レンジローバーイヴォークPHEV、使い方を間違えて申し訳ない

往復約400kmの道程で、ランドローバー・レンジローバーイヴォークPHEVの威力を確かめてみることにした。ウルトラスムース&サイレンスで満足のドライブなのだが——なぜか電池がたまらない。なんでだろう。

ランドローバー・レンジローバーイヴォークPHEV P300eはMY22として登場したばかりのブランニューで、パワートレインは1.5ℓ3気筒エンジン(レンジがついに3気筒!)にアイシン製の8速ハイブリッドATを組み合わせる。ランドローバーの横置きパワートレインといえばZFの「9HP」だと記憶していたが、PHEVの登場でアイシン製にスイッチした模様。このハイブリッドトランスアクスルは最高出力81kW(110ps)のモーターまで搭載する設計としているが、このイヴォークPHEVにおいては40kW(54ps)/63Nmのパフォーマンスにとどめている。

PHEVとしての主モーターはリヤアクスルにアドオンされたユニットで、こちらは80kW(109ps)/260Nmという仕様。スプリットAWDともいえる機械構成で、もちろん床下にはプロペラシャフトは存在しない。バッテリーパックはリ常道のチウムイオンセル、84個を直列接続し、総電圧300Vとした(3.6V × 84セル = 302.4V)。パック容量は49.5Ahで、つまり総電力量は15.0kWh(14968.8Ah)。等価EVレンジ、つまりバッテリー出力のみで可能なモーター走行航続距離は64kmを確保している(@WLTCモード)。なお、試乗車は車検証記載で2210kgというヘビー級。ガソリンエンジン仕様車が1840kgだから、マイナス1気筒ということを含めてざっと370kg重くなっている計算である。

イヴォークのメカニカルレイアウトとスペック。(FIGURE:LAND ROVER:一部トリミング)

ここまでが予習。さほど全長は長くないものの、1900mm超のグラマラスなボディに気をつけながら走り出すと、前日のうちにバッテリー使い切ったはずなのにモーター走行するではないか。早朝の住宅街ではありがたい限り。出発地は急坂を登るシチュエーションで、何せバッテリー残量ゼロということもありアクセルペダルを踏み込むとエンジンがかかってしまいそうと思ったこともあり、極微低速で闘力一定のままそろそろと坂に差しかかると、2.2tの巨体はするすると加速を始める。この条件でエンジン+変速機のパワートレインであればペダルを踏み込まないとエンスト必至のところ、加速までしてしまうところにモーターの威力に嘆息する。

高速道路に入ると、8速ATのしつけの良さに満足する。正直、ZF-9HPの仕立てには個人的に満足いかないところがあって、「さすがのZFも横置きだと苦戦するのか」などと思ったものだが、本機にはアップシフトはもちろんのこと、ダウンシフトの制御にも不満は一切ない。ただし、追い越し加速を試みたときにはさすがに2.2tの重さが影響するようで、少々の気構えが必要だった。ちなみにシステムの合計出力は227kW(309ps)/合計トルクは540Nmというから数字としては充分のはず。発揮するまでの時間制御に好みが合わなかったのだろうか。3気筒のエンジンは終始存在を消している印象。このあたり「レンジローバー」であるならスムース&サイレンスであるべきという矜持か、3気筒につきものの振動騒音はキャビンに侵入してこなかったのは好印象だった。

ハンドリングは重量級SUVからは意外な俊敏さで、操舵が速いとヨーの発生が強い印象。とてもきびきび走る。ただし、乗員がいるときには注意が少々必要だろう。なお、前軸重は1250kg/後軸重は960kgということで、前後配分は56.6:43.4。タイヤサイズは235/50R20で指定空気圧は前260kPa後240kPa、ピレリP-ZEROを装着していた。

センターディスプレイでは「保存」という表示でなんだかクスッとする。なお、メーターパネル内では「SAVE」。

お貸出しいただいたときのご案内をきちんと理解しておらず、SAVEモードは「積極的に充電していくモード」だと勘違い。正しくは「なるべくバッテリー出力を発揮しない」モードだった。この勘違いのため、走行時はエンジン主体の走行となった。では積極的に充電するにはどうするかというと、シフトレバーを左に倒したSモードにするらしい。

なお、プラグインの充電については200Vの普通充電口のみを備える仕様で、個人的には好感。電池が切れても発電できる/エンジンで走れるというハイブリッド車が、「充電しないと走れない」というEVの生命線である急速充電器を占有しているのは、やはりヘンだ。

というわけで、EVレンジは全然増やすことができず。イヴォーク、申し訳ない。

都内での渋滞ではクルーズコントロールのスマートさにおおいに助けられた。こう言ってはなんだが外国車のACCはどうにも不自然な制御が多く、結局「いいよもうおれがやるよ」となることが多いのだが、本車は渋滞時の割り込み車線変更受け入れなどを含めヒヤリとかイライラは少なく、安心して預けることができた。また、ノロノロの発進停止を繰り返すシーンにおいても自動再発進のシステムが非常に優秀で、手動操作の少なさが目立つシステムである。

400kmを2名乗車、ルートはほとんどが高速道路を走行して、オンボード表示で平均燃費は14.0km/ℓ。先述のようにSAVEモードで走行したことで燃費値には影響があるかもしれないが、高速走行主体ということで回生頻度は少なく、また1モーターのシステム構成から考えても「走行しながら充電」に積極的ではないことを考えて、大きな差はないものと思われる。機会を改めて、電池を積極的に用いる走行条件も試してみたい。

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著者プロフィール

萬澤 龍太 近影

萬澤 龍太

Motor-FanTECH. 編集長かろうじて大卒。在学中に編集のアルバイトを始めたのが運の尽き…