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■ダイハツからのOEM供給車として登場したトヨタのパッソセッテ
2008(平成20)年12月25日、トヨタのコンパクトミニバン「パッソセッテ」(ダイハツは「ブーンルミナス」として販売)がデビューした。パッソセッテは、トヨタとダイハツが共同企画、ダイハツが開発と生産を担当して2004年に誕生したパッソをミニバン化したモデルであり、ダイハツからのOEM車というかたちでトヨタが販売した。
トヨタとダイハツが共同開発したパッソ/ブーン
トヨタは、1997年にダイハツへの出資比率を34.5%から51.2%に引き上げ、ダイハツはトヨタの連結子会社になった。これを機に、両社は共同でリッターカー「パッソ/ブーン」の開発に着手。開発に際しては、トヨタが企画とマーケティングを、小型車の開発ノウハウに長けているダイハツが開発と生産を担当した。
パッソは、トヨタがダイハツに新型小型車を委託するという形でブーンとともに2004年にデビュー。車両型式と製造業者は各々異なるので、一般的なOEM(相手先ブランド製造)ではない共同開発の兄弟車という位置付けだった。
パッソ/ブーンは、丸みのある面構成にエッジの効いたキュートなスタイリングを採用。パワートレインは、1.0L直3 DOHCと1.2L直4 DOHCの2機種エンジンと電子制御4ATの組み合わせ、駆動方式はFFとフルタイム4WDが選べた。
使いやすくて運転しやすいパッソ/ブーンは、軽のハイトワゴンが人気を獲得していた中でも、リッターカーとして存在感をアピールして好調な販売を記録した。
パッソベースのコンパクトミニバン登場
パッソがダイハツからのOEM車となったのは2016年の3代目からだが、2008年にデビューしたパッソセッテは当初からダイハツからのOEM車という位置付けだった。パッソセッテは、企画から開発、生産をダイハツ主導で行なったからである。
パッソセッテは、ベースのパッソのホイールベースを310mm、全長を580mm、全高を85mm拡大して、全長4180mm、全幅1695mm、全高1620mmとしたボディに3列シート7人乗りの空間を確保。後部座席のドアはスライド式ではなく、一般的なヒンジ式が採用された。
簡単な操作でサードシートやセカンドシートを倒すことにより、乗車人数や荷物の大きさに応じた多彩なシートアレンジができるのも魅力のひとつだった。パワートレインは、最高出力109psを発揮する1.5L直4 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式はFFおよび4WDが用意された。
車両価格は、標準グレードで149万円のお手頃価格。ウィッシュやストリームでは大きすぎる、もう少しコンパクトで取り回ししやすく、また7人が乗ることは滅多にないという前提のもと、主なターゲットは若い主婦層だった。
●パッソセッテは、シエンタの後継車だったが人気が低迷
パッソセッテは、2003年にデビューして人気を獲得していたコンパクトミニバンの初代「シエンタ」の実質的な後継車という扱いだった。2008年にパッソセッテがデビューしたことから、シエンタは2010年に販売を終了。ところが、後継者のパッソセッテが期待に反して販売が不振だった。
その理由は、スライドドアを採用せず使い勝手が悪かったことだが、そこで2011年に急遽シエンタが再登場することになったのだ。
それでも人気挽回に苦しんだが、2015年にモデルチェンジした2代目シエンタは、トレッキングシューズをイメージしたスポーティなフォルムに、リアのドアは先代と同じく左右ともスライド式、後席ほど高くなるシアターレイアウトを採用。スライドドアの取り付け位置は、先代よりも55mm低い330mmとすることで、子どもやお年寄りにも優しいミニバンだった。
皮肉なことに2代目シエンタは、2ヶ月間で4.9万台の驚異的な販売を記録。2016年には12万台を超え、その後も2019年までは年間10万台前後を販売する大ヒットモデルになったのだ。
結局、パッソセッテ/ブーンルミナスともやや中途半端な歴史をもって、2012年に1代限りで生産を終えた。
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パッソセッテがスライドドアを採用しなかったのは、コストを抑えるためだろうか。ホンダの「オデッセイ」の人気が低下した要因のひとつにスライドドアでないことが上げられていた。大小にかかわらず、ミニバンにスライドドアは不可欠な装備なのだ。
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