マツダCX-60 驚異的な燃費を叩き出す直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッドシステムは、豪快なサウンドと加速がいい 引き換えにやや“ディーゼルらしい”

マツダCX-60 XD-HYBRID 車両本体価格:505万4500円
直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッドシステムであるe-SKYACTIV Dを搭載するモデルから販売がスタートしたマツダCX-60。いよいよ公道で試せるようになった。さまざまなシーンでe-SKYACTIV Dをテストした。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

まずCX-60は、インテリアがいい

日本の美意識を感じる織物や本杢の組み合わせたインテリア。

マツダCX-60とは何度目かの対面だったが、テストコースや撮影会場というクローズドな環境ではなく、オープンな環境で対面するのは初めてだった。悪天候だったのは残念だったが、質の高さは充分に確認できた。「鍛え抜かれたアスリートの肉体のように、ひと目で運動性能の高さを感じる、自然で堂々とした力強い骨格を目指した」というが、そのとおりで、堂々とした佇まいだ。

インテリアがまたいい(撮影車はエクスクルーシブ・モダン)。時代進化分の上乗せもあるのだろうが、近い大きさのCX-5に対して、明らかに車格感はアップしているのを感じる。エクステリアと同様に骨格の強さを基調としつつ、シンプルで、上質だ。ステアリングホイールの奥にあるメーターはフル液晶になったが、グラフィックは相変わらずアナログ風で、奇をてらったデザインに走らないところがマツダらしい。

運転席に座って首を巡らせると、12.3インチに大型化されたセンターディスプレイが目を引く。CX-5は10.25インチまたは8.8インチ、マツダ3/CX-30は8.8インチだから、それらのサイズに慣れた人にとってはずいぶん大きく感じるに違いない。8.8インチ/10.25インチと同じ内容を表示しても文字が大きいので判読しやすい。ディスプレイの大型化は昨今のトレンドだが、機種によっては手前側に車軸と平行に配置されているケースがある。

CX-60の場合は(マツダ3やCX-30と同様で)ディスプレイがやや奥に配置してあってドライバー側に傾いている。そのため、見やすい。視線移動が少なくて済むし、焦点の調節も楽でストレスを感じない。エアコンの温度調節は上から押さえつけるタイプ(CX-5、マツダ3やCX-30はダイヤル)になっていて操作しやすいし、内気循環のボタンにはしっかり絵文字が配してあり、切り換えたいときに瞬時に目当てのボタンに指が届く。マツダ3には絵文字がなく、気になっていた(CX-5は絵文字入り)。

エアコンの温度調節は上から押さえつけるタイプで操作しやすい。

CX-60とCX-5の全幅の違いは45mm(CX-60:1890mm、CX-5:1845mm)だ。その45mmの効果か、センターコンソールは太く堂々としており、アームレストの付いた収納との一体感もあってリッチな感じがする。CX-5も同様だが、スマホの置き場所はしっかりコンソールの奥に用意してある。ワイヤレス充電(Qi)は多くのグレードで標準装備だ。トンネル通過時には白色アンビエントライトの効果を確認することができた(XD HYBRIDには標準装備)。ホテルの客室に備わる間接照明のようなムードある雰囲気で、CX-60は夜の風情もきっと素晴らしいに違いないと感じさせる。

マツダ新開発直6ディーゼルの○と×

エンジン
形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
型式:T3-VPTS型(e-SKYACTIV D3.3)
排気量:3283cc
ボア×ストローク:86.0mm×94.2 mm
圧縮比:15.2
最高出力:254ps(187kW)/3750pm
最大トルク:550Nm/1500-2400rpm
燃料供給:DI
燃料:軽油
燃料タンク:58ℓ
モーター
MR46型永久磁石式同期モーター
 最高出力:12kW/900rpm
 最大トルク:153Nm/200rpm
ターボチャージャーは、車両前方から見て左側。

前回までの対面でも薄々感じてはいたが、3度目の対面でもやはり、新開発の3.3L直列6気筒ディーゼルエンジンは、ディーゼルらしい音を出す。静まりかえった住宅街でのエンジンを始動、あるいはエンジンをかけて停車したままナビシステムを操作するといった行為は気を使うかもしれない。

走り出しても、ディーゼルエンジンらしい燃焼音との付き合いは続く。新開発のディーゼルエンジンは、DCPCI(空間制御予混合燃焼)と呼ぶ独自の燃焼技術を採用することで、従来のディーゼル燃焼では難しかった予混合(空気と燃料をよく混ぜる)の領域を拡大。かつ、これまでより短い時間で燃焼を終わらせ、効率を大幅に高めた。

