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アンビシャスグループ北海道が主催。狙いは「クルマのファンを拡大」
「待ってました!」「楽しみにしてました!」という声が、参加者の口から次々に聞こえてきた。7月23日、MOTOR SPORT FESTIVALが2年ぶりに開催されたのだ。舞台はもちろん、十勝スピードウェイ。当日はあいにくの雨模様にも関わらず、北海道のクルマ好きたちが続々とサーキットに足を運んだ。
本イベントを主催したのはアンビシャスグループ北海道(AGH)だ。前回まではGR Garage 札幌厚別通が単独で主催を務めていたが、今回からグループ内のトヨタカローラ札幌、札幌トヨペット、ネッツトヨタ函館、ジェームス(札幌市内5拠点)とともに力を合わせての開催となった。
体制変更の狙いについて説明してくれたのは、GR Garage 札幌厚別通で主査を務める古島淳一さんだ。「『クルマファンを作ろう』という趣旨で立ち上げたMOTOR SPORT FESTIVALですが、もっともっとファンの裾野を広げたいと思っています。その実現のため、アンビシャスグループ北海道全体でイベントに取り組むこととなりました」
そうした思いとともに開催されているMOTOR SPORT FESTIVAL。4回目となる今回も多くの参加者が集ってくれたわけだが、その人気の理由はいくつかある。まずはゲストが豪華なこと。次にコンテンツが盛りだくさんなこと。そしてサーキット走行派からファミリーまで幅広い人が楽しめること、だ。ひとつずつ詳しくご紹介していこう。
レーシングドライバーの谷口信輝選手とジャーナリストの飯田裕子さんが登場
毎回いろいろなゲストが会場を沸かしてくれるこのイベントだが、今年はレーシングドライバーの谷口信輝選手と、自動車ジャーナリストの飯田裕子さんが登場した。
谷口選手はスーパーGT・GT300クラスで三度のチャンピオン経験を持つほか、このイベントの前週に行われたGR86/BRZカップの2022年シリーズ第1戦で優勝するなど、実績も人気もトップクラス。谷口選手がお目当ての来場者も多く、色紙やグッズにサインを書いてもらう様子がそこかしこで垣間見られた。
飯田裕子さんは日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務めており、雑誌やウェブなど多数のメディアで活躍中。執筆活動に加えて、安全/環境啓蒙活動の一環としてドライビングスクールのインストラクターも務めている。
さらにこの日は、北海道を拠点としながらスーパー耐久に参戦し、21年にはST-5クラス王者に就いた猪俣京介選手もサーキットに駆けつけてくれた。
愛車でサーキットを疾走! 3クラスに分かれて「マイカーフリー走行」を実施
MOTOR SPORT FESTIVALのメインディッシュと言えるのが、マイカーによるフリー走行だ。普通免許があれば参加OKというハードルの低さに加えて、レベルに応じて3クラスに分けられ、サーキット初体験の初心者クラスでは先導車がサポート。そのおかげで、ベテランだけでなくビギナーも、自分のクルマのポテンシャルを十勝スピードウェイで思う存分堪能できる貴重な機会となったようだ。
それでは、フリー走行の参加者の声を聞いてみよう。
初級クラスに参加した清水武流さんの愛車は、中古で手に入れたというトヨタ86。「以前からサーキットには興味があったのですが、今日、初めて走ることができました。このイベントは初心者でも気軽に参加できて楽しかったです!」
中級クラスの落合重之さんは、2021年にGRヤリスを購入。モータースポーツフェスティバルを楽しみにしていたのだが、昨年はイベント開催が見送られてしまったため、1年越しでの参加となった。「雨だったので緊張しました」と、走行後はホッと一息のご様子。
四駆有利のウエットコンディションながら、FRのGR86で総合2番手のタイムを記録したのは、上級クラスの熊谷広洋さん(と碧翔くん)。「ドリフトをやっていたので、滑りやすい路面でのコントロールは自信がありました(笑)。以前は先代の86に乗っていたのですが、新型はエンジンもボディもすごく進化していますね。タイヤとブレーキだけ交換していますが、それだけでサーキットも問題なく楽しめますよ。今日は大ファンだった谷口さんにも会えて、大満足です!」
「ウェットはどう走る?」谷口選手と猪俣選手によるドラテク講習会
走行の合間には、谷口選手と猪股選手によるドラテク講習会も開催された。特に初心者向けのクラスで谷口選手が強調していたのは、「無理をしないこと」。この日は生憎のウェットコンディション。そんな状況で必死に頑張って多少タイムがアップしたとしても、それは自己満足でしかない。それよりも、「今日はサーキットをとりあえず体験してみよう」くらいの気持ちで、肩の力を抜いて無理をせずに走ってほしい、と慎重な運転を心がけるようアドバイスを贈っていた。
