通常車両とレース車両の違い
レース好きな読者諸兄には当たり前の話で恐縮だが、ワンメイクレース「GR86/BRZ CUP」に出るには、先代同様、この車両をベースとしなければならない(普通に買ったGR86では出られない)。では、どこが異なるのか。まだ情報は少ないが、レース車両を見てみよう。
まず最大の違いはロールバーが入っていること。レース用車両には、専用のダッシュボード貫通タイプの6点式ロールバー+サイドバーが綺麗に収められている。乗車定員に変更はなく4名乗車が可能。JAF国内競技車両規則「スピードB」および「スピードSA」に適合していて、それらの最小パイプ径はφ35mmだが、それを上回るφ40mmとして、安全性を確保している。
細かいことだが、足元を通るロールバーを避ける形状になった専用フロアマットも付属。車重は1290kg(最上位グレードのRZ 6MTで1270kg。SZ 6MTもRC 6MTも1260kg。RZの6ATで1290kg)となっており、ロールバーで約30kgほど重量が増えていると推測される。
エンジンはレースでの不正がないように専用の封印がされたものが搭載されるが、出力自体は変わらず、235ps/25.5kgm。連続したサーキット走行を前提として、空冷式の大容量オイルクーラーが全車標準装備となる。
マフラーはクラブマンシリーズはノーマル限定。しかし、プロシリーズは5ZIGEN、TRUST、FUJITSUBO、BLITZから選択可能となっており、少し勇ましい音のレースになりそうだ。
レースベース車に付いてくるタイヤは205/55R16でホイールは16×6.5Jの鉄チン。こちらは完全にとりあえず動かすためのもので、レース業界風に言うと「トラベル」のタイヤとホイール。レースは215/45R17で行なわれることがアナウンスされている。
使えるホイールも認定パーツのなかから選択する形式で、weds、ENKEI、TWS、BBS、POTENZA、ADVAN Racing、Regamaster、RAYSが登録されている。
ちなみにクラブマンシリーズのタイヤはDIREZZA ZⅢのワンメイクになった。プロシリーズは複数社から登録されたものということで、これまで同様にいくつものタイヤが戦うことになる。
ブレーキはとりあえず16インチキットが付いていますという感じで、レースではADVICS製ブレーキキットの使用がプロ/クラブマンの全車に義務づけられた。これも大幅な変更だ。これまではノーマルキャリパーでパッド変更のみだったが、キャリパーまで専用品に交換が義務づけとなっている。それほどまでにストレートスピードが上がっている証なのだろう。
サスペンションはこれまでクラブマンシリーズもプロシリーズも同じTRD製に指定されていたが、今シリーズからプロフェッショナルシリーズはこれまでと変わって、NAPAC加盟社商品から複数を指定と公表され、現在のところENDLESS、CUSCO、K-one、TEIN、BLITZが指定されている(クラブマンシリーズはこれまで同様にTRD/STI製のみ)。
プロシリーズは、プロドライバーがそれぞれ異なるサスペンションで走ることになり、ドライバーの腕とサスペンションの基礎性能、セッティング能力が問われるようになったのだ。
リヤデフにはトルセン式が標準装備される。これでもレース参戦は可能だが、TRD製機械式LSD(2WAY)の装着が可能。気になるのはフィン付きデフキャリアになっていると公表されたこと。油温上昇を防ぐために放熱性に優れた形状になったデフキャリアが付いているようだ。
注目はミッションオイルクーラーの装着が指定されたこと。こちらもHPIとCUSCO製からチョイス可能。
一説によると今回のGR86/BRZでは相当ミッションオイル油温が上昇しているらしい。出力アップによるものなのか、エキゾーストからの輻射熱なのか、その複合効果なのか、ミッションに多大なダメージを与えないようにオイルクーラーが義務づけとなったのだ。
デフオイルクーラーもHPIとCUSCO製からチョイス可能。こちらは付けなくてもいいけど、付けるなら認定品から選べる、ということである。先代ではミッションオイルクーラーもデフオイルクーラーも装着していなかったので、大幅な改変なのだ。
車両はメーカー希望小売価格は333万4000円(税込)。開幕戦は7月16~17日の富士スピードウェイとなる予定。装い一新のGR86/BRZ CUP。いまから開幕が楽しみだ。