紹介したい。
REPORT:大音安弘(OHTO Yasuhiro) PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)/SUZUKI

3代目デビュー後もタイでは2代目が健在!

2024年には日本の自動車メーカーが相次いでタイでの現地生産からの撤退計画を表明したことは悲しいニュースであるが、まだまだ日本車が大きなシェアを持つ市場である。そのスズキの現地エントリーカーが、「セレリオ」だ。

タイで生産されるスズキのエントリーコンパクトカー「セレリオ」は、全車5ドアハッチバックだ。

世界的には3世代目が登場しているセレリオだが、現地生産を行っているタイでは2代目が現役だ。その2代目セレリオは2013年の第30回モーターエキスポで世界初公開されたコンセプトカー「A:Wind」をベースに生まれたタイと縁が深いモデルなのだ。そして、2014年からタイのエコカープロジェクトの適合車として、現地生産と販売が開始されている。

2021年に登場したインド生産の3代目セレリオ。
2代目セレリオのベースとなったA:Wind Concept。

2代目セレリオは、インドでも生産されていたほか欧州にも輸出されていたが、他の仕向け地モデルとの大きな違いはATにあった。インドや欧州向けは5速MTベースの「AGS」だったのに対して、タイ仕様は副変速機付きのCVTとしていた。これはタイでのAT普及率の高さに配慮し、より自然な変速が好まれると判断したようだ。

タイ向けのセレリオは、ATが副変速機付きCVTとなるのが大きな特徴だ。

コンパクトボディにシンプルなグレードとパワートレーン構成

セレリオは欧州でいうAセグメントカーなので、かなりコンパクト。全長3600mm×全幅1600mm×全高1540mmと、ハッチバックとワゴンという違いこそあるものの、日本の現行スズキ車と比べてみるとクロスビーをひと回り小さくしたサイズ感。

軽セダンを彷彿させるコンサバなデザインだが、ガラスエリアは最大化されているので、室内も快適そうだ。
車名セレリオクロスビーアルト(非ハイブリッド)
全長3600mm3760mm3395mm
全幅1600mm1670mm1475mm
全高1540mm1705mm1525mm
ホイールベース2425mm2435mm2460mm
車重820kg-835kg960kg(FF)680kg(FF)
サイズ比較:セレリオ/クロスビー/アルト

そのビジュアルはひと昔前のアルトを彷彿させるもので、ボディスタイルは無駄をそぎ落としたようなシンプルさ。前後ライトはいずれもライトユニットが一体化されており、余計な装飾もなし。

ウィンカー内蔵のハロゲン式マルチリフレクターヘッドランプを装備。
テールランプも一体型。ウィンカー部がクリア仕様に。

グレード構成は「GA」「GL」「GL UP」「GX」の4タイプが用意されており、GAのみ5速MT車が設定されている。ボディカラーは「ピュアホワイトパール」「アブレイズレッドパール」「スーパーブラックパール」「ミネラルグレーメタリック」の全4色を用意。装備面もシンプルで、安全装備はABSと運転席及び助手席エアバックくらい。展示車は中間グレードに装備を追加した「GL UP」である。

セレリオ「GX」は、フルカラード外装やアルミホイール、タコメーターなど、装備の充実化を図った最上級車。
セレリオ「GL UP」は、中間グレード「GL」のドレスアップバージョンだ。

「GL UP」はドアミラーやドアハンドル、フロントグリルがブラックのままなのに、フロントスポイラー、サイドスポイラー、リヤアンダースポイラー、ルーフスポイラー、ボディステッカーを追加したスポーティ仕様となっている。個人的には、最上級車「GX」のみとなるメッキ加飾のフロントグリル、カラードドアミラーとカラードドアハンドルくらいは追加して欲しいと思うが、これはこれで仕上げ方次第でボーイズレーサー風に仕立てることもできるような気がする。特にリヤアンダースポイラーが良い味を出している。

最上位「GX」以外はブラック仕上げのドアミラー。
最上位「GX」以外はブラック仕上げのハンドル類。
「GL UP」にはフロントフェンダーとCピラーに専用品のデカールが貼られている。
懐かしのルーフアンテナは全車標準。

エンジンは全仕様共通となるK10Bエンジンを搭載。998㏄直列3気筒DOHCエンジンで、最高出力68ps/6000rpm、最大トルク90Nm/3500rpmを発揮する。トランスミッションは、先に記したようにCVTが主力となる。

K10B型998cc水冷直列3気筒DOHC12バルブエンジンを横置きにしたFF車で、最高出力68ps/6000rpm・最大トルク90Nm/3500rpm。

インテリアやユーティリティもとにかくシンプル

インテリアもフロントはヘッドレスト一体式シートとなり、後席も最上級グレード「GX」のみが60:40の分割可倒式を採用しているだけで、他のグレードは一体可倒式とする潔さ。ちなみにサイズは小さいが、しっかりと5人乗車が可能だ。

ヘッドレスト一体式のフロントシート。
3人乗りの可倒式ヘッドレスト一体リヤシート。
5人乗りでもしっかりとしたラゲッジ容量を確保。
リヤゲートハンドルは右側のみに装備。

ダッシュボードデザインはグローバルモデルとなって2代目となるスイフトと似たデザインだが、よりシンプル。メーターパネルもスピードメーター中心となる。南国仕様だと感じるのが空調機能だ。クーラーだけなので、温度調整機能の表示もブルーのラインのみとなる。

シンプルだが、機能的なコクピット。ステアリングデザインは、日本でもお馴染みのもの。
オーディオも標準。音楽好きなタイ人のためか、CDプレーヤーも装備される。
スピードメーター中心の視認性に優れるメーターデザイン。

セレリオで面白いと思ったのが、今や希少な手動式ミラー調整機能を備えること。日本車だとミラー面に押して調整するものはあるが、こちらは室内側にあるレバーで調整する。昔、欧州車で使われているのも覚えている人もいるかもしれない。なんでも電動化される時代に、アナログな機構が生き残っているのは逆にとても新鮮に感じた。

懐かし?のミラー調整レバー付き!
可愛い?ペダル類。
給油口レバーは、何故かカバー付き。

為替の影響もあり日本円換算すると意外と高い

セレリオ「GX」は最上位車で、アルミホイールやタコメーター、分割可倒式シートなど装備がアップグレードされる。

価格は33万8000バーツ(約148万9000円)~45万1000バーツ(約198万7000円)となっている。比較的良い値段とは思うが、スイフトのエントリーグレード「GL」が56万7000バーツ(約250万円)なので、現地のスズキ乗用車の新車としては、かなりお手頃なのだ。
(※1バーツ=4.41円で計算)

最上位「GX」のインテリア。なんとスマートフォン連携可能な4スピーカー付きディスプレイオーディオまで標準装備だ。

残念ながら、スズキも現地生産からの撤退を表明した日系自動車メーカーのひとつ。2025年末でのタイ工場の閉鎖が決定している。そのため、2代目セレリオの役目もそろそろ終焉だろう。インドで生産される3代目よりも、個人的にはこの2代目のコンサバなデザインが好きなだけに、ちょっと残念だ。もちろん、今後も輸入という形でタイでのスズキ車の販売は継続されるため、2025年以降はラインアップにも大きな変更がありそうだ。

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…