中・上級者クラスでは、より具体的なアドバイスを伝授。「ウェット路面の場合、タイヤの空気圧をちょっと上げます。そうするとタイヤが発熱しやすくなったり、溝が広がって排水性が良くなるんです。自分が出場しているGR86/BRZカップの場合、だいたい2.5〜3.0kg/cm2くらいを目安に調整しています」と谷口選手。
GRヤリスに乗る参加者から出た「4WDを速く走らせるには?」という質問には、「FFの運転とそれほど変わりませんよ。どちらもオーバーアクセルは厳禁だし、飛び込みで頑張るのではなく、しっかり止めてしっかり曲げて、トラクションで稼ぐ、という走らせ方がいいと思います」と答えていた。
GRシリーズを体験試乗! スープラ&ヴォクシーの同乗試乗も大好評
GR86、ヴィッツGRMN、マークX GRMNといった車両の体験試乗も、本イベントならではのコンテンツだ。普段はなかなかドライブする機会のないGRシリーズの車両を、3台も、しかもレーシングコースで乗り比べできちゃうのだから、試乗待ちの行列ができたのも当然と言えるだろう。
先代86を2台乗り継ぎ、サーキット走行やジムカーナを楽しまれているという笠原一穂さん。GR86を体験試乗して「排気量がある分、トルクも増えていますね」と、新型の進化を実感。
愛車のGRヤリスを購入してこの日が初サーキット走行だった宮川卓也さんは、ヴィッツGRMNを体験試乗。「エンジンの吹け上がりやレスポンスが素晴らしいですね!」
マークX GRMNに体験試乗したのは相部洸太さん。「3000rpmから盛り上がるパワーが凄い! 父がスーパーチャージャーを装着した86に乗っているんですけど、それよりもパワフルですし、快適なのも良いですね」と興奮の面持ち。
自分のドライブでサーキット走行する参加者のみならず、ファミリーが楽しめるコンテンツが豊富に用意されているのもMOTOR SPORT FESTIVALの特徴だ。
本イベントの名物ともいえるノアのファミリー同乗走行だが、今年は車両を新型ヴォクシーにチェンジして実施。ドライバーを担当した飯田さんも「加速がスムーズだし、ボディがしっかりしていて足もよく動く。走りの質がすごく上がっていますね」と太鼓判を押すほど走りの実力も高く、試乗を終えた参加者からも「ミニバンとは思えませんでした!」と興奮気味に感想を教えてくれた。
もっと刺激が欲しい(!?)参加者に向けては、GRスープラも用意されていた。こちらは猪股選手がドライブし、同乗者は3L直6ツインターボのフル加速を存分に味わっていた。
安全に走るための「正しいドライビングポジション」をレッスン
サーキット走行以外のコンテンツで特に人気だったのは、飯田さんによるドライビングレッスンだ。これは速く走るためではなく、一般公道を安全かつスムーズに走れるようになることを主旨としたもの。「お尻を前にずらして座っている方をよく見かけますが、それだと強いブレーキが踏めません。また、カーブの度に身体が動いてしまうのもよくありません」と飯田さん。では、正しいドライビングポジションにはどのように合わせればいいのだろうか。
「まずやることは、シートに深く腰掛けること。シートと身体との間に隙間を作らないことが重要です。続いてシートスライドは、ブレーキをギュッと踏んだ時、膝が少し曲がる位置に合わせましょう。こうすると左足をフットレストで踏ん張ることができるので、コーナリング時に身体を安定させることができます。リクライニングは、ハンドルを持った際に肘が90〜100度程度曲がるくらいに調整。この状態だと、ハンドルを楽に切ることができるんです」と、ひとつひとつ手順を追ってわかりやすくレクチャー。ここまで丁寧に教えてもらえるのは貴重な機会で、参加者からも大好評だった。
まだまだあります! 充実のコンテンツをダイジェストでご紹介
北海道のクルマファン拡大のために…。来年の開催も乞うご期待!
こうして1日たっぷり、十勝スピードウェイでクルマの楽しさを堪能できたMOTOR SPORT FESTIVAL。大きな事故もなく無事に終了したわけだが、イベント運営を今回初めて担当したというトヨタカローラ札幌の高蠣脩平さんの目は、すでに先を見据えていた。
「毎回ご参加いただいているお客様はもちろんですが、来年はサーキット未体験のお客様にもっと足を運んでいただきたいですね。そこでクルマの楽しさを感じていただき、その次の年にはサーキット走行にも挑戦していただく、という流れができればと思っています。そのためには、楽しいコンテンツをまた来年も用意しないといけませんね」
これからもMOTOR SPORT FESTIVALが、北海道のクルマファンの拡大に一役買ってくれそうだ。