短い期間で燃焼させるために燃焼音はどうしても大きくなってしまうのだが、それを抑えるためもあってエンジンをカプセル化して厳重に囲っている。それでも漏れてしまうのだろう。巡航時に限っていえば耳障りではない。いいサウンドを聞かせるチューニングを行なっていることもあって、高速道路の本線に流入する際のような、回転を一気に上げるシーンでは「繰り返し聞きたい」と思わせる刺激的なサウンドを発する。爽快(豪快と表現してもいい?)な加速とシンクロすることにより、気持ちを高ぶらせる効果が増すようだ。

いかなるシーンでも、応答性や力強さに物足りなさを感じることはない。新開発のディーゼルエンジン(最高出力187kW/3750rpm、最大トルク550nm/1500-2400rpm)に組み合わせるトランスミッションはやはり新開発の8速ATで、発進デバイスにはATに一般的なトルクコンバーターではなく、湿式多板クラッチを用いている。ダイレクト感と効率のためだが、引き換えにショックが出がちになる。試乗時は後ろ下がりの勾配で発進する際に強めのショックを感じることがあった。それ以外のシーンでは黒子に徹しているし、変速のインフォメーションのみ伝えてきてキレとリズム感をつくり、気分を高めてくれる。

試乗車のパワートレーンはXD-HYBRIDで、ディーゼルエンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせている(ハイブリッドシステムを組み合わせないXDも設定)。8速ATの湿式多板クラッチと変速機構の間に最高出力12kW、最大トルク153Nmのモーターを挟んだ構成だ。エンジンが不得意とする低負荷領域だけモーターがサポート。加えて、コースティング〜減速時は回生して運動エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄えることで、オルタネーターの負担を低減する。その結果、ハイブリッドシステムを組み合わせない素の状態(XD)に比べ、燃費が向上する仕組みだ。

燃費性能は、掛け値なしに「驚異的」

こうして評にするとXD-HYBRIDの燃費の良さが際立つ

効率向上にこだわったエンジンと損失低減にこだわったトランスミッションに、48Vハイブリッドシステムが加わったことで、XD-HYBRIDはパワートレーン全体で驚異的な低燃費を実現している。メディア向け試乗会の発着点に近い東名高速・御殿場ICは東名高速の最高地点(標高454m)にあたっており、そこからは下り勾配。約10km先の裾野ICで平均燃費計を確認した際は31.0km/Lの数字を示していたことを、参考までに記しておく。

31.0km/Lの数値が位置エネルギー分の下駄を履いているにしても、「燃費、ものすごくいいのでは?」と感じさせるには充分である。別の機会に別のルートを走った際に、燃費の良さを確認した。モビリティランドもてぎ(栃木県茂木町)から常磐自動車道・水戸北ICまで一般道を約30km走り、常磐道〜外環道経由で都内に戻ってきた際は約160km走って25.8km/Lの燃費を示していた。給油してから約200kmを走行していたが、航続可能距離は940kmと表示されていたので、ワンタンクでゆうに1000kmを走行できることになる(燃料タンク容量は58L)。

ちなみに、もてぎ〜都内の同じルートをスバル・アウトバック(ガソリン1.8L水平対向4気筒ターボ、最高出力130kW、最大トルク300Nm)で同じように走った際の燃費は13.4km/Lだった。驚異的な燃費の良さは間違いなく、e-SKYACTIVE Dと呼ぶディーゼルエンジン+48Vマイルドハイブリッドシステムを積んだマツダCX-60の大きな魅力である。

マツダCX-60 XD-HYBRID
全長×全幅×全高:4840mm×1890mm×1685mm
ホイールベース:2870mm
車重:1910kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式 
駆動方式:4WD
エンジン
形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
型式:T3-VPTS型(e-SKYACTIV D3.3)
排気量:3283cc
ボア×ストローク:86.0mm×94.2 mm
圧縮比:15.2
最高出力:254ps(187kW)/3750pm
最大トルク:550Nm/1500-2400rpm
燃料供給:DI
燃料:軽油
燃料タンク:58ℓ
モーター
MR46型永久磁石式同期モーター
 最高出力:12kW/900rpm
 最大トルク:153Nm/200rpm
トランスミッション:トルクコンバーターレス8速AT
燃費:WLTCモード 21.0km/ℓ
 市街地モード18.1km/ℓ
 郊外モード:21.4km/ℓ
 高速道路:22.5km/ℓ
車両本体価格:505万4500円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…